about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『吉祥天女』(2)-2(注・ネタバレしてます)

2008-10-04 05:56:38 | 吉祥天女
・由似子の家。ダイニングのテーブルクロスや暖簾などの雰囲気が70年という時代設定を思い出させる。お母さんの服装なんかも。

・由似子が男の子に関心を示さないこと、卒業後の進路がはっきりしないことについて心配する母と姉。由似子が何年生かわかりませんが(春先に部長やってるんだから2年生か?)、この時代ならとりあえず短大に進学という感じに落ち着くのかな。
目を輝かせて小夜子の話をしたところで「男の子に興味はないのか」という流れになるのは由似子の小夜子への感情が女子校などでありがちな同性への擬似恋愛要素を持ってる(と家族は思った)ことを匂わせます。
原作ほどはっきり男嫌いじゃないかわり、男嫌いセンサーになぜか引っかからない涼とのからみもほとんど出てきませんね。

・部屋で制服のままお能の稽古をする由似子。後ろの窓が西日に染まり、舞台照明のように由似子の姿を浮かびあがらせる。
由似子が舞い出したときの空はすでに暗いので、まるで時間が逆行したかのような印象を受ける。こういう気象現象があるんだろうか。
時間の整合性は気になるものの、映像的にはこの映画中でも屈指の美しい場面。窓を開けて空を見つめる由似子の横顔もとても綺麗です。

・夜・遠野家。実家を訪ねるだけなのに浮子が着物姿なのが、いかにも旧家に嫁にいった女性という感じを出しています。
暁の父親が涼を呼びとめ、「毎日どこをほっつき歩いてるんだ」と問いただすが、それはこっちも知りたい(笑)。原作と違って女たらし設定がなく遊び仲間も出てこないし、涼の不良行為って煙草吸うのとバイクに乗る(当時バイクは結構不良っぽいイメージ持たれてたと記憶してます)くらいなもので。
まあこのおじ、おばの態度を見てると、涼が家にいたくないのも無理ない気はしますが。

・水絵の部屋に入る時、いちいちノックなどしないところに兄妹の隔てのなさが感じられます。
そして水絵に呼ばれて「ん?」と問い返す声、彼女の頭を撫でる仕草と微笑みに、この家での生活に涼が甘んじているのは水絵のためなのだという、それだけの愛情が伝わってきます。

・叶家初登場。遠野家が洋風なのに対しこちらは純和風と、成金と旧家の違いをわかりやすく見せている。さらに原作の祖父のポジションに祖母(原作では早くに亡くなっている)を持ってきたことで、叶家-女系の一族、遠野家-(ずるい)男たちの家系という対比構造が原作よりわかりやすくなっている。
親戚とはいえ外から引き取られた涼はこの図式からやや外れていて、それが遠野家と小夜子の間で揺れる彼の特殊な立場に繋がっていきます。

・母とともに色とりどりの着物を眺める小夜子。しかし母が小夜子に着せ掛けるのは色のない白い着物。
羽衣をイメージした着物を纏うのは小夜子を天女になぞらえたものでしょうが、その飾り気のなさがかえって小夜子の美を引き立てています。

・小夜子を抱きしめ、「お母さんがしっかりしてなかったから」と詫びる母。
彼女が「しっかりしてなかった」ことで小夜子に何が起こったのかは後々小夜子の口から明かされますが、泣きながら娘を抱きしめる母に対して小夜子の表情はいたって冷たい。小夜子が無力な母に軽蔑と憐れみを抱いているのがうかがえる。

・小夜子と浮子との会話。挑発的な口調に毒を含んだ二人の会話を聞くと、小夜子は母より血の繋がらないこのおばの方に性格が近いんじゃないかという気がします。目的意識が強く、そのために自分の魅力をフル稼働して男を操縦するあたりが。
しかしまだ高校生でありながら、ゆうに10歳は年上だろう浮子を相手に対等に渡り合っている小夜子はやはりすごい。

・小夜子の父と浮子がともに一つ部屋に消える。
それだけなら何ということもありませんが、陰から小夜子母が二人を意味ありげに(物思わしげに)見つめているのをあわせ考えると、小夜子父は体の弱い妻をよそに未亡人の浮子と不倫の関係にあるのが察せられます。

・神社へ向かって走る小夜子、由似子、真理の三人。はしゃいで騒ぐ少女たちの姿が、遠野家・叶家のどろどろを見たあとだけに清清しい。
目に鮮やかな境内の緑が彼女たちの健全さ・さわやかさを強調します。

・さん付けじゃ堅苦しいから名前で呼ぶ、と小夜子と由似子が互いに宣言するシーン。
いきなり背を向けたまま話の流れを無視して「小夜子!」と叫ぶように言う由似子と、こちらも少しタメてから「由似子、真理」と呼ぶ小夜子。なんか恥ずかしいほど気負った二人(とくに由似子)の様子が昔ながらの「青春」という感じで、その青臭さが心地よい。

・にわかに乱入して襲い掛かってくる不良たちを一人で次々倒す小夜子。杏ちゃんのアクションがめちゃ格好いい。
腕をへし折る容赦のなさ、「これでおしまい?」という声の可愛らしさのコントラストが怖いです。

・煙草をふかしながら小夜子の活躍を見つめる涼と暁。このシーンに限りませんが暁がやたらと涼にべたつくのは勝地くんいわくちょっと同性愛的な要素もあるんだとか。
まあ原作からしてホモセクシャルというかホモソーシャル要素は多分に感じさせる二人でしたが。

・折れた竹の尖った部分を大沢の喉下につきつけて「喉仏は男の急所なんでしょ」と脅す小夜子。
単に喉を狙うだけでなくわざわざ「男の急所」と言う言い方をするあたり、男ならではの弱点、ひいては男そのものの弱さを浮かびあがらせ、同時に女である小夜子の強さを際立たせる効果を出している。
全編にわたって女である小夜子が男たちを手玉に取る展開の伏線と言えます。

・正当防衛とはいえ圧倒的な強さと暴力性を見せ、さらに「ひどいケガさせちゃった」としれっと言い放つ小夜子に、真理は若干引き気味ですが由似子はくすくす笑い出す。
由似子が小夜子にとって真の親友になったのはここからだったのでは。

(つづく)

 


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