また昨日の続きです。
見ている人々のあいだから拍手が起こり、双方の神輿守りたちからは歓声が起きた。(中略)
雛歩は神輿守りの人たちを見た。みんな、雛歩を見上げて、(中略)笑みを浮かべている。(中略)スキンヘッドさんをはじめ道後村大神輿の人たちも、拍手を送ってくれている。(中略)
「ようし、跳ぶぞーっ」
飛朗さんは大神輿から手を離し、神輿守りたちのほうへ両手を広げて、ダイブした。(中略)
「おーし、神輿をゆっくり下ろせ、巫女さんに怪我をさすなよー」(中略)
「待ってくださーい」(中略)
「跳びまーす」
えーっ、と困惑の声が返ってくる。
雛歩は(中略)後ろ向きになって跳んだ。(中略)
次には柔らかい衝撃とともに、多くの人の手の上に受け止められていた。(中略)
「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます」(中略)
「女将さん、お願いがあります」
「なあに」
「両親を、一緒にお見送りしてください……さぎのやで、両親をお見送りしてください」(中略)
「わかりました。あなたと一緒に、ご両親をお見送りさせていただきます」(中略)
ここだ、ここだ、ここだった。(中略)
「ここに掛かっていた手ぬぐいを、お借りしたの」(中略)電話をしておいたので、おじいさんとおばあさんは、手作りの柿もちを用意して迎えてくれた。(中略)
雛歩は、(中略)二人におわびと感謝を述べて、自分で洗い直してアイロンをかけた手ぬぐい(中略)を差し出した。(中略)
さぎのやで開かれた、雛歩の両親をお見送りする会には、さぎのやに出入りする大勢の人たちが集まってくれた。兄の鹿雄も駆けつけた。(中略)
「命の大切さを伝えてくださり、ありがとうございました」
と述べると、集まった人々が、
「ありがとうございました」
と、そろって声を上げた。
「共に生きることのかけがえのなさを伝えてくださり、ありがとうございました」
と、まひるが述べる。するとまた、
「ありがとうございました」
と、人々が声をそろえた。(中略)
雛歩は右手の雑木林の中に白いものを見つけた。(中略)
人が、ぐったりとした様子で、木にもたれかかっている。(中略)
「どうされました、大丈夫ですか……」
「あ……ちょっと、めまいがして……」(中略)
「失礼ですけど……帰る場所はありますか」
「え……」
「あなたには、帰る場所がありますか」(中略)
相手は、少し間を置いて、首を横に振った。(中略)
「いま、車が来ます。タクシーじゃなくて、空飛ぶ絨毯みたいなものです」(中略)
「さあ、帰りましょう」
女性に向けて語りかける。由茉が顔を寄せてきて、
「ヒナ……この場合は、行きましょう、でしょ」
「ううん……この場合は、帰る、なの。さあ、帰りましょう、わたしたちの家で、ゆっくり休んでください……また歩きだせるまで、ゆっくりと」
雛歩たちの頭上で、ばさっと、鳥が羽ばたくのに似た音がした。
雛歩は顔を起こした。まばゆく映える紅葉が、光の中に色を揺らし、涼やかな風がほてった頬を撫でていった。
天童荒太さんの最近の作品と同じく、救いのある小説で、あらすじは長くなりましたが、読むのには2日しかかかりませんでした。
見ている人々のあいだから拍手が起こり、双方の神輿守りたちからは歓声が起きた。(中略)
雛歩は神輿守りの人たちを見た。みんな、雛歩を見上げて、(中略)笑みを浮かべている。(中略)スキンヘッドさんをはじめ道後村大神輿の人たちも、拍手を送ってくれている。(中略)
「ようし、跳ぶぞーっ」
飛朗さんは大神輿から手を離し、神輿守りたちのほうへ両手を広げて、ダイブした。(中略)
「おーし、神輿をゆっくり下ろせ、巫女さんに怪我をさすなよー」(中略)
「待ってくださーい」(中略)
「跳びまーす」
えーっ、と困惑の声が返ってくる。
雛歩は(中略)後ろ向きになって跳んだ。(中略)
次には柔らかい衝撃とともに、多くの人の手の上に受け止められていた。(中略)
「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます」(中略)
「女将さん、お願いがあります」
「なあに」
「両親を、一緒にお見送りしてください……さぎのやで、両親をお見送りしてください」(中略)
「わかりました。あなたと一緒に、ご両親をお見送りさせていただきます」(中略)
ここだ、ここだ、ここだった。(中略)
「ここに掛かっていた手ぬぐいを、お借りしたの」(中略)電話をしておいたので、おじいさんとおばあさんは、手作りの柿もちを用意して迎えてくれた。(中略)
雛歩は、(中略)二人におわびと感謝を述べて、自分で洗い直してアイロンをかけた手ぬぐい(中略)を差し出した。(中略)
さぎのやで開かれた、雛歩の両親をお見送りする会には、さぎのやに出入りする大勢の人たちが集まってくれた。兄の鹿雄も駆けつけた。(中略)
「命の大切さを伝えてくださり、ありがとうございました」
と述べると、集まった人々が、
「ありがとうございました」
と、そろって声を上げた。
「共に生きることのかけがえのなさを伝えてくださり、ありがとうございました」
と、まひるが述べる。するとまた、
「ありがとうございました」
と、人々が声をそろえた。(中略)
雛歩は右手の雑木林の中に白いものを見つけた。(中略)
人が、ぐったりとした様子で、木にもたれかかっている。(中略)
「どうされました、大丈夫ですか……」
「あ……ちょっと、めまいがして……」(中略)
「失礼ですけど……帰る場所はありますか」
「え……」
「あなたには、帰る場所がありますか」(中略)
相手は、少し間を置いて、首を横に振った。(中略)
「いま、車が来ます。タクシーじゃなくて、空飛ぶ絨毯みたいなものです」(中略)
「さあ、帰りましょう」
女性に向けて語りかける。由茉が顔を寄せてきて、
「ヒナ……この場合は、行きましょう、でしょ」
「ううん……この場合は、帰る、なの。さあ、帰りましょう、わたしたちの家で、ゆっくり休んでください……また歩きだせるまで、ゆっくりと」
雛歩たちの頭上で、ばさっと、鳥が羽ばたくのに似た音がした。
雛歩は顔を起こした。まばゆく映える紅葉が、光の中に色を揺らし、涼やかな風がほてった頬を撫でていった。
天童荒太さんの最近の作品と同じく、救いのある小説で、あらすじは長くなりましたが、読むのには2日しかかかりませんでした。