それは「自分は名(上っ面の礼儀)ではなく実(仕事の成果)をこそ重んじる。企業もハケンを雇うのは本来実を求めてのことなのだから、名まで要求するな」という理念=春子にとってのあるべきハケンの姿を、自身の言動の一切をもって周囲に示していこうという意志の表れなのでしょう。
そして桐島が春子の態度に不快な様子を全く見せず、「許せませんよあの女」と言った東海林に「人件費削減のためにハケンを使う、これ企業の常識。三ヶ月だよ」と言い切るのは、彼がまさにハケンに実しか求めてない、ハケンを作業機械と見なしているから。
だから内心は一人の人間としてムッとする部分があってもハケンを使う「企業人」としてそのへんの感情は押し殺す。
彼の方が春子にストレートに腹を立てる東海林よりずっと、ハケンをモノとしか見ていないのですよね。奥さん元ハケンなのに。
・東海林は一ツ木に電話をかけて春子についての苦情をいい、「あんたのとこからハケンとるのもうやめようかな」と脅しをかける。
本来人事部でない東海林に、春子の処遇についてはまだしも(それだって直属の上司ではない)ハケン全般の雇用について仕切る権限などないはず。
人事部にそれなりの影響力はもってそうだけど(元人事部だし)直接一ツ木さんに電話するというのは、ドラマ的にわかりやすく見せようという意図と、あとは「TEAM-NACS」ファンへのサービスですかね。
・「カンタンテ」での春子は、会社にいる時とはうってかわった穏やかな笑顔を眉子ママ(白川由美さん)やリュート(城田優くん)に向ける。窓から入る柔らかな朝の光も春子の心持ちを象徴しているよう。
「また三ヶ月、ご厄介になります」との言葉通り、「契約が切れたら、サヨナラ」の派遣先と違い、ここは彼女の帰る場所なのですよね。
でも盛り付けたパエリアを下で一緒に食べず自室に持って上がるあたり、どこか彼女たちにも距離を置く部分があるのかな、という気もします。
・美雪を呼び出して彼女の作った書類を「全部うちのハケンにやり直しをさせました」と告げる黒岩の向こうで、ハケンの竹井瞳(清水由紀さん)が小馬鹿にしたような表情で美雪の方を見て、聞こえよがしに書類をデスクでトンとやって端を揃える。地味に上手いお芝居。
「一応部長にも報告しといたからね~」という黒岩さんの語尾の優しげな響きも嫌味が聞いていて恐ろしい。部屋の戸口近くで聞いている浅野くん、遠くて表情はわかりませんがきっと心配そうな顔してるんだろうな。
・春子に美雪を手伝ってあげてほしいと申し出て断られた里中の「手伝いたくない、ということですか」「もういいです」の言い方に人の良い彼なりに春子にイラッと来てるのが出ている。
一言「業務命令です」ときっぱり言い切れば作業機械としてのハケンに徹すると決めている春子は従ったはず。春子もある意味上司として自分を使いこなせるか里中を測っているのかも。
・6時の終業間際、席を立つ前にちょっと隣の美雪の方を気遣わしげに見つめる春子。この一瞬だけの表情に、彼女がハケンとして生きるにあたって封印し(ようとし)てきた情がこもっている。
・エレベーターでの春子と桐島のやりとり。ハケンをモノのごとくに割り切っている桐島が、ここでは春子の情に訴えかけるような言い方をする。
「ハケン」に徹しようとしてる春子への試し、というか一連の無礼な態度が内心癪に障っててちょっと意地悪言ってみた感じかな。
結局相変わらずきっぱりと言い返されて「言うねえ君も」と苦笑するわけですが。
・このエレベーターの会話で春子の方も「ハケンにハケンの面倒を見させようとする」社員にイラッと来てたのがわかる。
ただ里中の場合、ハケンに面倒事を押し付けようとしたのでなく、単に春子のスキルが一番高かったから春子に頼んだだけで、例えば浅野の方がパソコン入力のスキルが上だったら(彼は設定上はメカに強いことになっている)、浅野に頼んでたでしょう。
そうした「ハケンを作業機械でなく一チームメイトと見なしている」(歓迎会をしようとするとかの表面的なことだけでなく本心から)里中の性格を春子が了解するのはもう少し先のこと。
・カレンダーの日付に斜線を引きながら「あと75日か~・・・」と呟く春子。誰にも心を開かず作業機械に徹するような日々が楽しいはずもなく・・・。
自ら最良と信じて選んだ生き方でしょうが、彼女の憂鬱が伝わってきます。
・タクシーでS&F社近くに乗りつけた美雪に黒岩の嫌味が数連発。これだけ言われてもムッとした顔をせず素直に応対してる美雪は、性格的には本当いい子なんですよね。
逆に黒岩さんの態度はお局様丸出しでかなりヤな感じ。まあ男に交じってバリバリと責任ある仕事をこなすキャリアウーマンを自負してる彼女にとっては、ハケンの女の子たちの「とりあえず楽に仕事してお金もらえればいい」的な言動が気に入らないんでしょう。
美雪は本人としては真面目にやってるわけですが、黒岩さん的には「本当に仕事やる気があったら大学時代に相応のスキルを身に付けてるはずでしょ!」って感じなんじゃないかな。
・美雪が書類とデータの入ったディスクをタクシーに置き忘れたことでマーケティング課は大パニックに。
美雪と浅野が手分けせずに一緒にタクシー会社を回ってるのは非効率ではありますが、動揺しまくってる美雪を一人で行動させるのも危険な気はします。浅野に「次行こう」って促されたときも半ば自失状態に見えましたし。
・文書紛失の責任問題をうんぬんする東海林たち。東海林と黒岩は部署が違うので直接関係はないのですが(マーケティング課は販売二課から枝分かれしたようなので無関係ともいえないけど)、同僚の里中を心配して、ということでしょう。
この状況で黙々と仕事を続けている春子(実は美雪が紛失した分の書類を作っている・・・のかと思ったら全然違ってましたね)を東海林たちは責めるのだが、何とかして会議に書類を間に合わせる努力も目前の仕事も放棄して、間に合わなかった時の事後処理ばかりに気持ちが行っている東海林たちより、彼女の方がはるかに建設的にも思える。
・春子を罵倒する東海林を止めに入り、「お願いします。力になってください」と頭を下げる里中。
機械に頭を下げる人間はいない。「あなたたちは、ハケンを人と思ってるんですか」と社員を批判した春子はこうした里中の言動を、自分を口先だけでなく心から人として遇しているがゆえのものと認めたから彼のため動く気になったのですね。
・書類を置いて部屋を出て行く春子を見て、小笠原は「12時だから昼飯食いに行っちゃったのか」と考えるが、いつも春子が席を立つのは時報ちょうどの時間。
時報がなる数秒前に部屋を出たのは、業務時間内の行動=食事に行ったのではないのを示唆している。
・春子がS&F社を出たところで擦れ違ったタクシーをスローモーションで映し、さらにそれを凝視する春子のカット。先に春子はタクシーで出勤する美雪を目撃しているので、タクシーの柄が同じなのを見て一発でタクシー会社を特定したのがわかります。
そしてやはり美雪が出勤するのを見ている(それも春子のような信号待ちの数秒ではなく中の美雪に話しかけてもいる)黒岩はそれがどこのタクシーか覚えていなかった(覚えていれば当然里中に知らせるはず)。
つい数日前にハケンで来た春子と違い、黒岩は会社の近所を走っているこの会社のタクシーを見慣れているはずなのに。このへんに春子と黒岩の優劣が表れています。
・「タクシー、廃車されちゃったんです。」 多くの視聴者が「配車?歯医者?」と耳を疑ったらしい驚きの展開。即日廃車?現場検証とかは?
「森ちゃんが降りてすぐトラックに追突されて、それで運転手は病院に・・・」ってどれだけ不運なんだ。
ここまでの、職欲しさに自分のスキルを偽ったけど能力が追いつかずすぐ発覚したり、終わらない仕事をこっそり家に持ち帰ったり、重要データを紛失したり、という流れは我が身に置き換えて胸が痛かった人もいただろうと思うんですが、この超展開で一気にふっとんだんじゃなかろうか。
視聴者が真剣になりすぎないようにあえて極端なストーリーにしたんでしょうね。里中の「まだスクラップされてないなら希望を持とう」のセリフにも思わず笑ってしまった。
・書類とディスクを取り戻すべく廃車群をよじ登ろうとして転落する美雪。
男性陣三人が駆け寄るものの抱き起こしたのは里中と小笠原。浅野は今後もこういう局面でかならず出遅れてしまう。気の毒な。
・なんとクレーンを運転して登場する春子。タクシー会社を一発で特定した彼女はまずイーグルタクシーに電話して浅野に前後して状況を把握、どこからかクレーン車を借り出してきた、という流れでしょう。
「美雪が無くした分の書類を代わりに超短時間で仕上げる」というこちらのストーリー予測のはるか斜め上を行ってくれました。
・問題のタクシーを無事降ろしたあと一人クレーンを操縦して去ってゆく春子。「あっしには関わりのねえことでござんす」と言いつつ事件を解決し、その後どこへともなく去ってゆく木枯し紋次郎のごとく。
まあ春子はお昼ごはんに行っただけで、当面は休憩終われば会社に戻ってくるんですけど。
・「ようじ屋」で昼食をとりつつ自分について語る美雪。
就職試験に23社落ちたのは不況下ではそう珍しくないが、大学卒業からたかだか8か月の間にいろんなバイトを転々としたというのは、やはりしょっちゅう失敗やらかしてはクビになってたんだろうか。
・「日本中の会社が潰れようと私は大丈夫。ハケンが信じるのは自分と時給だけ。生きていく技術とスキルさえあれば自分の生きたいように生きていける」。
これは実際に自分が正社員だった昔にリストラを経験した(ことが回想シーンで暗示されている)経験から来る信念ですね。
でも淡々とした抑揚のない口調と無表情は、この言葉を自分自身に(周囲の情に流されないために)言い聞かせようとしてるようにも思えます。
日本中の会社が潰れたら雇ってくれるところがないような気もするけど・・・そしたら海外行くか。
・会社に帰ってきた美雪に向けられるフロアの皆の視線。まさに針のムシロと言う感じ。
でもいつにない厳しい表情で前を見て歩く美雪には、春子の言葉を受けて自分に出来るせいいっぱいをしようとする意志が漲っています。
・とはいえ、あれだけのことをしておいて「もう一度チャンスを下さい!」と言った美雪には驚いた。「上には黙っておきます」とあっさり不問にしてしまった里中にも。
確かに上に知れると里中の監督責任にもなりかねないから彼としても黙っといたほうがいいんだけど(里中のことだからそうした計算ではなく純粋に美雪をかばったぽいですが)。
しかし上に黙ってようにもフロア中が知ってるんだけどなあ。
・東海林のハケン嫌いの理由が明らかに。リストラされていった先輩たちを惜しめばこそ、彼らの位置に取って代わったハケンを許せない、と。
本来彼が怒るべきは先輩たちのリストラと代わりにハケンを採用する方針を決めた上層部なんですけどね。彼が腹を立てている春子だってリストラされてハケンになったことが暗示されているし、東海林の先輩たちも今はどこかでハケンとして働いているかもしれないわけで。
ここで東海林の仕事仲間に対する情の深さが示される。その情は里中にも共通なのだが、ハケンを仕事仲間に含めるか含めないかが二人の大きな違い。やがてその違いが二人の立場を大きく変えてゆくことになります。
・マーケティング課の初プレゼンは米の市場調査に関するもの。
ここで米がテーマだったこと(ここで米への関心が喚起された?)が、後の「ハケン弁当」と込みで里中が企画した「マイ弁当箱」(米から作ったプラスティック使用)につながってゆくわけですね。
・一人お茶を飲みながらかすかに口元に微笑みを浮かべる春子。日頃セーブしている「情」が一瞬にじみ出た場面でしょうか。
・「カンタンテ」でフラメンコを踊る春子に驚愕する東海林と里中。視聴者も一緒に驚愕。
驚きのあまり口も目も見開いたまま東海林の腕を激しくゆする里中とただ呆然とステージを凝視する東海林のどちらの方がよりショックが強かったやら。
桐島は春子がこの店に住んでること、彼女がここで踊ってることを承知の上で二人を連れてきたんですよね。
どういういきさつで彼がそれを知ったのか(目をつぶってフラメンコにノリノリだったことからすると、最初は本当にフラメンコ目当てでやってきて偶然知った?)、どんな思惑で東海林たちに春子のプライベートをバラしたのか。部長も謎が多い。
(つづく)