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俳優・勝地涼くんのこと。

『ハケンの品格』(2)-9(注・ネタバレしてます)

2008-03-03 02:40:15 | ハケンの品格
・ぼんやりしてる小笠原さんに声をかける「ようじ屋」の店長?さん。
「白いごはーん、が冷めちゃいますよ」の呼びかけがいい味です。普段無愛想ぽく見えますが結構いい人ですね。

・99年の手書き伝票が足りなかったために粉飾決算の疑いをかけられ営業部は大揺れ。それをコーヒー飲みつつ「映画みたーい」と傍観する近くん、香、瞳のハケン三人組。
香たちに比べ近くんが状況を詳しく知ってるのは(販売二課が火元らしいのに)、彼女たちは前日休みだったのか、自分の仕事以外は興味を持ってないからか。後者っぽい気がするなあ。逆に近くんは結構いろんなことにアンテナ張りめぐらしてそう。

・「テンパってるテンパってる」と楽しげな近くんたち。他二人はともかく近くんがこんなに販売二課の危機を他人事として面白がれるとは意外。ハケンにきつい口を利く黒岩さんが駆けずり回ってるからかな。
前回で香・瞳が見せた「所属部署の危機に対する他所事感覚」は今回も健在です。

・何とか小笠原を助けられないかと話し合う里中たちに「無駄話はやめて仕事してください」とにべもなく言い放つ春子。
この時「無駄話?」と返す浅野の声がいつになく尖り、表情もいくぶん険しくなっている。最初の方でおにぎりを食べていたときは春子にちょっと睨まれただけで小さくなっていたのに。浅野の苛立ちとその根底にある小笠原への情が伝わってきます。
浅野くんは基本的にふんわりしたキャラですが、こういう鋭い目をしてるのを見ると「やっぱり勝地くんだなあ」と感じます。
(勝地くん自身も基本は柔らかい雰囲気なんですが、笑っていても何か目が強いので。目付きが悪いというのでなく澄み切った眼差しに圧倒されるような感じです)

・「僕だってまだ諦めてません」「何とか助けたいんです」と言いながら里中は何の有効的な手も打っていない。最初に小笠原のリストラ話を告げられたときも、一応は「何とかならないか」と言いはしたもののすぐに引っ込んでしまった。
また春子は知らない(はず)ですが、小笠原を残すための戦略も「手柄になりそうな仕事、小笠原さんに回すんだ。(中略)小笠原さんがうちの会社になくてはならない人だってことを結果で証明するんだ。それしかない。」と具体的方針を打ち出したのは東海林だった。里中は「東海林さん、俺、どうすればいいんだろう」と言っていただけ。
今だって、「まだ諦めて」ないのなら人事の決定を覆すために小笠原の能力を示すべき時なのに、自分のショックにかまけて職場放棄してる小笠原を放置状態。職場放棄してるようでは上の心証は悪くなるばかり。
携帯(さすがにローテクの小笠原さんでも持ってるだろう。実際次回の地震騒ぎの際に携帯使ってます)に連絡してさっさと呼び戻すのが筋じゃないか。春子に「口先ばかり」と思われても仕方ないかも。
実際春子は「午後の業務時間は始まってます」の一言で彼を連れ戻し、仕事をさせることで鮮やかに救ってみせました。

・「何もできないんでしたらそこに座ってなさい。定年までずーっと。自分の身を守ってなさい。あなたにはそれが似合ってます。」 
この台詞を見ると、春子の中では里中も小笠原と同類項のようです。里中は綺麗事ばかりで、今何をすべきなのかの判断が流されてしまう。
春子は逆に「今何をすべきなのか」を最優先するあまり、綺麗事―当事者の感情に関わる部分―をガンガン切り捨ててしまう。これはこれで問題アリですが、結果を出しているのは常に春子の方なのですよね。
里中はやる気がないわけじゃないんだけど覇気はない。優しさと表裏一体の気の弱さのゆえに、何としても自分が部下を守ってみせるという気概に欠ける。まあそのへんを反省した結果として後に美雪を「守る」ために混乱を引き起こしてしまうのですが。

・小笠原さんのネクタイを引っ張って歩く春子の姿に激しく動揺する一ツ木。会社のエントランスであれは人目に立ちすぎます。一ツ木さん動揺のあまり、「制御不能の大前が、制御不能になりました」とか意味不明になってます。
東海林の方も、「大前・・・とっくりがどうした?」。一ツ木さんに「とっくり」じゃ通じないと思うのですが。

・ぞろぞろ並んで春子と小笠原を捜して歩く東海林たち。手分けするという発想がないのか。いつのまにか伝票の件は忘れられてるし。一ツ木さんの「暴力はやめなさい!」がいい感じです。

・「小麦の99年度、見つけました」と小笠原が言ったとき、春子が満足そうににっこり笑っている。
それまでがんがん怒鳴ってただけに、そのコントラストが事件が無事解決し、春子の真意(優しさ)が明らかになった安堵感を視聴者にももたらします。

・みんなが小麦の伝票計算にかかってる時、春子は本来の業務を一人で片付けている。小麦の計算は人数もいるし、アナログには強い小笠原がいるから自分が出張るまでもないと思っているからでしょう。

・計算し終わった伝票を10階に持って行く時、同行を遠慮しようとする小笠原に、里中は「小笠原さんじゃなきゃダメなんです」と言う。
先に里中は小笠原に手柄を立てさせるために塩むすびの企画を考えたが、あれは「小笠原でなければできない」仕事というわけじゃなかった(実質的に春子が全部やったようなものだし)。しかしこれは伝票が手書きだった時代をよく知っている、S&Fを隅々まで熟知したベテラン小笠原にしかできない仕事。
東海林たちが手書き伝票探しに小笠原の力を借りることを思いつかなかったのは、彼らが最初から小笠原に対して「手柄を立てさせる」という上から目線だったからだろう。春子だけが小笠原の人格でなく能力を問題にし続けていた。
そして実は「腕のいい営業マンだった」小笠原にとっては、「情」で優しくされるより、「組織の一員として役に立つ」という「理」で評価されることの方がずっと誇らしいことなのではあるまいか。
若手社員に手書き伝票の見方を指導する小笠原が、塩むすび企画のために訪れたデパートで遊んでた人とは思えないほど生き生きとしていたのがその証拠のように思えます。

・エレベーター前で小笠原に「最後じゃないです。小笠原さんはこの会社に必要な人です」と初めて強く言い切る里中。
これまで里中が小笠原のリストラ問題に正面から立ち向かえなかったのは、小笠原を残すべき理由を情レベルでしか語れなかったから。内心では春子が桐島に言ったみたいに「お荷物」だと思っていた。
それが思いがけず小笠原に助けられる事態になって、自分(たち)こそが小笠原の能力を軽んじていたことに気づいたのでしょう。

・ロープを持ち作業着姿で歩く春子とすれ違った東海林が一ツ木に、春子がエレベーター関連の資格を持っているか確認する。
前回はロシア語の資格はないと一ツ木に確認するシーンを入れた上で、実は資格を持っていたというオチをつけた。フェイントをかけた上での「びっくり資格で解決」オチ。
今回は昇降機検査の資格を持っていることを早々に明らかにしているが、今回は「びっくり資格」でオトすのでなく、資格披露のさいの小笠原に対する優しさとその後の東海林とのやりとりに主眼が置かれていることの表れだろう。またこのシーンを入れることで東海林が、春子がエレベーター内にいることを知る(彼女の急場を救う)ための伏線にもなっている。
さらに次回では、「今週のビックリドッキリ資格」をもう前の週(つまり第五回)の次回予告でばらしてしまっている。「何の資格を出してくるか」が話のメインではないことを予告を通してあらかじめアピールしてしまう。
ある程度パターンを踏襲することで心地好いリズムを作りつつ、少しずつそれをずらして見せることでこれまた心地好く視聴者の意表をつく。このドラマが近年珍しい大ヒットを記録したのが納得できます。

・「小笠原さん、伝票はあなたが届けなさい。あの中にあなたの会社人生がたくさん詰まってるんですよ。」 ロープで上にあがるのを怖がる小笠原を春子は叱咤して上へ行かせる。
伝票探しの件もそうですが、春子は小笠原に楽をさせない。彼は保護すべき老人ではなく、その能力を会社のため役立てるべきベテランなのだから。
総じて「楽」と「誇り」は両立しない。小笠原に誇りある仕事をさせようとする春子が、正社員を本当の意味で見下してるはずがないことは上の台詞でも明らかですね。

・先を急ぐ里中と小笠原はロープを下ろすのを忘れて春子をエレベーターに置き去りにする。
先に小笠原をデパートに置き去りにした春子が今度は置き去りにされる。この時一瞬すごく不安そうな悲しそうな顔をしてます。一人取り残されたのが不安なのじゃなくて、「見捨てられた」のが辛かったんじゃないのかな。
遊んでて迷子になった小笠原と違って春子は何も悪くない、どころか助けに来たというのにこの始末。座してただ助けを待つのを良しとしない春子の性格からすれば屈辱的事態でしょうね。もうちょっと閉じ込められる状況が続いたら、自力で脱出する方法を何か考案したかも。

・先に「おまえが死にそうになっても、助けてくれるやつなんてこの世に一人もいないからな」と言った東海林が春子を助けに来る。
このシーン、春子が半分上がるところまで誰が助けに来たのか気づいてなかったのが効いています(最初から東海林と知ってたら助けを拒んだはず)。東海林と気づくなり笑顔のまま硬直して落っこちかけるあたり上手いなあ。

・「伝票だけ助ければいいのになんで小笠原さんまで助けてんだよ」という東海林の台詞から、彼が春子の気持ちを理解しているのが読み取れる。
「そんな業務、あんたの契約には入ってませんけど何か?」と春子の口真似をしつつ彼女の論理矛盾=優しさを指摘するのも暖かい。

・しかし春子はお礼をいうどころか「ばっちい。手洗ってこよう」とあんまりな言葉を。踵を返すとき本当に嫌そうな顔をしていますが、あれはハケンとしての自分の生きかたを貫くため、あえて東海林を突き放すことの辛さ、と解釈してます。

・立ち去る春子に「親の顔が見たいわー!」と叫ぶ東海林。最初の方でも「親に消しゴム投げつけられて起きてたのかお前は」と言う台詞があった。今回東海林の口を借りて、謎の多い春子の親について視聴者の注意を喚起しようとしているように思える。
どちらの台詞にも春子はノーコメントですが、ハケンの仕事をしてる時以外は海外を放浪してること、日本にいる時も親代わりの眉子が経営する「カンタンテ」に下宿してることを思えば、春子の親はすでにいない、天涯孤独(紋次郎のように)なのだろうと想像されます。

・小笠原の首が繋がったことを祝して桐島がマーケティング課の面々を飲みに誘う。「全員集合」と言われて当たり前のようにハケンの美雪も一緒に頷く。本人の就業態度も周りの扱いも、正社員と変わらないですね彼女。
(近くんはこの場にはいない。後で飲み会メンバーがエントランスへ向かう途中で「お疲れ様でした」と笑顔で一礼して帰ってます)
そして「あんたは―」「行きません!」「聞いてねえよ」という東海林と春子のやりとり。いや明らかに聞いてたよ(笑)。それも乗り気な笑顔で。

・東海林はオフィスの廊下から窓越しの夜景を見つめつつ、「あの女はインベーダーだ。あいつの真似なんかしたら俺たちは確実にはじき飛ばされる。ここから外にな。」
 ここで外から二人のいる窓を遠景で映すカットが入る。彼らのいる位置の高さを感じさせる映像は、「外にはじき飛ばされる=死」という緊迫感を与えます。
そして春子を改めてインベーダーと呼ぶ東海林に、彼女との関わりが自分や里中の(会社に対する)価値観を変えてゆくことへの恐れを感じました。

・やはり次の更新はしないことにしたという小笠原に春子は「私には関係ありませんが、どうしてですか」と尋ねる。
「私には関係ありません」は当初からの口癖ですが、今や口先だけでドライを装っているように聞こえます。ここでも関係ないといいつつ小笠原に辞める決意を翻させてますしね。

・「社員なら社員らしく、会社にしがみついてください」 言葉は悪いもののその口調も内容も口にする時の表情もすべてが暖かい。
春子の言葉は虚飾がない分しばしばストレートに胸を打つ。「ハケンに時間外勤務をさせようとする」など両者の境を曖昧にするのを嫌ってる春子のことですから、言葉は悪いけれど正社員をバカにしてるわけじゃなく、社員には社員の、ハケンにはハケンの分があるということですよね。

・春子と話していて遅れた小笠原を東海林たちが迎えに。ちょうど春子が「さっさと行かないと、また迷子になりますよ」と言い残した直後に。
前半で春子に置き去りにされ、後半では春子を置き去りにした小笠原が、迎えに来たみんなと一緒に去ってゆく。この「置き去り」のだんだんと変化をつけた反復が、これまで一部欠けていたものがきちんと埋まったような、ハッピーエンド感を醸し出しています。
美雪と浅野という、小笠原からはちょうど孫の年代の二人が、彼の両腕を取るのもなんだかほのぼのします。

(つづく)

 

 

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