鎮守の杜から
葛木御歳神社神職が、神道についてや、日々感じたことなどを思いつくままに綴った私的なページです。
 



 今回の台風23号は甚大な被害をもたらしました。今年はいくらなんでも台風が多すぎますね。御歳神社は何ともなかったのですが、朝起きてニュースを見て被害の大きさに驚きました。世界規模で異常気象が続きます。アメリカにも巨大なハリケーンがありました。ここ数年、異常寒波や高温、洪水、旱魃、あちこちで聞かれます。砂防ダムや河岸工事、堤防など防災対策が進んでも、それを超える自然災害が起こっています。

 森の生物からの新種のウイルスの脅威もあります。地球規模から見れば、人類は無秩序に増殖する癌のような存在かもしれません。増殖しながらまわりの環境を破壊する存在。そんな存在の一つになりたくないですね。

 古代、自然は今よりもっと脅威だった事でしょう。自然の脅威を取り除くためにたくさん努力してきた事でしょう。自然に対して弱い存在だった人間が、いつか逆転します。自然の恩恵を受けるだけではなくそれをねじ伏せようとします。堤防が決壊すればもっと強固な堤防を、と言う議論になります。勿論それは当然のことでしょう。でも、もっと根本的に地球規模で考えることも必要でしょう。ドイツなどヨーロッパの各地で、コンクリートで固められた川を自然な状態に戻す工事が進められています。自然が脅威だった頃には敵対せざるを得なかったとしても、自然のメカニズムがわかってきた今、共存する方法を探るだけの十分な英知を手にしたと考えてのことでしょう。ドイツなどでは、自然の圧倒的な力の前で、コンクリートではなく、自然の秩序を正常化することで災害を回避しようと本気で考えているのだと思います。その考えは、世界中に浸透して初めて効力を発揮するのですが、なかなか難しいようですね。

 何でも手に入れられ、何でもできると思ってしまうのは怖い事です。自然を大切にすること、自然を畏れ敬う気持ちは必要だと思います。祈年祭は農耕を開始するにあたり、土地を使わせていただく許しを乞うて、豊作を祈ったものです。自然を人工的な水田に変えることに対して、神様が怒られるかもしれないと考えて、鎮めようと考えた繊細で控えめな心持ちを私たちの祖先は持っていたのでしょうね。



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