・東海林が捨てたアンケート用紙が風で転がり小笠原の足元に。うわー出来すぎ(笑)。これも二人を結ぶ赤い糸、ですかね。
・小笠原がアンケートの文面を読み上げたのに対し、さほど東海林に含むところのない浅野は普通に驚き、含むところのある近くんは面白がり、東海林に気がある?黒岩は「ふーん、そうなんだー」と強がり口調、とそれぞれの反応が彼らの東海林への感情を反映している。
とくに黒岩さんは「なになに、どういうこと?」と東海林の名前を聞きつけるなり隣の部署から出張ってきてますしね。
・東海林の相手が誰なのか「本人(東海林)に聞いてみようか」と言い出す小笠原。いやプロポーズ断られたばかりの人にそれは酷でしょう(笑)。「誰にフラレたの?」って聞くのか?
フッた相手の携帯にかけてみようとしたり、このときの彼らの行動は相当非常識。ムキになる理由のある黒岩に引きずられたとはいってもねえ。
事情を察している里中と美雪の慌て方、一見冷静を装っている春子の顔がだんだんに引きつってくる(ここの表情の変化は見事)のが緊迫感をあおって面白い。
・ついに思いあまった美雪がアンケート用紙を奪いシュレッダーにかけるという荒業に。
用紙を奪ったときの手を真上にあげたポーズ、シュレッダーにかける時、かけた後など一連のシーンの手の表情、顔つきがコミカルかつ可愛くて、人の手から物をひったくるという行動にもかかわらず乱暴な印象を与えない。
ほんわか天然系の美雪のキャラクターが上手く生かされた場面。春子の口ぐせをまねた「だ、だったら、何か?」もなんか上擦り具合が可愛らしいし。
・「まさか東海林主任の相手、森ちゃん?」という小笠原の言葉にひときわ大きな声で「まさかあー!」と言う浅野。
声のボリュームに彼の感情が表れてます。直後の「ちがうよね?」と言う笑いを含みつつも弱弱しい声も・・・。
ハケンの敵とは結婚したくない、という文面から相手の女性がハケンなのはほぼ確実だしその中で東海林と接点のある人間て限られますからねえ。
近くんの「み、認めた!認めましたよ!」も驚きすぎで笑える。
・東海林と美雪が出来てたらしい、と聞いて仕事放り出してかけつけてくる販売二課の人たち。本当にこの会社は(笑)。
きっとハケンが企画を出した件で皆が美雪を吊るし上げる空気だったときに東海林が一人美雪をかばい気味だったことなど思い起こして、「さては出来てたからか」とか脳内補完してそうです。
・「大変です!東海林主任の代わりに僕がプレゼンやることになりました!」
本当ならマーケティング課も販売二課も大騒ぎするはずの事態なのに、みんな東海林のプロポーズ問題に夢中で完全スルー。うわあ里中可哀想。
春子だけが「主任、急いでください」とプレゼン資料を手渡す。電話を取り次いだ時点で事情を察してはいたんでしょうが、それにしてもこの資料準備の手回しの良さ。やはり東海林がプレゼンを辞退することを最初から予測していたようです。
東海林の行動(自分がこうたきつけたらどう動くか)なら読めてしまうのか。それは春子の眼力なのか東海林の人間性への信頼なのか。
・「ねえ、こっちなわけ?こっちじゃなくて、こっち?」
春子と美雪を交互に指差しながらの黒岩の声の裏返りっぷりが可笑しい。
しかし春子じゃないのが意外、という黒岩の態度は、東海林の春子に対する好意をおよそ察していたということでしょうか。東海林のことずっと見てたからですね。
・「でもー、断ったんだよね?」 浅野の口調がもう切なくて。棒立ちになってるし。
浅野くんはキャラの性格上全体に声が高めですが、ここの場面はとくに少年のような声音で、いかにも頼りなさげ。
「まあ浅野ちゃん落ち着いて。コーヒーでも飲もう」と肩を抱くように浅野を連れ出す小笠原と浅野の背をぽんと叩く近くん。浅野が美雪好きだってバレバレなんですね。小笠原をちょっと振りむいて頷く浅野くん涙目です。
しかし春子に「働きなさい!」と怒鳴られたそばから揃って職場放棄ですか。
・「春子先輩、あたし、お役に立てました?」 恩に着せるところのない、春子の役に立てたなら本望という表現に美雪の性格の良さが表れています。
なのに春子は「業務時間内は携帯電話の電源を切ってるので全然大丈夫ですが、それが何か」と。
第七回で「勤務時間内は携帯電話の電源は切りなさい」と美雪を叱ってましたもんね。
・「ダメハケンも二ヶ月で育ったわね」と微笑む春子。
美雪がアンケートをシュレッダーにかけた時にも見せた強気な感じの笑顔は、自分の窮地を救おうとしてくれたことへの感謝だけでなく、春子を守るため自分が盾になった美雪の勇気を称えたものでしょう。
一方、第七回で春子に「人を守るには体を張るか命を張るか、自分のクビをかけるか」と言われた里中は皆が電話をかけるのを止めようとしたものの、結局止めきれず後ろでおろおろしていただけ。春子の「弟子」二人、今は美雪が一歩リードでしょうか。
美雪が自分の行為を「個人情報守らなきゃと、もう、必死になっちゃって」と表現したのも、第一回で一ツ木を介して春子の携帯の番号を手に入れ、個人情報だと怒られたのと対になっていて、美雪の成長ぶりを際立たせています。
・里中はプレゼンに際し「食べた人の喜ぶ顔が見たい」という志をまず語り、ハケン千人へのアンケート結果も提示して、結局無事企画を通すことに成功する。
先に東海林や桐島に退けられた理想論そのままの、現時点では価格1000円になってしまう弁当の企画が通ったのは、春子の作った資料が秀逸だったせいもあるのでしょうが、会長同様に他の重役たちも価格設定ほかに難はあれど消費者のニーズに応えた新しい発想の商品に期待をそそられたのでは。
里中を「あいつは会社をわかっとらん」と言った桐島や東海林の方が実はすでに時代遅れになりつつあるのかもしれません。
・里中からハケン弁当の企画が通ったこと、マーケティング課の手で実現できることを聞いたとき、浅野は開口一番「すごいよ森ちゃん」と実に嬉しそうに言う。
企画を通してきた里中主任でなく真っ先に企画発案者の美雪を称揚するあたりのわかりやすさが浅野の可愛いところです。
しかし彼は、現時点では自分よりずっといい仕事している美雪に対する嫉妬心とか全然ないですね。その素直さ、彼女をハケンだからと低く見る感情がないのは彼の良さですが、「自分も負けないぞ」と発奮する部分もない。
浅野くんが意外にモテないのはこの覇気のなさにも理由があるのかも?(でも里中はモテまくりだ)
・近くんの愛妻弁当自慢に対して、「のろけは、いいです」と呆れ気味にツッこむ浅野。
彼は目下、美雪が(断ったとはいえ)東海林にプロポーズされた件で落ち込んでる最中ですからね。そりゃツッこみたくもなります。
・「でも毎日同じおかずじゃ飽きますよね」「そんなことありません(中略)サバ味噌だけは外せません!」。いや飽きると思いますよ(笑)。
ここは浅野の方が正論。春子もサバ味噌のこととなるとまるで冷静さを欠いてるなあ。
・浅野の大学の後輩・那須田(斉藤祥太くん)がいきなり登場。
「ウイッスー!」の挨拶といい、「ハケンてなんすか?」といい・・・。いくらなんでも頭悪すぎだろう。いかにコネ入社とはいえ。春子以上に極端なキャラクター。
真面目なハケン美雪との対比のため「ダメすぎる正社員」を出したのはわかりますが。
・美雪を一目見て「超可愛い~♪」とデレデレの那須田。女の子の好みは浅野先輩と一緒ですね。
「僕、四月から正社員なんで、僕が入ったら歓迎会して下さい!」 こらこら、「よろしくお願いします」でしょ。
・東海林の辞表提出について話す里中と黒岩は、通りすがりの浅野に話を聞かれてしまう。
そのまま立ち聞きするでもなく聞かなかったことにするでもなく、「主任、本当ですか」と尋ねてくるストレートさが浅野らしい。この時の里中を見つめる真っ直ぐな視線が・・・。
里中としては大事にしないためなるべく皆には知らせまいとしてたようですが、この目で見られちゃあ気弱で真っ正直な里中にごまかせるはずもないですね。
・今年は景気が上向いた関係で皆順調に就職が決まっているのに比べ、卒業が一年早かったために就職氷河期に当たってしまった自分を、「あたしってどこまでついてないんだろうなあって。先輩、世の中ってどうしてこんなに、不公平なんですかね」と美雪は慨嘆する。
しかしハケンになったおかげで彼女は職業人としてのキャリアの初期で春子に出会い、仕事をするうえでの気構えを教えられた。里中をはじめとするマーケティング課の人たちの情に触れ、おなじ目的意識を持つ仲間と共に働くことの面白さを学んだ。
長い目で見れば就職できずに一度ハケンになったことは、美雪の人生にとってかけがえのない経験になったんじゃないか。
そして春子の返しは「なんだそのくだらない質問」。久しぶりの口ぐせもどこか暖かいです。仕事の時間外に文句も言わず美雪のグチを聞いてますしね。
(つづく)