『おこだでませんように』
くすのき しげのり=作、石井聖岳=絵、小学館、2008年
家でも学校でも、いつも怒られてばかりいる主人公の男の子。彼の行動や言動の底にある、彼なりの理由や考えを大人たちはすくい取ろうとせず、やることなすことが裏目に出てしまっていたのです。
「ぼくは どないしたら おこられへんのやろ。ぼくは どないしたら ほめてもらえるのやろ。ぼくは・・・『わるいこ』なんやろか・・・」と日々悩み続ける男の子は、七夕の日に覚えたてのひらがなで、精いっぱい「おこだでませんように」と短冊に書きます。すると・・・。
子どものときから(そして今もなお)要領が悪く、それこそしょっちゅう何かにつけて怒られてばかりだったわたしは、読んでいくうちにすっかり、主人公の男の子に感情移入していき、恥ずかしながら最後の場面では大泣きしてしまいました。
方言を織り込んだ語り口と、石井聖岳さんによる温かみのある絵が相まって、男の子の心の動きが、読んでいるこちらの気持ちにじんじんと、そして痛いほど沁み入ってくるように思えました。
もっと早く、この絵本と出会っておきたかった・・・とつくづく思う一冊でした。
大人の目からすると、要領が悪かったり余計なことのように見えてしまう、子どもたちの行動や言動。でも、子どもは子どもなりの考えをしっかりと持ちながら、それを一生懸命に表現しようとしているんですよね。
子どもたちそれぞれの思いや頑張りを無下に否定したりせず、ちゃんと受け止めてあげられるような大人にならなければ・・・そんな気持ちを抱かせてくれる、とても愛おしくて素敵な絵本です。どうか、1人でも多くの子どもたち、そして大人たちに読まれますように。