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about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『吉祥天女』(2)-4(注・ネタバレしてます)

2008-10-11 02:04:26 | 吉祥天女
・海辺の遠野家の別荘に小夜子を呼び寄せた暁。
立派なダイニングにサンドバッグが吊るしてあるアンバランスさが暁の不安定で凶暴な性格にリンクしているようにも見えます。

・小夜子を押し倒すも欠けた瓶を突きつけられ固まる暁。首から血を流しながらも暁は小夜子を魅了されたように見つめる。
ここで二人の力関係ができあがったのでは。

・「ミキさん」なる人物とともに叶家の蔵を調査する鷹子。ここで幼い小夜子がなぜ家を出されたのかの謎が語られたり、根津の死体が発見されたり一気にサスペンス色が強くなる。

・屋上で話す由似子と小夜子。「由似子は好きな人いないの?」というあまりに普通の少女らしい問いに、小夜子が高校生だったことを思い出す。
由似子がいる場面では小夜子も少女の顔をしていて、なんかほっとします。

・好きな男の子・将来の夢と、母や姉が心配していたのと同じことを小夜子に問われる由似子。
自分には何の取り得も将来性もないと由似子は言いますが、小夜子は「由似子みたいな女の子に生まれたかったなあ」と言う。
自分があまりに平凡であるということは普通人にはしばしばコンプレックスとなりますが、小夜子のように美貌と生まれと壮絶な過去によって平凡さから隔てられている人間にとっては、平凡こそが遠い憧れなのですね。

・禍々しいほどに赤い空を見せたあとで、小夜子の祖母の身体が弱っていること、祖母が小夜子に財産を譲る意思を持っていることが明かされる。
「どうするかは自分で決めなさい」「幸せになるのよ」。
小夜子に財産を譲れば財産がらみの争いに巻き込まれるのは目に見えてるのに、あえてそうしたのは財産を狙ってくる輩を退治して叶家を守ってほしかったから、そして過去は忘れて幸せになってほしかったからですね。

・5歳のときに幼女が殺されるのを見たという由似子の告白。回想の中の幼女の目が現在の小夜子と同じ強さをもっているのが何だか悲しいです。

・小夜子に上述の告白をする由似子は意外にも(小夜子が例の少女ではないかと疑っているわりには)済まなそうな顔をしない。
小夜子を試すような、挑むような感じさえある。由似子の意外な芯の強さが出ているシーン。

・図書館で鷹子の前に現れる雪政。効果音の不気味さから、叶家の秘密をほじくっている鷹子が消されるんじゃないかと思ってしまった。
毒薬の本の話をするのは鷹子を威嚇する意味もあったりして。

・祖母の死を知らされる小夜子。母が手を触れている着物もあたりに散らばっている着物も赤が基調なのに対して、祖母の部屋で揺れるカーテンの白が対照的。
強い風の音が主を失った部屋の寂寞とした感じと、これから起こる嵐を思わせる。

・通夜の席で兄(原作によると義兄ですが、映画では「兄さん」としか言わないのでとりあえず兄としときます。映画と原作で結構人物設定変わってたりするし)に向かい何か企んでいそうな笑顔を見せる浮子。
小夜子が突然の祖母の死に驚く場面を思い起こすと、叶家のっとりを企む彼らが(おそらく直接には浮子が)小夜子の祖母を密かに害したことが仄めかされているのがわかる。
通夜にやってきた涼が彼らの方に反感を篭めた眼差しを向けているのも、勘の鋭い彼だけに何かうさんくさいものを感じとっているからだろう。このシーンの直後にこれまでは一応暁に従っていた涼がきつい口調で暁を責めるのは、このシーンがきっかけになっているのでは。

・暁の左耳にガーゼがあててある。小夜子に切られた傷が治っていないので、別荘連れ込みからさほど時間が経ってないんですね。
思えば小夜子が転校してきてからここまでの展開の早いこと。

・「俺と水絵を追い出したければそうすればいいじゃないか」。
初めて?暁に逆らう涼の横顔は迷いなくじっと暁を見据えている。涼の正義感の強さと遠野家との決別の意思の固さが感じられます。
対する暁は「涼も思ってることちゃんと言えるようになったじゃないか」。
暁はこれまで居候の遠慮から一歩引いて自分たちに接していた涼に内心苛ついてた、対等でありたいと思ってたってことでしょうか。暁は涼に親友であるより腹心の部下であることを求めてるような気がするけど。

・「羽衣」(おそらく)の稽古をする由似子たち。由似子は華奢な撫で肩体型のせいか着物が似合いますね。凛と張り詰めた表情が美しいです。

・「あなたは私のことより涼くんにだけは負けたくないのよね」。
裸身に白い布を巻きつけただけ(羽衣を纏う天女のごとくに)の姿で後ろから暁の肩に手をかけ微笑む小夜子が、表情といい声といいすこぶる妖艶。
最初暁の身体越しにしどけなく投げ出した足だけを見せるアングルも色っぽく、かつ関係を結んだ後の男女の馴れ合った空気を上手く出している。

・暁の部屋から小夜子が出てくるのを見て涼ははっと立ちすくむ。そのこわばった顔に彼の受けたショック、悲しみが凝縮されていて、涼が小夜子を愛しかけていたことが一瞬で伝わる。
雨に濡れているせいもあり、涼がとても可哀想に見えて胸が痛む。勝地くんはこういう表情が本当に上手い。
「家を救うためだかなんだか知らないけど、ご苦労さんだな」という時の挑発的な口調や表情も、ショックを隠すための強がりのように思えます。

・継続して叶家の蔵を調査中の鷹子。先に死体が発見されたりしてるのに脅えるようでもなく調査を続けるのもすごければ、続けさせる叶家もすごい。

・鷹子は天女を陵辱した男の血筋が遠野家に繋がっていると言う。
しかし叶家が天女の末裔ならば、自動的に叶家も天女を陵辱した男の血をも引いているという事にならないか。要は叶家と遠野家は昔から親戚だったという話ですね。

・電話にも出ない小夜子をじれて追い回す暁。
これまでは根津にも別荘の時の暁にも挑発的でありつつ寸止めで痛い目を見せていた小夜子が、わりあいあっさり暁と寝たのが意外だったんですが、いったん肉体関係を持ってからじらすほうが暁を篭絡するには良いと判断したわけですね。
女は抱けば自分のものになると思ってきただろう暁にとって、小夜子のように寝たあとも以前と態度が変わらない―男の顔色を窺うところのない―女は初めてであり、どうやれば小夜子(の心)を落とせるかわからなくなっただけに、かえって小夜子の事が頭から離れなくなってしまったんでしょう。

・能舞台の上で天女の羽衣を腕に抱える小夜子を、赤みがかった光が点滅しながら照らしだす。
光の正体はわかりませんが(点滅するリズムは稲光っぽいがそれにしては赤すぎる)、禍々しさ、緊迫感を醸し出していて、これから本格的な遠野家潰しにかかろうとする小夜子の般若の一面を印象づけます。

・小夜子の父にしなだれかかって酒を飲む浮子。その密着度、馴れ馴れしさからやはり二人が不倫関係であることがここではっきり示される。
ところで小夜子父は小夜子の祖母(彼にとっては実母でなく義母にあたるのか?)殺しに加担しているのだろうか?単にたまたま彼女が死んでくれたおかげで目の上の瘤が取れて浮子とともに遠野家に与して豊かに暮らせるくらいの気持ちでいるだけなのか。
気弱そうな雰囲気からすると殺人には関係してない気がする。祖母殺しにじかに関わってたら実父といえど小夜子が見逃さなかっただろうし。

・小夜子父は酔いつぶれただけなのに浮子だけが毒に冒されたということは、浮子が一人で開けた二本目の酒に毒が入ってた(小夜子ないし雪政が入れた)ということですね(父親の方もあの騒ぎでも目を覚まさない潰れ方からすると睡眠薬を盛られてるようですが)。
二本目の酒は父が手をつけない確信があったんでしょうが、際どい計画ですね。

・呼吸困難に陥り、これまでにない口汚さで小夜子を罵り苦悶する浮子。
結い上げた髪をほどいたり、着物を肩肌脱ぎにはだけて襦袢を見せる動きが断末魔の人間の行動としておよそリアリティがないですが(自然に乱れるんでなく能動的な動きなので)、鬼気迫る美しさがあって画面に引き込まれるのは確か。
はだけた襦袢の赤も、小夜子のワンピースの赤も、ともに血のイメージですね。

(つづく)


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