あらゆる野鳥たちが、一斉に集まるのは異例中の異例。
彼らは野鳥会議でこれからの運命を決めようとしていた。
「もう限界だ。ニンゲンの意識は変わらないようだ」
普段もの静かなシマフクロウが、この日は口火を切った。
「私たち、どんどん行き場を失っているわ」
アカゲラは泣き声だった。
「汚染された食べ物で体がおかしいの」
セイタカシギは細い足を震わせた。
それぞれが窮状を訴えた…。
「こうなったら困難が待っていようとも新天地へ飛び立とう」
オオワシの決意表明をきっかけにして、
野鳥たちは残らず飛び立ってしまった。
・・・・・・その日から、
地球は鳥の住まない星になった。
先日出かけたとき、道の駅で手にした小冊子「Toriino」を開いて目にした掌編。
お持ち帰り自由、とあったので、持ち帰り、そのまま・・・。
今朝、川棚に向かう車中でやっとゆっくり読んだ。
発行元は「日本野鳥の会」で、野鳥の写真も少々あるが、
夜の桜吹雪の写真(大きな山桜です。圧巻!です)あり、
懐かしい風景をうたう詩あり、
変わりゆく能登半島を思う随筆あり・・・
とても惹かれる写真や絵や言葉が詰まっている小冊子だった。
あるページには、茶色っぽい竹藪の細枝にとまっている薄茶色の鳥が、
「僕、何て鳥だと思います?」と話しかけ、
ページの下の方には、梅の木に枝にとまっている黄緑色の鳥の小さな写真。
その美しい色の鳥は、
「メジロですが、何か?」と言っている。
そして、薄茶色の鳥は、こう語る。
人間の皆さんがウグイス色って呼ぶ色で、花の周りをちょこちょこ飛んでいる鳥はね、
メジロっていうんですよ。なんだか間違えている人多いんですよね。
藪の中とかで目立たないようにしている僕らが本物のウグイスですからね。
この機会に覚えて下さいね。
でもせっかく地道に生きてきたのに、最近は地球温暖化とかでこの先どうなることやら…
こういう時代こそ、身近な自然にも目を向けてほしいな。
ウグイス色がちっともきれいではない濁った色だってことは、色図鑑で知っていたが、
あのよく見る絵柄「梅に鶯」(紅梅の枝に黄緑色の鳥)が、メジロだったとは知らなかった。
恥ずかしながら、鳥と言えば、フクロウとかインコとかクジャクとか・・・
動物園で見る鳥と、ハトやカラスくらいしか、その名を言える鳥はいない。
それだけ、私が鳥に無関心だということなのだが、
また、私たちの周りに野鳥がいないということも言えるのかもしれない。
20XX年は確実に近づいている・・・?
それにしても、鳥のことに限らず、私は自然界のことをほとんど知らない。
長崎に越してきて、そのことを実感した。
(あと2ヶ月で長崎県人としては満2歳になる)
海のこと、山のこと、川のこと、田んぼのこと・・・
もうすぐ田植えの季節だが、そういえば田んぼに水をいれるのはどうやってるのだろう?
田んぼのそばを川が流れていても、川より田んぼの方が高い位置にあるのに・・
海岸には砂や石や岩があるけれど、あれはどうやってできるのだろう。
岩が砕かれて石になり、砂になる?
それとも砂が堆積して固まって岩になり、それが砕かれて石になる?
川には岩や石や土があるけれど、海にはどうして土がないんだろう。
関東の林は冬には裸木になる落葉樹が多かったけど、こちらは常緑樹が多い。
落葉しない葉っぱたちは、生まれてずっと緑のままそこにいるの?
どのくらい生きられるの?
まさか木の寿命までってことはないだろうし・・
この年になって、こんなに何も知らないということを自覚するなんて情けないが、
でも、少し嬉しい気もする。
知らないことに気付かないままの私より、少し賢くなれそうな気がして・・
でもきっと、私のように何も知らない人間が大半なのだろう。
だから、自然界の異変にもほとんどの人たちが気付かずにきてしまった。
異常気象と騒ぐだけで、その原因を真剣に考えようとしてこなかった。
開発という名の自然破壊や、放射能汚染をもたらす原発や、戦争という破壊行為・・
人間は地球をいつまで傷つけ続けるのだろう。
鳥たちがいなくなってしまう前に早く気付いて、早く手を打たねば・・
気付くためには、ウグイス君が言うように、身近な自然にもっと目を向けたい…