読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

別府・オトナの遠足2014 (第1回)老舗大衆酒場で惚れ酔い気分

2014-03-18 23:08:33 | 旅のお噂
先週末の15日(土)から16日(日)にかけて、大分県の別府市に行ってまいりました。昨年に続き、2年連続の訪問であります。
と申しましても、今回は土曜日の午前中に仕事を終えたあと、セカセカと列車に飛び乗って出かけていくという、いささか余裕のない小旅行となってしまいました。
しかも、出発直前の土曜未明(金曜深夜)には愛媛県沖を震源とする地震が起き、別府でも震度4から5の揺れを観測。1週間はその余震に注意が必要•••という、ちょっと不安な状況の中での出発となってしまいました。ですが、それなりに楽しい思い出をつくって終えることができたのでありますよ。
これから3回にわけて、そんな小旅行•••というか「オトナの遠足」のお噂を、つらつらと綴っていくことにいたします。第1回は、別府の路地裏で巡り会い、すっかり惚れこんでしまった大衆酒場のお噂であります。

特急列車で別府入りし、ちょっと街を散策して宿泊先のホテルにチェックインし、ホテル併設の天然温泉の浴場で一風呂浴びるうち、時刻は早くも夕方に突入しておりました。この日最大にして、今回の別府旅における大きな目標でもあった、飲み歩きの時間なのでありますよ。
飲み屋街への出陣の前に、懐かしい雰囲気のアーケードのある商店街の入り口近くにある薬屋さんに入り、肝臓保護のためにドリンク剤を買って飲んでおきました。
そこの店主さんいわく、前夜遅くに店を閉めた直後に大きな揺れが襲ってきて、棚から商品がボトボト落ちてきたんだとか。やはり、かなりの揺れがあったんですね。しかし、幸いなことに別府にもその薬屋さんにも、これといった被害はなかったとのことで、ホッといたしました。
店を出るとき、店主さんは「どうぞ、たっぷりと飲んできてくださいね!」と言って、わたくしを送り出してくださったのでありましたよ。いやー、なんだか気分のいい店主さんでありました。

行ってみたい酒場の目星は、すでにつけておりました。別府駅から歩いてすぐの距離にある「うれしや」というお店であります。
実は、昨年5月に来たときにも入りたかったお店なのですが、そのときは残念ながら店休日。今回の訪問の目的は、その「リベンジ」なのでありました。

外観といい、店先にある丼物やカレー、焼きめしなどの食品サンプルが収まったショーケースといい、なんだか古き良き大衆食堂といった雰囲気であります。創業から50年を越える老舗とのこと。
開店時間の5時半きっかりにノレンをくぐると、なんとすでにカウンターやテーブル席には先客の姿がちらほらあって、いきなり「うむむ」と唸ったのでありますよ。
外からも見えるショーケースの中には、煮付けや唐揚げ、刺身、サラダなどなどのおかずがギッチリと並んでいて、その中から好きな品を選んで取っていけるようになっています。また、それ以外のメニューもたくさん紙に書いて貼り出されていて(それらがまた値段が安いのです)、それにもけっこうご飯ものがラインナップされたりしております。そういったあたりも、なんだか大衆食堂的な感じですね(実際このあと、軽く飲んだあとにしっかりとご飯で食事を済ませて店を出るお客さんも何人か見かけました)。



ショーケースの中の料理の豊富さにしばし迷いましたが、好物であるサバの煮付けとポテトサラダを取ってカウンターの隅に腰掛け、生ビールを注文しました。
すると、注文を受けてくださったお店の方が、こう訊いてきたのであります。
「サバの煮付け、温め直しましょうか?」
別にこちらから、そのように注文したわけではございませんでしたが、お客さんが増えてきて忙しさを増していく中でのそのようなお心遣い、まことに嬉しかったのでありますよ。
やってきた生ビールとともに、まずはポテトサラダを口に運んだら•••これが実に旨い!具のバランスの良さといい、しっかりした味つけといい、たまらなかったですねえ。

ポテトサラダの旨いお店はそれ以外の料理も間違いない!という信念(って、それほど大層なもんでもないのですが•••)を持つわたくしは、その他の料理にも期待が湧き上がってきましたね。
果たせるかな、温め直されてきたサバの煮付けも、ちょっと辛めの味つけに酒が進んでこれまた旨く、思わず生ビールをおかわりしたのであります。

やはり別府に来たらこれを食べておきたい、ということで、紙に書いて貼り出されていた品の中から「とり天」を注文しました。
大分人のソウルフードともいえそうなこの「とり天」の発祥の地が、ここ別府であります。市内の多くの飲食店で提供されていて、お店ごとに肉の部位やコロモ具合、味つけ、タレなどに違いがあるようなので、食べ比べてみるのも面白そうです。

こちらのとり天はもも肉に、サクサクしたコロモがうまく絡んでいてこれまた美味。そのままでもいけるのですが、ネギをたっぷり加えた酢醤油のタレをつけていただいても、またいけましたねえ。
あっという間に2杯目の生ビールもなくなり、ひとつ大分の麦焼酎でも•••と焼酎を注文いたしました。しばらくして運ばれてきたのは•••

焼酎ではなくて日本酒でありました。•••まあ、「熱燗ですかぬる燗ですか?」と訊かれて、思わず「あ、じゃぬる燗で」と答えてしまったわたくしもうっかりなのでありましたが。とはいえ、ちゃんとぬる燗に温められた日本酒、これはこれでおいしく頂きました。

そうこうするうちに、店内はすっかりお客さんでいっぱいになっておりました。奥にあった座敷は空いているかと思えば、これも全部予約で埋まっていたのであります。いやもう、大変な活気です。
わたくしは、美味しい料理とお酒に満足しながら、このお店の雰囲気にすっかり惚れ込んでいたのでありました。地元の人たちに愛される憩いの場でありながら、わたくしのようなよそ者をも、温かく包み込んでくれる、極上の空間。
ひょんなことから、わたくしの横に座って飲み食いしておられたご夫妻と会話を交わしました。福岡から来られたというそのご夫妻も、これまで別府に来るたびにこのお店に足を運んでいるそうで、やはりすっかりこのお店と、別府という場所に惚れ込んでおられるご様子でした。
「もう何回も往復するのも面倒ですし、こちらに住んじゃおうかなあ、って」
ああ、そのお気持ち、痛いほどわかりましたねえ。こんなにいい酒場があって、街のあちこちに温泉がある別府、住むのにもいい場所なんでしょうねえ。•••オレもいっそ移住しようかなあ、いつか。

そろそろ次のお店に移ろうとお会計してもらうと、そこそこ飲み食いしたはずなのに、しめて2400円で済みました。味良し、雰囲気良し、値段もリーズナブル。これなら人気があるのも当然すぎるくらい当然だと思いましたよ。
店を出る頃には予約が入っていた座敷もすべて埋まっておりました。満員のお客さんと、それをテキパキと捌くお店の人たちとで、店の活気は最高潮を迎えているかのようでした。
「うれしや」というお店の名前、ダテではありませんでした。気持ちの底から「うれしや」と思えた酒場でありました•••。


「うれしや」を後にしたわたくしは、昨年来た時に大満足して、やはりお気に入りとなったバー「ミルクホール」に足を運び、ゆっくりとお酒を楽しみました。

「ミルクホール」のことは、前回の別府行きのお噂にも記しましたので、詳しいことはそちらに譲りますが、大人の隠れ家的な落ち着いた本格派バーの雰囲気は、しっかりと健在でありました。お酒のことを知り尽くしたマスターさんオススメのカクテルやウイスキーは、どれも体と心に染みるような美味しさで、深まる別府の夜を満喫することができました。ここもほんと、いい酒場であります。
これからは、「うれしや」と「ミルクホール」の2軒が、別府におけるわたくしの「帰るべき場所」となりそうであります。

2軒のお店であまりにいい時間を過ごせていい気分となった挙句、かなり久々に飲んだ後のラーメンまで食べてホテルに戻ることとなり(これがまたあっさりしていて量も手頃だったのでペロリと完食しちゃったんだまた)、今回の旅ではちょいと太ってしまいそうだなあ、という思いがアタマの中をかすめたのでありました•••。

次回は、2日目に訪ねた亀川温泉でのお噂について綴りたいと思います。

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