@MON PARIS

「わたしのParis空間で…」

フランス地方菓子の旅15~終~

2008-03-06 21:19:55 | フランス地方菓子の旅


「ミルリトン」

最終回はフランス北西部にあって、英仏海峡に臨むノルマンディー地方からお届けします。
ノルマンディーの歴史はこれまた複雑な道をたどり、
長きに渡る英仏の戦いの犠牲となった地でもあります。
特にその首都ルーアンの街の名を有名にしたのは、
14~15世紀の百年戦争の末期に活躍したジャンヌ・ダルクが、
その地で幽閉され、のち1431年5月30日火刑に処されたという悲しい出来事。
そんな哀切残るノルマンディーの地は一方、
温暖な気候、風光明媚な土地柄がセザンヌ・モネら画家達に好まれ愛されました。
また内部では酪農業が盛んでカマンベールを代表としたチーズなど乳製品が特産。
お酒では以前「タルトノルマンディー」でもご紹介したことがありますが、
リンゴから作られるシードルやカルヴァドスがとても有名です

そんなルーアンの街は私にとっても大変思い出深い街
2005年の夏、2ヶ月間でしたがあの小さな町で過ごしたことは
いつまでも忘れられない大切な思い出。。。
それと同じようにあの小さな町の小さな小さなパン屋さんで買って食べた
ルーアンの名菓「ミルリトン」…あの初めて食べたときの感動は今でも忘れられない

一応ルーアン名物なのですが、意外に作っているところは少なく、
私が時々買って食べていたパン屋さんは実は「ミルリトン」を作っている数少ない
お菓子屋さんでもあったようなのでした。
なんと、その名も「Le Mirliton」(ル・ミルリトン)
今思えば、きちんと写真を撮って中身の分析もしておけばよかったと大後悔…

今回のコルドンの地方菓子講座を受講したきっかけは、
そんなミルリトンのちゃんとした作り方や本物の味を学びたいと思ったのが始まりだったのです。
最終回にしてやっと出会えたHシェフ直伝のミルリトン、
やっぱり想像通りの美味しさでした~

ミルリトンとは…「葦笛」という意味。

その名前がついた由来はフランス第一共和制の騎兵隊の帽子(18世紀)から
きているといわれ、その羽飾りが葦笛の形に似ていることから騎兵帽がミルリトンと呼ばれていたのだそう。
そしてこの焼き菓子がこの騎兵帽の形に似ていたためこの名前がついたのです。
名前の響き、兵隊さんの帽子とは思えないほど可愛いですね

さて、そのお菓子の正体は…
パートブリゼのタルトレットに、生クリーム入りのクレームダマンド、
Hシェフのは中にフランボワーズペパンを忍ばせ、上から粉砂糖を
たっぷりふりかけて焼いただけ…それが…。
こんなに作り方もシンプルで素朴な小さいお菓子が、
こんなに予想外の食感と味わいをもたらせてくれるなんて!
それくらい驚きと感動を与えてくれる幸せなお菓子

日本でもこれを作っているパティスリーは少ないので、
これからは自分でたくさん作って、たくさんの方にその味わいを知ってほしい!
とさえ思うほど、大好きな大切なお菓子になりそうです。



「ドゥイヨン」

もう一つ実習で作ったのは、同じくノルマンディーのお菓子。
洋梨をまるごとパイ包みにして焼いた贅沢な焼き菓子。
Douillonとはラテン語ductilis「柔軟な」から、
古フランス語doille「やわらかい」が成立したのが語源ですが、
僧侶や子供が着る綿入りの長いコートという意味もあるのだそう。
そんな意味からか、着物を着た~という解釈もあります。

まさにこのお菓子はそんな名前がぴったりで、
洋梨の芯をくり抜いたところにクレームパティシエールをたっぷり詰め、
さらに水分を吸わせるためクレープをまとわせ、
フィユタージュで包みこんで焼くというちょっぴり手間のかかるお菓子。
その工程はまさにお洋服をどんどん着せていくような感覚でした。

本来は洋梨のようですが、林檎で作るところも多く、
焼き林檎はこのお菓子を作るときにフィユタージュがなかったから、
そのまま焼いちゃったというハプニングから生まれたとかいう説も!

こちらも焼きたては最高に美味しく、
寒い冬の朝なんかにはぴったりのボリューム
ノルマンディー特有の木組みのおうち
まだ薄暗い朝に、あったかいスパイスティーと供に…なんて素敵

以上で、約5ヶ月間にわたり連載(?)してきた
フランス地方菓子の旅もついに最終回

毎週楽しみに(してた?笑)ご拝読くださったみなさま、
本当に長い間ありがとうございました~

(このページから訪問くださった方は、
ぜひシリーズ1からもご覧くださいねーフランス地方菓子の旅」)

私も記事をしたためることにより歴史や風土などを調べたりと大変勉強になり、
講座を受けるだけにとどまらず、貴重な体験となりました。

また今回、コルドン地方菓子講座で出会ったHシェフの教え、
そのクラスメイトの皆はかけがえのない私の宝物となり
お菓子への愛情や夢がますます膨らむのでありました。
記事には書ききれない楽しかったこと、出来事がたくさんたくさんありますが、
一言この場を借りて、みんなにお礼を

毎週月曜日はみんなと会えて、
大好きなお菓子について深く語れる何よりも楽しみな日でした。
ずっとこんな機会が続けばと願うもあっという間に5か月が過ぎてしまいました。
本当に本当にありがとうございました。
また近いうちに地方菓子熱冷めやまぬまま、深く語り合いましょうね

そして、私はこの熱い想いをより多くの皆さまにお伝えできるよう、
たくさんたくさんお菓子を作っていきたいと誓いま~~~す
近いうちにお教室で「地方菓子をめぐる旅レッスン」ができるように

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フランス地方菓子の旅14

2008-03-05 20:06:47 | フランス地方菓子の旅


「タルト・オ・シュークル」

ついに先日、10月から通っていたコルドンでの地方菓子コースが終了してしまいました
14回目がまだUPできていなかったので、
少し続けてご紹介していきたいと思います。

まずはフランスの最北端に位置するノール・パ・ド・カレ地方から。
ここはベルギーと国境を接し、海をはさんでイギリスを望む最北の地…。
中心地リールは、フランスでも指折りの先進都市、
また北部一帯は世界1のアンディーヴ収穫量を誇ることでも知られています。
アンディーヴは英語でチコリ、日本ではベルギーチコリと呼ばれていますね。
以前パリからブリュッセルに遊びに行ったとき、
チコリのグラタンが名物ということで、いただいたことが…。
ちょっと苦味があって、フレッシュでも加熱しても私は結構好きな味。

話がそれましたが
それほどこの地方とベルギーはほぼ一体なので、
お菓子もお料理も共通するものが多いのだとか。

さてそんな今回、実習で作ったのは上のちょっと見た目の??な子。
「砂糖のタルト」というお名前通り、
とってもシンプルなこのお菓子はブリオッシュ生地を丸く平らに伸ばし、
砂糖とクレームドゥーブル、バターをふりかけてオーヴンで焼くだけ。

そこで使われたお砂糖が特産の「ヴェルジョワーズ」
ヴェルジョワーズ(Vergeoise)とは砂糖大根(ビート)を原料とする製糖工場の最終段階でできる粗糖のこと。
これがとってもコクのある美味しいお砂糖で、
焼き上がる瞬間、ラム酒のようななんとも言えない香りが最高!
そして溶けきらないVergeoiseがジャリジャリとして、
クセになりそうなくらい素朴で美味しい

そういえばちょうど昨年パリのボンマルシェでVergeoiseを撮った写真が
あったので、載せま~す。(ナゼ?って感じですがパッケージが好きなので)



こんな風にずらりと並ぶほどフランスではとってもポピュラーなお砂糖。
ビートのお砂糖は日本でも北の大地北海道が特産ですが、
フランスでもやはりこの最北の地が特産なのですね。



「マカロン・ダミアン」

そしてもうひとつ作ったのはやはり同じくフランス北部、
広大な台地のピカルディー地方の名菓。
「Macaron d'amien」は「アミアンのマカロン」という意味。

アミアンはパリの北130kmにあり、ピカルディ地方の首都。
またそのアミアンの大聖堂はフランス最大の規模を誇ることで知られ、
ユネスコ世界遺産にも指定されています。

前回の「マカロン・ド・ナンシー」でお勉強したように、
マカロンはそれぞれの地方の修道院で作られたという由縁があり、
ここでもやはりキリスト教色の強いこの地ならではの名菓にあたるわけです。

アミアンのものは、やはり古い歴史があり13世紀後半に考案。
ハチミツ・アプリコットやリンゴジャムが入り、
ねっちりとした歯ごたえで味わいも深い。

アーモンドの美味しさを真に感じる逸品でした

今回、地方菓子の旅は40%くらいマカロンの旅でもあるように思えるほど、
その配合や作り方がさまざまなマカロンが各地に存在することを学びました。
それだけフランス各地でキリスト教とその人々とに密着した、
今日まで愛される郷土菓子ということなのですよね。

いつまでも愛され、なくなることはない普遍のもの。
地方菓子とはそういう形で守り続けるべきものと、
Hシェフの言葉が胸にじ~んと響き渡りました

さぁ、いよいよ次回は最終回!!
あともうしばらくだけどうぞお付き合いくださいませ~

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フランス地方菓子の旅13

2008-02-20 20:27:50 | フランス地方菓子の旅


「ビスキュイ・シャンパーニュ」
13回になる地方菓子…徐々にラストに近づいております
今回はふたつの地方のお菓子を作りました。

まずひとつめはシャンパーニュ・アルデンヌ地方から。
イル・ド・フランスの東、マルヌ(セーヌ)河が流れ、
アルデンヌ山塊でベルギーと国境を接するこの地域は
商業繁栄したあと戦争・疫病で混乱し、やがて衰退していきました。

また中心都市ランスは1825年にシャルル10世が即位するまで、
25人の歴代フランス王たちの戴冠式が行われた由緒正しき街であり、
現在も歴史的建造物が数多く残る美しい街。

昨年Paris旅行の際訪れた世界遺産の街「Provins」(プロヴァン)も
シャンパーニュ地方でした。
日記の中段に歴史説明もあるのでよかったらどうぞ~Paris1週間@dimanche

そして荒廃の地はやがて世界的に有名な特産地になりました
東南部は「湿ったシャンパーニュ」と呼ばれ、
粘土質の土地に湖沼が点在し牧畜が盛んに。
西部は「荒れたシャンパーニュ」と呼ばれ、
水はけの良すぎる石灰岩質の平地はブドウ栽培に適し大成功。

17世紀にオーヴィレール修道院の会計・食料係だった
僧侶ドン・ペリニョンの手によって、
現在のような独特の泡と香りを持つシャンパーニュ(シャンパン)が完成。
以降、同じような発泡酒であっても、
この地方で厳密に定義された製法により造られたもの以外は、
「シャンパーニュ」と名乗ることができないのです。

そこでようやく上記のお菓子の説明
ランス発祥の、フィンガービスケットと同じ形の「ビスキュイ・シャンパーニュ」は
17世紀初頭、パン職人がパンを焼いた余熱を利用して焼いたのが始まりだとか。
シャンパーニュのつまみとして考案されたもので、
浸して食べるのを目的としているため、
焼く前もしっかり表面を乾燥させコーテし、
出来上がりはカリカリサクサク。

本来は二度焼きまでして、しっかり乾燥焼きをさせることから
「Biscuit」という名称がついてるのであります。
フランス語で、bisは「2度」・cuitは「焼く」という意味なので「二度焼き」
それがいわゆる「ビスキュイ」の語源。

プラではほんのりピンク色に染め、マール酒で風味づけして作りました。
あぁ、どうせなら同じピンク色のシャンパーニュに浸していただきたいものでございます



「マカロン・ド・ナンシー」

もうひとつはフランス西部、ヴォージュ山脈によって
東西にアルザス地方と分けられたロレーヌ地方から。
その歴史背景は17世紀までロレーヌ公国は神聖ローマ帝国に属していたが、
1776年にフランスに併合された。
最後のロレーヌ公スタニスラス・レクチンスキー(祖国はポーランド)は、
建築、美食、芸術を愛し、多くの美しい建物を建て、
首都ナンシーを芸術の都といわしめました。

またフランス菓子の歴史においても現在由来が述べられるときに
その名が出てこないことはないほど数々のお菓子を考案した生みの親でもあり、
(厳密にはレクチンスキー公の元で必然的・偶発的に生み出された)
そのお菓子たちは娘マリーがフランス国王ルイ15世に嫁いだことにより、
宮廷に紹介され、ここまで発展することにつながったのです。

もっとも有名なものでは「マドレーヌ」
そのエピソードはまたいつか…

ロレーヌ地方の名菓は、このレクチンスキー公に由来する有名なお菓子が
他にもたくさんあるのですが、今回プラで作ったのは彼とは全く関係のないもの

上記のお菓子はマカロンの原型ともいわれる歴史的に古いもの。
主に各修道院で考案され、作られてきたマカロンが多く、
これはシャルル3世の娘カトリーヌが建てた修道院で、
修道院長の胃に負担をかけないようにと修道女達が
考え出したお菓子だといわれています。
1792年に革命政府により修道会が禁止されたとき、
そのカルメル派の2人の修道女が
ナンシーにあるアシュ通りの信者の家にかくまわれ、
そこでお礼にと作ったのがこのマカロン。

そう元来、修道院以外では門外不出のレシピだったのであります!

やがてそのおいしさが次第に町中に広がり、
人々はこの2人の修道女をスール・マカロン(マカロンの修道女)と呼び、
マカロンと修道女の話は今に語り継がれています。

パリのものとは違い、外見はとても素朴で表面にふぞろいなヒビが入り、
上はガリガリと固くアーモンドクッキーのよう。
中はねっちりと重く、まるでヌガーのような味わい。

し~っかりと甘いお菓子ですが、私はこの食感は大好き
このヒビ割れ、さながら失敗作のように見えますが、
このお菓子はこのヒビが入ってこそのもの。
これが難しくって、ぬらしたトーション(布きん)で表面を
「ペシッペシッ!!」と小刻みに相当いたぶったらようやく出てくれました

あぁ、魅惑的な地方菓子の数々…。
残すところあと2回ですが、まだまだ地方菓子熱は冷めそうにありません

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フランス地方菓子の旅12

2008-02-15 20:48:02 | フランス地方菓子の旅


前回の「クグロフ」に続きアルザス編part2。

「タルト・ア・ロニオン」

タルト…と名前がついてあるように、
これはサクサクのパート・ブリゼを敷き込んだタルトなのですが…、
お菓子のようでお菓子ではない

一見「キッシュ?」なのですが
中にはたったひとつだけ。

そう、名前の通り主役の玉ねぎだけをなんと4個も使い(21cmのタルト型)
甘さを最大限に引き出すようにゆっくりあめ色にソテー。
そこにキッシュと同じ生クリーム&牛乳&卵を溶いたアパレイユと合せ焼き込んだら…

とーっても優しい自然の甘み

寒いアルザスの冬の朝、
こんなココロもカラダもほっこり幸せになるようなこのタルトを
みんな食べているのかしら??

…と、想像してしまいました
こんなお料理のようなお菓子のような朝ごはんは大歓迎なワタシです

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フランス地方菓子の旅11

2008-02-06 20:25:04 | フランス地方菓子の旅


冬休みを終え、1月中旬からル・コルドン・ブルーでの
地方菓子Cコースも始まっております。

この地方菓子ももうあと数回数えるほどになってしまいました。
11回目と次回はアルザス地方からのお菓子を2回に分けてお届けします

フランス北東部、東はドイツとの国境に流れるライン河、
西はロレーヌ地方との境に切り立つヴォージュ山脈にはさまれたアルザスは、
その立地条件のため1870年の普仏戦争以来、
独仏間の領地争いが繰り返された歴史を持つ地でもあります。
そんな歴史背景からもわかるように文化的にドイツの影響を受けながらも
フランスの生活文化を巧みに融合させて、
独自の文化を生み出したと言われています。
豊かな土地に恵まれ、伝統と強い郷土意識に支えられたアルザスの食文化は
奥が深く、現在では日本でも広く紹介され知られるようになりました。

フェルヴェールさんのコンフィチュールもすっかり有名ですね

さて今回はそのアルザス代表ともいえるお菓子「クグロフ」
フランス語では「クグロフ」、ドイツ語では「クーゲルホップ」
アルザスの多くの料理・お菓子にはお隣のドイツから影響を受け、
その名前もドイツ語名がついているものがたくさんあります。

クーゲルは球、ホップはビール酵母。
昔、ビール酵母を使って発酵させたのだそう。
オーストリアが起源といわれ、かのマリーアントワネットの大好物で
フランスのルイ16世のところに嫁いだ時に一緒にもち込んだという説も…。

リッチなブリオッシュ生地にレーズンを混ぜたものを
中が空洞で斜めの溝模様のついた陶器の型で焼くのがお決まりです。
その陶製の型はスフレンハイム(Soufflenheim)という村で特産されており、
この小さな村に10軒ほどの窯元が軒を連ね、
それぞれに特徴ある陶器を作っているのだそう。

伝統的な美しい模様の色とりどりのどっしりした陶製の型。
じんわりとした熱でしっとりふっくら焼ける陶器は、
使えば使いこむほどに油馴染みがよくなり良い味が出てくるのだとか。

とっておきの自分だけの型を探しに、
いつかスフレンハイム村を訪れてみたいです

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