前回の「トラブルの芽」が、解説不足の感じがするので、補足しておきたい。
スタッフ6人の中で別格扱いであった人(仮にAさんとしよう)は、担当課の女性職員から何かお墨付きを与えられていた可能性が高い。また、その時の課長ともつながりがあって、何かと市職員とのパイプがあったようだ。
それで、子どもの小さい人が夜勤ができないことについて、おそらく、市職員との私的な会話の中で、愚痴のかたちで出たのではないかというのが、今の私の推測だ。
「働いてみて、どうですか? やりにくいことはない?」くらいの問いかけはあったのかもしれない。それに対して、Aさんは、愚痴をこぼしたのかもしれない。「あの人を辞めさせてくれ」などとは言わないにしても、「平等にシフトに入れない人がいるのは、しんどいんですよねぇ」とか、他の人とのうまくいかなさも含めて「もう、辞めようかな、と思う」あたりのことは言ったかもしれないのだ。もちろん、あくまで私の想像だ。
市職員としては、それを聴いて、何とかしなければならない、と考えたかもしれない。市長とつながりのあるAさんに、不快な思いをして辞められては困る、と思ったかもしれない。Aさん自身は、自分が辞めたい、という意向を持っていた可能性はある。小さい子どもがいる若いスタッフを辞めさせようなどとはゆめにも思わず、他のスタッフとの関係などで、彼女の守備範囲とは異質なものを感じていて、自分が辞職しようと考えていることを市職員に伝えた可能性はありそうだ。が、市職員は、小さい子どものいるスタッフが夜勤をやりにくいことと、Aさんが辞めたいと考えていることを短絡的に結びつけ、小さい子どものいるスタッフの契約を更新しない、という方向へ持って行った可能性はあるのだ。もちろん、市職員は、Aさんに「彼女を辞めさせるから、あなたは残ってくれ」とダイレクトに言ったりはしていないだろう。
だから、Aさんは、自分の注進で、そのスタッフが辞めさせられることになったとは、微塵も思っていない。彼女の中では、切り離された出来事だからだ。むしろ、その小さい子どものいるスタッフをかばって、夜勤を代わってあげる他のスタッフの過剰に思いやりのある、「優しさ」(一人、カウンセリングマインドを十全に発揮するスタッフがいたのは私も認識しているし、その人のカウンセラー資質を活かした企画もしていた)に違和感を感じていたのかもしれない。そのカウンセラー気質のスタッフは人を助けたいという思いに満ちあふれていて、施設内の優しい雰囲気作りに寄与しているのだが、政治的なことに関心のあるAさんは心のケアよりも国際政治やグローバリズムの問題に興味が強く、施設内の雰囲気全体に違和感を感じていたのかもしれない。だから、Aさんは、自分自身が他のスタッフから浮いているのを感じて、辞めたいという意向を持っていたとしても不思議ではない。
私が他の職に移るためにそこを退職した時、Aさんもいっしょに辞めた。私は、自分が辞めた後も、Aさんは残って、リーダー的役割をするのかと思っていたので、意外だった。
Aさんは、その小さな子どものいるスタッフが辞めた時も、全く悪びれた様子はなく、彼女を優しく送り出した。自分の発言が原因とは思っていないからだろう。むしろ、自分がそのスタッフについて言ったことも覚えていない可能性すらある。彼女はスタッフ内の複雑な人間関係について、たぶんちょっと「しんどいかも、、、」というように匂わせたくらいだろうからだ。そして、辞めたい気持ちもあるということを、軽く洩らしただけかもしれない。
が、市職員はあわてたのだ。Aさんに辞められては困るので、小さい子どものいるスタッフの更新をせずに辞めさせた。そして、Aさんに継続を請うたのだ。それも、「○○さんが辞めて慣れない新しいスタッフが入ってくるのだから、あなたにいてもらわなくては困る」というような言い方だったと想像できる。だからAさんは、スタッフが入れ替わる原因を自分に帰することなど、全くなかったはずだ。市の意向だと思いこんでいただろうと想像する。なぜなら、Aさんはその若いスタッフを辞めさせることなど考えもしなかったからだ。
私があれほど、その小さな子どものいるスタッフだけが更新されない理由を問うて、ぎりぎりと市職員に迫ったにもかかわらず、曖昧なまま終わってしまった後味の悪い出来事だった。
話し合いの時に、「決められたシフトを代わるのは困る」と言い張る市に対して、私は「他のスタッフだって、今後、本人や家族の事情で、決められたシフトに入れない状況が生じるかもしれない。その時はどうするんですか?」と尋ねた。すると、「その時は、それぞれ助け合って、代わったりしてもらえばいい」ととぼけたことを言い出す市職員に、「だったら、なぜ、彼女だけはダメなんですか!」と私はほとんど吠えたような気がする。全く、市の主張は、理由になっていなかった。
それは、たぶん、Aさんの何気ない愚痴から事態を勝手に解釈して、Aさんを引き留めるために市が講じた解決策だったのだろう。Aさんがあずかり知らない、Aさん引き留め策だったのだろうと思う。
地方自治体の公務員というのは、玉石混淆だ。否、個人の資質というより、適材適所でないと、とんでもない不具合が起こる。なぜなら、一介の平職員でも、市民や外部職員に対しては、その力量を越えた権限が与えられてしまっているからだ。
誰も、自覚的な悪意や敵意はない。与えられてしまった権限と責任の重さを自覚しないまま、事態を紛糾させることになる。
ここまで書いて、自分もまた、同じ過ちを犯してきたのだろうと忸怩たる思いで振り返る。
スタッフ6人の中で別格扱いであった人(仮にAさんとしよう)は、担当課の女性職員から何かお墨付きを与えられていた可能性が高い。また、その時の課長ともつながりがあって、何かと市職員とのパイプがあったようだ。
それで、子どもの小さい人が夜勤ができないことについて、おそらく、市職員との私的な会話の中で、愚痴のかたちで出たのではないかというのが、今の私の推測だ。
「働いてみて、どうですか? やりにくいことはない?」くらいの問いかけはあったのかもしれない。それに対して、Aさんは、愚痴をこぼしたのかもしれない。「あの人を辞めさせてくれ」などとは言わないにしても、「平等にシフトに入れない人がいるのは、しんどいんですよねぇ」とか、他の人とのうまくいかなさも含めて「もう、辞めようかな、と思う」あたりのことは言ったかもしれないのだ。もちろん、あくまで私の想像だ。
市職員としては、それを聴いて、何とかしなければならない、と考えたかもしれない。市長とつながりのあるAさんに、不快な思いをして辞められては困る、と思ったかもしれない。Aさん自身は、自分が辞めたい、という意向を持っていた可能性はある。小さい子どもがいる若いスタッフを辞めさせようなどとはゆめにも思わず、他のスタッフとの関係などで、彼女の守備範囲とは異質なものを感じていて、自分が辞職しようと考えていることを市職員に伝えた可能性はありそうだ。が、市職員は、小さい子どものいるスタッフが夜勤をやりにくいことと、Aさんが辞めたいと考えていることを短絡的に結びつけ、小さい子どものいるスタッフの契約を更新しない、という方向へ持って行った可能性はあるのだ。もちろん、市職員は、Aさんに「彼女を辞めさせるから、あなたは残ってくれ」とダイレクトに言ったりはしていないだろう。
だから、Aさんは、自分の注進で、そのスタッフが辞めさせられることになったとは、微塵も思っていない。彼女の中では、切り離された出来事だからだ。むしろ、その小さい子どものいるスタッフをかばって、夜勤を代わってあげる他のスタッフの過剰に思いやりのある、「優しさ」(一人、カウンセリングマインドを十全に発揮するスタッフがいたのは私も認識しているし、その人のカウンセラー資質を活かした企画もしていた)に違和感を感じていたのかもしれない。そのカウンセラー気質のスタッフは人を助けたいという思いに満ちあふれていて、施設内の優しい雰囲気作りに寄与しているのだが、政治的なことに関心のあるAさんは心のケアよりも国際政治やグローバリズムの問題に興味が強く、施設内の雰囲気全体に違和感を感じていたのかもしれない。だから、Aさんは、自分自身が他のスタッフから浮いているのを感じて、辞めたいという意向を持っていたとしても不思議ではない。
私が他の職に移るためにそこを退職した時、Aさんもいっしょに辞めた。私は、自分が辞めた後も、Aさんは残って、リーダー的役割をするのかと思っていたので、意外だった。
Aさんは、その小さな子どものいるスタッフが辞めた時も、全く悪びれた様子はなく、彼女を優しく送り出した。自分の発言が原因とは思っていないからだろう。むしろ、自分がそのスタッフについて言ったことも覚えていない可能性すらある。彼女はスタッフ内の複雑な人間関係について、たぶんちょっと「しんどいかも、、、」というように匂わせたくらいだろうからだ。そして、辞めたい気持ちもあるということを、軽く洩らしただけかもしれない。
が、市職員はあわてたのだ。Aさんに辞められては困るので、小さい子どものいるスタッフの更新をせずに辞めさせた。そして、Aさんに継続を請うたのだ。それも、「○○さんが辞めて慣れない新しいスタッフが入ってくるのだから、あなたにいてもらわなくては困る」というような言い方だったと想像できる。だからAさんは、スタッフが入れ替わる原因を自分に帰することなど、全くなかったはずだ。市の意向だと思いこんでいただろうと想像する。なぜなら、Aさんはその若いスタッフを辞めさせることなど考えもしなかったからだ。
私があれほど、その小さな子どものいるスタッフだけが更新されない理由を問うて、ぎりぎりと市職員に迫ったにもかかわらず、曖昧なまま終わってしまった後味の悪い出来事だった。
話し合いの時に、「決められたシフトを代わるのは困る」と言い張る市に対して、私は「他のスタッフだって、今後、本人や家族の事情で、決められたシフトに入れない状況が生じるかもしれない。その時はどうするんですか?」と尋ねた。すると、「その時は、それぞれ助け合って、代わったりしてもらえばいい」ととぼけたことを言い出す市職員に、「だったら、なぜ、彼女だけはダメなんですか!」と私はほとんど吠えたような気がする。全く、市の主張は、理由になっていなかった。
それは、たぶん、Aさんの何気ない愚痴から事態を勝手に解釈して、Aさんを引き留めるために市が講じた解決策だったのだろう。Aさんがあずかり知らない、Aさん引き留め策だったのだろうと思う。
地方自治体の公務員というのは、玉石混淆だ。否、個人の資質というより、適材適所でないと、とんでもない不具合が起こる。なぜなら、一介の平職員でも、市民や外部職員に対しては、その力量を越えた権限が与えられてしまっているからだ。
誰も、自覚的な悪意や敵意はない。与えられてしまった権限と責任の重さを自覚しないまま、事態を紛糾させることになる。
ここまで書いて、自分もまた、同じ過ちを犯してきたのだろうと忸怩たる思いで振り返る。