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川上未映子『魔法飛行』

2013-02-22 07:10:00 | ノンジャンル
 ジーン・ケリー&スタンリー・ドーネン監督の'49年作品『踊る大紐育』をWOWOWシネマで見ました。短縮版の吹き替え版は今まで何度も見てきましたが、オリジナル版を見るのは今回が初めてでした。ジーン・ケリー、フランク・シナトラ、ベティ・ギャレット、アン・ミラー、ヴェラ=エレン出演、レナード・バーンスタイン音楽のこの上なく楽しくハッピーなミュージカルで、初公開当時はミュージカルでは初めてロケ撮影がなされた映画として喧伝されていたようですが、今見れば主だったシーンは全てスタジオで撮影がなされていました。そてにしても、ロッセンが『オール・ザ・キングス・メン』を撮った年に、この映画をジーン・ケリーが撮っていたというのも驚きです。映画の雰囲気としては30年代の明るさが横溢していたように思えるのですが、反時代的な映画だったのかどうか、疑問に思うところです。

 さて、川上未映子さんの'12年作品『魔法飛行』を再読しました。読売新聞ウェブサイト「ヨリモ」に連載された「発光地帯」('10年2月22日~'11年7月4日)に書き下ろしを含む加筆修正を施して作られたエッセイ集です。
 ここでも川上さん独特の文体は健在で、例えば「朝目が覚めてみると(朝じゃなくても)世界は真っ白でぴっかりだ。何かを試してみるみたいないっさいの影のなさの中に男女数人がテニスなどして動いているのを見る、額も手の甲もすべてまんべんなく暑いだろうねと声をかけようにも数百メートルも向こうだからわたしは思うに留めておくよ、右手はスノードームをひっくり返してハロー世界は吹雪の最中、こちらはとても吹雪きの最中。」といった感じです。
 あるいは「(前略)子どもの体はなにしろ小さく、言葉はまだその冒頭が植わったばかりの最初期の最中、世界は整理されることからあまりにも遠く、高速度で発見されている最中で、広がりつづけるあたらしい彼らの胸のうちを思えば、ああまたなつかしい銀河がみえる。いつか走っているときにさけた胸からどこまでも流れでていたあの銀河、けれどももう、これは苦しい銀河ではない、悲しいだけの銀河ではない、銀河はもはや、わたしだけのものではない、銀河はきらめき、ただ無言にきらめいて、きらめいていることにひとつの理由もありはしない。まだ小さな手をとって歩きながら、彼らが悲しいことやこわいや不思議を述べれば、彼らが生まれてきたことを申し訳なく思えば、無責任にそれらを鮮やかにうっちゃって笑ってやれるだけの鈍さとあきらめがほんのりこちらに色づいているのがみえる。(後略)」といった、心暖まる文章もあります。
 東京に来たいという甥っこたちに安請け合いし、締切りに追われて、そんなことが無理な話であることが判明し、「ミエコは仕事の人に山へ連れていかれてしまうので、東京にいません。だから、東京に来ても、ミエコはいませんので、すみません」と甥っこたちに言い訳をするところなど、つい笑ってしまいますし、またドイツ語には「なつかしい」という言葉がない、ってこともこの本で初めて知りました。
 また、カルボナーラの簡単な調理法として、ひとりぶんだと卵は1個。それを泡立ててパルメザンチーズを強気に投入し、かきまぜ、そこで麺を茹ではじめ、ベーコンを油をしかずカリカリに焼き、それに茹で汁をお玉に半分くらい入れて、そこにいい感じに茹であがった麺を入れて、卵&チーズを入れてあわせる。卵のかたさはお好みで、火にかけすぎるとダマになってしまうので、さっとからめるくらい、というのも、この本で教えてもらいました。ミートソースと違い、カルボナーラは即席のものだと高価なので、今度この方法でチャレンジしてみたいと思います。
 ということで、いつものことながら、あっという間に読めてしまう、楽しいエッセイ集(若干、詩も含んでいます)でした。

 →Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto