失なわれゆく風景

多摩地区周辺の失われた風景。定点撮影。愚問愚答。

乞田八幡神社 祭りの日 (多摩市)

2008年09月20日 | 民俗
多摩市内の神社は九月の第二日曜日を統一の祭りの日としている、と確か『多摩市史 民俗編』に書いてありました。
(ただし全ての神社ではない。今年の例では前回紹介した山神社など例外)。
同書によると、祭り日を統一した理由は、以前、子供達が諸社の祭りのたびに学校を欠席するので、できるだけ欠席させないようにするため祭りの日を統一したとか。 


 
 九月十四日に乞田八幡神社の祭りが行われていました。
(多摩市内の神社では、白山神社(落合)、貝取神社(貝取)、熊野神社(関戸)、春日神社(連光寺)、八坂神社(船ヶ台)、小野神社(一宮)、十二神社(和田)なども確かにこの日に祭りを行っていました)


(引用開始)『柳田國男全集3』ちくま文庫 pp.26-27
 南多摩郡の乞田の八幡社は古い御社らしい。同じ多摩村の大字貝取と、二村共同の鎮守だったというのに、その所在地はずっと奥まったこの村の西南隅で、他の一方の端からは一里以上もある。二百六十年前の再建の棟札もあったそうだから、今ある多くの民家ができてからの選定ではなかったのである。江戸時代には二千四百坪、八反歩の除地が附いていた。現在の境内地と、それに続いた分教場の敷地とを合わせても、その三分の一もあるまいと思われるから、かつてはまわりの広い畑場までが、御社に属した無税地だったことがあるのである。
 近年になってから、かなりの事情変化があったものと思われて、祭りなどはもう決して盛んだとは言えない。以前角力のあったという旧九月十五日の例祭は、秋の刈入れ以前の新暦の九月五日にくり上げられ、村の幣帛供進もこの日にある。それ以外には祈年祭その他の、一二の公定の祭りがあるだけで、神職は三四里も離れた土地の人が兼摂しているという。・・・社殿は明治に入っての改築とおぼしく、相応に広々としたものだが、まわりには縁もなく階段もなく、また一つの附属舎もなくて、参詣の者がちょっと立ちやすらう場所も設けてない。・・・
 こういう御社こそ、年に一度の祭りの日に来合せて、半日くらいは静かに見ていなければ、感じ知ることのできない信仰であろうと私は思った。そうしてまた誰もが心づかずにいるうちに、次第に移り変わっていく信仰でもあろうかと考えてみた。

(引用終わり)

 
 
 引用文は昭和十九年に発表されたものだそうです。「二村の鎮守、棟札、除地、九月十五日の例祭の角力」などの話は『新編武蔵風土記稿』に載っている内容です。
 乞田八幡の社殿は、乞田川の流路変更のため、昭和四十九年にそれまでより南に移動し現在の位置に遷座されたとのことで、移動以前には隣接地に多摩第一小学校の分校があったそうです。(引用文中の「分教場」とはそれを指している)
 境内の碑によると、「当社の御祭神は應神天皇をお祀り申し上げている また当社の創建は延徳二年九月(西暦一四九〇年)・・・五〇五年前であると古より申し伝えられている」とあります。

 私が半日くらい静かに祭りを見ていたとしても、なにか古い信仰を感じとれるとは思いませんが、ニュータウン開発以前、柳田國男が訪れたころ、百年前、さらにもっと昔の祭りの様子をもし百年単位くらいで比べて見ることができたとしたらさぞ興味深いであろうなどと空想するばかりです。今日の祭りの中に創建当初から変わらないようなものが(信仰はともかくとして形式だけでも)何か伝わっているでしょうか。

 ちなみに、普通の日には、八幡神社の境内は駐車場として利用されています。


 さらに余談ですが、
開発で古い神社などを壊しまくったあげくに、
新しいまちの象徴的な公共施設に外国の神殿の名前をつけてしまう感覚に
私などは少々違和感を感じるのですが、
それこそ百年後くらいの人達に、これをどう思うかと聞いてみたいものです。
(おそらくそんなことを気にかける人などいなくなっているでしょうけど。
あ、今でもいませんか)

(さらにすこし補足)
仏教はもとより、神社にまつられている神様にも外国由来のものがあります。
だから、外国のものといっても日本に入ってきた時期が古いか新しいかだけの問題じゃないの、と言われるとそのとおりなのです。日本人の舶来品好きは今にはじまったことではないようですので(時代によって強弱はあるようですが)

で、私の夢の一つは、古いものをたどれるところまでたどって、どこに行き着くのかを見てみたいということです。



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