旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

白魚のような指

2017-12-26 23:27:17 | 診療
当地はきのう、きょう、明日と雪嵐です。強烈に横殴りに降る雪、猛烈な風。

そんな中、ゆうべは老人ホームでの看取りをしました。

前回は深夜で、一人の介護員が薄明かりの中、20人のお年寄りを見守り、ひとりの人を看取る、やああ、簡単に「福祉施設での看取り」を提唱してきたけれど、大変なことなのだ、軽く考えていて申し訳なく反省したのでした。

今回は午後10時過ぎ、まだ宵の口でした。猛吹雪の中を自分で運転し、ホームの玄関についたらS君。「待機なのです」と出迎えてくれました。中に入ったらYさんも来てました。介護系のチーフです。夜勤の介護担当者も心強かったろうなと思います。

亡くなられたのは100歳に近い女性。物静かな素敵なご婦人でした。原因不明の熱も出たりはしましたが、比較的穏やかに過ごされ、最後は少量の点滴をしました。

死亡確認をして、失礼しようとしたら、「先生、ルートをはずしていただけますか」と声をかけられました。右手の甲に留置針がありました。しっかりとめたテープをぼくの左手指で一枚ずつはがしながら、右手で握手をするようにして彼女の指を見ました。

白く透き通っていて、その美しさに圧倒されました。白魚のような指。

100年近くを生きて、その美しい指は、やさしさを家族や友人、おそらくさまざまな人に伝えたに違いありません。

帰りの車に突き刺さるような雪。2度ほど強烈なホワイトアウト。

ほのかなせつなさと哀しみを運んだゆび。フロントガラスに幾度となく浮かんでは消えてゆきました。

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