明日へ ー支えあおうー 『被災地 極上旅 ~福島県いわき市編~』
初回放送=2015年11月1日(日)午前10:05分~10:53分 NHK総合
出演=秋元才加
映画『フラガール』で一躍有名となったハワイアンリゾートがあり、東北最大規模の水族館・アクアマリンふくしまや、“美人の湯”とよばれる温泉があることでも知られている、福島県いわき市。ここでは、観光マップやガイドブックには載っていない、地元の人たちだけが知るスポットや味覚を紹介した「裏マップ」が話題になっているといいます。4人の地元女性により取材、編集されたその『いわきうふふ便』というマップは、今年9月に発行されて観光案内所などに置かれるや、たちまち評判となって初版分はなくなり、さらに1万部も増刷されるほどの人気ぶりなのだとか。
その『うふふ便』に掲載されている、いわき人だけが知る隠れ名所を、編集した女性たちとともに女優の秋元才加さんが訪ねたのが、この『被災地 極上旅 ~福島県いわき市編~』でした。
まず最初に訪れたのは、“いわきの赤い彗星”の異名を持つ、真っ赤なつなぎがトレードマークである農家の男性の畑。赤いつなぎは太陽をイメージしたもの、なのだと男性は言います。
その畑で里芋を掘り、採れたての里芋に舌鼓を打つ秋元さんに、男性は「美味しいのは里芋だけじゃない。実は土も美味しい」と言います。おそるおそる土を口に運んだ秋元さんでしたが、これもまた美味しい、と満足気な表情です。「土が苦いと野菜も苦くなる」というその男性は、美味しい土を使って野菜を栽培することが「自分ができる、食べてくれる人への敬意」だと語ります。
男性は、自分の畑へ積極的に、外から来た人たちを招き入れているのだとか。それを通じて得た実感をもとに、男性はこう語りました。
「まだまだ風評被害があるのは確かだけど、ここに来てくれる人たちと接していると、本当に風評被害なんてあるのかな、と思う。最後は風評被害なんて言葉は忘れてもらって、美味しさだけが残ればいい」
続いて秋元さんらが訪れたのは、1日1組限定で営業しているフランス料理のお店でした。
先の“いわきの赤い彗星”と呼ばれる農家の男性が栽培した里芋を使った料理は、塩を軽く振った里芋の上にカリカリの衣をまとったサンマが乗っかった一品。とはいえ、ここでのサンマは「ソース」であり、主役はあくまで里芋だとか。他の料理も魚や肉を使ってはいても、メインとなっているのは地元の農家が丹精こめて育てた野菜のほうです。他にも、「ドライトマトのオリーブオイル漬け」などの、野菜を使った加工品も人気です。
店主の男性は毎朝、地元の生産者の畑に直接出向き、吟味して野菜を仕入れているそうで、そのため1日1組が限界なのだとか。「だから自分の料理ではなく、生産者と一緒に作っている料理」と店主は語ります。
震災後、自分には外から仕入れる食材を使うという選択肢もあった、という店主でしたが、表情は笑ってはいても土気色をしていた地元農家の方々を見て、地元産100%でいこうとの決意を固めたのだとか。店主のこのお言葉が印象に残りました。
「いい生産者がいわきにいて、僕は幸せです」
次に訪ねたスポットは「いわき回廊美術館」。震災後に設けられた入場無料の施設で、100m以上にわたって続く木の回廊にはたくさんの作品が展示されています。また、隣接した広場には、急斜面のてっぺんに設えられた「空中ブランコ」があり、眼下にいわきの自然を眺めながらのブランコ漕ぎは「(アニメのアルプスの少女)ハイジの気分」を味わえそうな迫力っぷり。
ここは、いわきに桜の名所をつくるために活動している市民プロジェクトの拠点でもあります。その代表の男性は、原発事故の影響により「自分のふるさとが、誰も来たくないような場所になったのかと思うと気持ちにズンときて、悔しかった」といい、「誰もが来たくなる場所を」つくろうと、このプロジェクトを始めたのだとか。
99,000本の桜を、1人につき1本、100年がかりで植えていくという、子どもや孫の世代を見据えたプロジェクト。回廊美術館の回廊には、子どもたちが描いた満開の桜の絵もたくさん展示されておりました。
「地元の人しか知らないところをどんどん紹介して、こういうステキなところもあるんだよ、と提案できたら」との思いで企画された『いわきうふふ便』。しかし、すべてが順調に運んだわけでもありませんでした。掲載依頼に対して「震災と関連づけられるのであれば載せないでほしい」と断るお店もあったのです。
震災に対して、地元には複雑でデリケートな感情があることも、確かな現実でした。しかし、4人の女性たちはその現実を踏まえながらも「普通に暮らしている現実もあるのだから、それをオープンにしていきたい」ということを『うふふ便』編集の基本に据えることにしたのでした。
番組では、月に一度開催されているという「うみラボ」というイベントも紹介していました。いわきから船に乗って福島第一原子力発電所の海上1㎞にまで接近(陸上とは違って線量が低いので、そこまで近づけるのだとか)、そこで船釣りを体験します。その後、釣れた魚を水族館・アクアマリンふくしまに持ち込んで検査し、その結果を知るところまでが一体となったイベントなのですが、検査検査を待つあいだ、安全が確認された魚介類を使用したパスタなどの料理が無料で振る舞われるとのことで、それを目当てに参加される人も多いとか。ちなみに、取材時の検査結果は国の基準である100ベクレルを大きく下回る8ベクレル少々でした。
「うみラボ」を主催するフリーライターの小松理虔(りけん)さんはこう語ります。「僕らの日常生活と変わらないということを出していかないと(外の人たちと)つながっていけない」
秋元さんたちが最後に訪ねたのは、『うふふ便』スタッフの1人の地元という小名浜にある魚屋さんでした。このお店は干物、とりわけメヒカリの干物が看板商品。「干物風」と呼ばれる、冷たく乾燥した風で一気に干されることで旨味が増すというメヒカリの干物は、やわらかく脂が乗った美味さで大人気なのだとか。
「100枚も200枚も(メヒカリを)さばいてると、俺なにやってんだろうなあ、と思ったりもするけど、お客さんから“うまい”と言われるのは嬉しい。おだてられると、どこまでも登るからね」と愛嬌たっぷりに語る魚屋さんでした。
魚屋さんを紹介した『うふふ便』のスタッフのお一人が言いました。「わざわざ声を出して言うことでもない、と思っていたものが、実は一番すごいものだった」
秋元さんは、旅を振り返りつつこう言いました。「実際、いろんな情報があったりするけれど、自分の目で見て何を感じるかが一番大切だと思う」
番組で紹介されたスポットと、美味しそうな味覚の数々。主に20~30代の女性をターゲットにしたものということですが、40ウン歳のオトコであるわたくしも、強く惹きつけられるものがありましたね。
それとともに、東日本大震災や福島第一原発事故という大きな災厄を経験し、身近にあるものの素晴らしさと価値に気づいた、4人の女性たちのいわきへの思いが、観ていてしみじみと胸に沁みてくる思いがいたしました。
そして、いわき市をはじめとする福島県のことを、そして東北のことを本当に知ろうとするのであれば、やはり自分の目で見て、味わい、感じるということが大事なのだな、ということを、あらためて思いました。それが、被災した地域の外に住むわれわれができる、一番の応援の仕方なんですよね。
東北からは遠く離れた、九州の片隅に住むわたくしですが、なんとか機会をつくって福島、そして東北への旅を実現させたいと思っております。番組は、そんな思いを大いに掻き立ててくれました。この『被災地 極上旅』、第2弾以降もぜひやってもらいたいなあ。
『いわきうふふ便』は、こちらのいわき市観光情報サイトでも閲覧、ダウンロードが可能です。ぜひご覧になってみてくださいませ。
・・・メヒカリの干物。ゴハンのお供にも良さそうけれど、お酒と一緒に食べてみたいなあ。
初回放送=2015年11月1日(日)午前10:05分~10:53分 NHK総合
出演=秋元才加
映画『フラガール』で一躍有名となったハワイアンリゾートがあり、東北最大規模の水族館・アクアマリンふくしまや、“美人の湯”とよばれる温泉があることでも知られている、福島県いわき市。ここでは、観光マップやガイドブックには載っていない、地元の人たちだけが知るスポットや味覚を紹介した「裏マップ」が話題になっているといいます。4人の地元女性により取材、編集されたその『いわきうふふ便』というマップは、今年9月に発行されて観光案内所などに置かれるや、たちまち評判となって初版分はなくなり、さらに1万部も増刷されるほどの人気ぶりなのだとか。
その『うふふ便』に掲載されている、いわき人だけが知る隠れ名所を、編集した女性たちとともに女優の秋元才加さんが訪ねたのが、この『被災地 極上旅 ~福島県いわき市編~』でした。
まず最初に訪れたのは、“いわきの赤い彗星”の異名を持つ、真っ赤なつなぎがトレードマークである農家の男性の畑。赤いつなぎは太陽をイメージしたもの、なのだと男性は言います。
その畑で里芋を掘り、採れたての里芋に舌鼓を打つ秋元さんに、男性は「美味しいのは里芋だけじゃない。実は土も美味しい」と言います。おそるおそる土を口に運んだ秋元さんでしたが、これもまた美味しい、と満足気な表情です。「土が苦いと野菜も苦くなる」というその男性は、美味しい土を使って野菜を栽培することが「自分ができる、食べてくれる人への敬意」だと語ります。
男性は、自分の畑へ積極的に、外から来た人たちを招き入れているのだとか。それを通じて得た実感をもとに、男性はこう語りました。
「まだまだ風評被害があるのは確かだけど、ここに来てくれる人たちと接していると、本当に風評被害なんてあるのかな、と思う。最後は風評被害なんて言葉は忘れてもらって、美味しさだけが残ればいい」
続いて秋元さんらが訪れたのは、1日1組限定で営業しているフランス料理のお店でした。
先の“いわきの赤い彗星”と呼ばれる農家の男性が栽培した里芋を使った料理は、塩を軽く振った里芋の上にカリカリの衣をまとったサンマが乗っかった一品。とはいえ、ここでのサンマは「ソース」であり、主役はあくまで里芋だとか。他の料理も魚や肉を使ってはいても、メインとなっているのは地元の農家が丹精こめて育てた野菜のほうです。他にも、「ドライトマトのオリーブオイル漬け」などの、野菜を使った加工品も人気です。
店主の男性は毎朝、地元の生産者の畑に直接出向き、吟味して野菜を仕入れているそうで、そのため1日1組が限界なのだとか。「だから自分の料理ではなく、生産者と一緒に作っている料理」と店主は語ります。
震災後、自分には外から仕入れる食材を使うという選択肢もあった、という店主でしたが、表情は笑ってはいても土気色をしていた地元農家の方々を見て、地元産100%でいこうとの決意を固めたのだとか。店主のこのお言葉が印象に残りました。
「いい生産者がいわきにいて、僕は幸せです」
次に訪ねたスポットは「いわき回廊美術館」。震災後に設けられた入場無料の施設で、100m以上にわたって続く木の回廊にはたくさんの作品が展示されています。また、隣接した広場には、急斜面のてっぺんに設えられた「空中ブランコ」があり、眼下にいわきの自然を眺めながらのブランコ漕ぎは「(アニメのアルプスの少女)ハイジの気分」を味わえそうな迫力っぷり。
ここは、いわきに桜の名所をつくるために活動している市民プロジェクトの拠点でもあります。その代表の男性は、原発事故の影響により「自分のふるさとが、誰も来たくないような場所になったのかと思うと気持ちにズンときて、悔しかった」といい、「誰もが来たくなる場所を」つくろうと、このプロジェクトを始めたのだとか。
99,000本の桜を、1人につき1本、100年がかりで植えていくという、子どもや孫の世代を見据えたプロジェクト。回廊美術館の回廊には、子どもたちが描いた満開の桜の絵もたくさん展示されておりました。
「地元の人しか知らないところをどんどん紹介して、こういうステキなところもあるんだよ、と提案できたら」との思いで企画された『いわきうふふ便』。しかし、すべてが順調に運んだわけでもありませんでした。掲載依頼に対して「震災と関連づけられるのであれば載せないでほしい」と断るお店もあったのです。
震災に対して、地元には複雑でデリケートな感情があることも、確かな現実でした。しかし、4人の女性たちはその現実を踏まえながらも「普通に暮らしている現実もあるのだから、それをオープンにしていきたい」ということを『うふふ便』編集の基本に据えることにしたのでした。
番組では、月に一度開催されているという「うみラボ」というイベントも紹介していました。いわきから船に乗って福島第一原子力発電所の海上1㎞にまで接近(陸上とは違って線量が低いので、そこまで近づけるのだとか)、そこで船釣りを体験します。その後、釣れた魚を水族館・アクアマリンふくしまに持ち込んで検査し、その結果を知るところまでが一体となったイベントなのですが、検査検査を待つあいだ、安全が確認された魚介類を使用したパスタなどの料理が無料で振る舞われるとのことで、それを目当てに参加される人も多いとか。ちなみに、取材時の検査結果は国の基準である100ベクレルを大きく下回る8ベクレル少々でした。
「うみラボ」を主催するフリーライターの小松理虔(りけん)さんはこう語ります。「僕らの日常生活と変わらないということを出していかないと(外の人たちと)つながっていけない」
秋元さんたちが最後に訪ねたのは、『うふふ便』スタッフの1人の地元という小名浜にある魚屋さんでした。このお店は干物、とりわけメヒカリの干物が看板商品。「干物風」と呼ばれる、冷たく乾燥した風で一気に干されることで旨味が増すというメヒカリの干物は、やわらかく脂が乗った美味さで大人気なのだとか。
「100枚も200枚も(メヒカリを)さばいてると、俺なにやってんだろうなあ、と思ったりもするけど、お客さんから“うまい”と言われるのは嬉しい。おだてられると、どこまでも登るからね」と愛嬌たっぷりに語る魚屋さんでした。
魚屋さんを紹介した『うふふ便』のスタッフのお一人が言いました。「わざわざ声を出して言うことでもない、と思っていたものが、実は一番すごいものだった」
秋元さんは、旅を振り返りつつこう言いました。「実際、いろんな情報があったりするけれど、自分の目で見て何を感じるかが一番大切だと思う」
番組で紹介されたスポットと、美味しそうな味覚の数々。主に20~30代の女性をターゲットにしたものということですが、40ウン歳のオトコであるわたくしも、強く惹きつけられるものがありましたね。
それとともに、東日本大震災や福島第一原発事故という大きな災厄を経験し、身近にあるものの素晴らしさと価値に気づいた、4人の女性たちのいわきへの思いが、観ていてしみじみと胸に沁みてくる思いがいたしました。
そして、いわき市をはじめとする福島県のことを、そして東北のことを本当に知ろうとするのであれば、やはり自分の目で見て、味わい、感じるということが大事なのだな、ということを、あらためて思いました。それが、被災した地域の外に住むわれわれができる、一番の応援の仕方なんですよね。
東北からは遠く離れた、九州の片隅に住むわたくしですが、なんとか機会をつくって福島、そして東北への旅を実現させたいと思っております。番組は、そんな思いを大いに掻き立ててくれました。この『被災地 極上旅』、第2弾以降もぜひやってもらいたいなあ。
『いわきうふふ便』は、こちらのいわき市観光情報サイトでも閲覧、ダウンロードが可能です。ぜひご覧になってみてくださいませ。
・・・メヒカリの干物。ゴハンのお供にも良さそうけれど、お酒と一緒に食べてみたいなあ。