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朝日新聞取材班『自壊する官邸 「一強」の落とし穴』その4

2023-04-23 02:34:48 | 日記
 また昨日の続きです。

・政府関係者によれば、谷内に抗議された安倍は「僕もどうかなと思ったんだけどね」と語ったという。谷内は麻生や菅にも訴えたが、「(書き換えは)黙認された」(政府関係者)。親書の詳しい内容はいまも明かされていない。
だが、今井は後に月刊誌「文藝春秋」のインタビューで「(原案には)一帯一路について、あまりにも後ろ向きな内容しか書かれていませんでした。だから、こんな恥ずかしい親書を二階幹事長に持たせるわけにはいかないと、相当修正を加えた」と認め、「『一帯一路についても可能であれば協力関係を築いていきたい』という文言をいれました」と告白している。

・軍事・経済で台頭する中国にどう臨むのか━━。日本の外交指針に、その戦略は欠かせない。政府内の調整も不十分なまま、対中「協力」へとかじを切った安倍外交。その継承を掲げながらも、菅首相は4月の日米首脳会議で「中国の行動について懸念を共有」し、「競争」へと軸足を戻しつつまるように見える。その動向を中国も注視している。

・中国と国境を接し、対中牽制の「日米豪印」の枠組み構築に必ずしも積極的でないインドに、「足並みをそろえるよう強く促すこと」(政府関係者)が、当時の安倍の意図だった。

・安倍は首相就任翌日、自らの外交戦略を「安全保障ダイヤモンド構想」と名付け、国際NPO団体のホームページに英字論文を発表。南シナ海を「北京の湖になりつつある」とし、尖閣諸島周辺での中国の動向に強い懸念を示し、日本単独の「点」ではなく、日米豪印が連携する、ひし形の「面」で対中牽制を構築する必要があると説いた。

・日米豪印の連携はその後、4カ国を意味する「クアッド(Quad)」と呼ばれ、16年に安倍がアフリカで打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」戦略につながった。

・谷内は「中国封じ込め」を意図していたわけではない。健全な隣国関係を築くため、中国に力による威圧をやめさせ、法の支配など国際社会のルールを守らせることで、日中の対話の「土台」を作りたいと考えていた、と周辺は語る。

・「親書書き換え」を境に今井は、谷内ら「外交・安保」派と首相官邸で対立を深めていく。

・今井は、周囲に「日米同盟が最重要だが、すべて対米追従で、他の選択肢を考えない姿勢は問題だ。日本企業の中国進出を考えれば、一帯一路が持つ連結性は魅力的だ」と語っていた。

・安倍外交を間近で見てきた元政府高官はこんな解説をする。「官邸の政策決定には、『表階段』のほか、側近用で首相に直結する『裏階段』がある。太陽系に例えれば、谷内がいくら大きな木星でも、地球に近い金星には勝てない。外交でも『宮中政治』が行われた」

・18年のカナダでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、貿易に関する宣言文書をめぐって、「米国第一」を掲げるトランプと、自由貿易を主張する独首相のメルケルが対立すると、「安倍首相が仲裁に入って、存在感を見せた」(政府関係者)
 トランプ政権が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱を決めても、日本が関係国との協議を主導し、米国抜きのTPPを結実させた。

・外務省出身者はこう語る。
「外交には時間軸を読み、目標を定めて、交渉材料を複合的に組み合わせて戦略を練ることが要求される。安倍外交はそうした戦略があやふやで、だからこそ側近の官邸官僚に左右された」

 なかなか面白い本でした。


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