「ビスキュイ・シャンパーニュ」
13回になる地方菓子…徐々にラストに近づいております
今回はふたつの地方のお菓子を作りました。
まずひとつめはシャンパーニュ・アルデンヌ地方から。
イル・ド・フランスの東、マルヌ(セーヌ)河が流れ、
アルデンヌ山塊でベルギーと国境を接するこの地域は
商業繁栄したあと戦争・疫病で混乱し、やがて衰退していきました。
また中心都市ランスは1825年にシャルル10世が即位するまで、
25人の歴代フランス王たちの戴冠式が行われた由緒正しき街であり、
現在も歴史的建造物が数多く残る美しい街。
昨年Paris旅行の際訪れた世界遺産の街「Provins」(プロヴァン)も
シャンパーニュ地方でした。
日記の中段に歴史説明もあるのでよかったらどうぞ~
「
Paris1週間@dimanche」
そして荒廃の地はやがて世界的に有名な特産地になりました
東南部は「湿ったシャンパーニュ」と呼ばれ、
粘土質の土地に湖沼が点在し牧畜が盛んに。
西部は「荒れたシャンパーニュ」と呼ばれ、
水はけの良すぎる石灰岩質の平地はブドウ栽培に適し大成功。
17世紀にオーヴィレール修道院の会計・食料係だった
僧侶ドン・ペリニョンの手によって、
現在のような独特の泡と香りを持つシャンパーニュ(シャンパン)が完成。
以降、同じような発泡酒であっても、
この地方で厳密に定義された製法により造られたもの以外は、
「シャンパーニュ」と名乗ることができないのです。
そこでようやく上記のお菓子の説明
ランス発祥の、フィンガービスケットと同じ形の「ビスキュイ・シャンパーニュ」は
17世紀初頭、パン職人がパンを焼いた余熱を利用して焼いたのが始まりだとか。
シャンパーニュのつまみとして考案されたもので、
浸して食べるのを目的としているため、
焼く前もしっかり表面を乾燥させコーテし、
出来上がりはカリカリサクサク。
本来は二度焼きまでして、しっかり乾燥焼きをさせることから
「Biscuit」という名称がついてるのであります。
フランス語で、bisは「2度」・cuitは「焼く」という意味なので「二度焼き」
それがいわゆる「ビスキュイ」の語源。
プラではほんのりピンク色に染め、マール酒で風味づけして作りました。
あぁ、どうせなら同じピンク色のシャンパーニュに浸していただきたいものでございます
「マカロン・ド・ナンシー」
もうひとつはフランス西部、ヴォージュ山脈によって
東西にアルザス地方と分けられたロレーヌ地方から。
その歴史背景は17世紀までロレーヌ公国は神聖ローマ帝国に属していたが、
1776年にフランスに併合された。
最後のロレーヌ公スタニスラス・レクチンスキー(祖国はポーランド)は、
建築、美食、芸術を愛し、多くの美しい建物を建て、
首都ナンシーを芸術の都といわしめました。
またフランス菓子の歴史においても現在由来が述べられるときに
その名が出てこないことはないほど数々のお菓子を考案した生みの親でもあり、
(厳密にはレクチンスキー公の元で必然的・偶発的に生み出された)
そのお菓子たちは娘マリーがフランス国王ルイ15世に嫁いだことにより、
宮廷に紹介され、ここまで発展することにつながったのです。
もっとも有名なものでは「マドレーヌ」
そのエピソードはまたいつか…
ロレーヌ地方の名菓は、このレクチンスキー公に由来する有名なお菓子が
他にもたくさんあるのですが、今回プラで作ったのは彼とは全く関係のないもの
上記のお菓子はマカロンの原型ともいわれる歴史的に古いもの。
主に各修道院で考案され、作られてきたマカロンが多く、
これはシャルル3世の娘カトリーヌが建てた修道院で、
修道院長の胃に負担をかけないようにと修道女達が
考え出したお菓子だといわれています。
1792年に革命政府により修道会が禁止されたとき、
そのカルメル派の2人の修道女が
ナンシーにあるアシュ通りの信者の家にかくまわれ、
そこでお礼にと作ったのがこのマカロン。
そう元来、修道院以外では門外不出のレシピだったのであります!
やがてそのおいしさが次第に町中に広がり、
人々はこの2人の修道女をスール・マカロン(マカロンの修道女)と呼び、
マカロンと修道女の話は今に語り継がれています。
パリのものとは違い、外見はとても素朴で表面にふぞろいなヒビが入り、
上はガリガリと固くアーモンドクッキーのよう。
中はねっちりと重く、まるでヌガーのような味わい。
し~っかりと甘いお菓子ですが、私はこの食感は大好き
このヒビ割れ、さながら失敗作のように見えますが、
このお菓子はこのヒビが入ってこそのもの。
これが難しくって、ぬらしたトーション(布きん)で表面を
「ペシッペシッ!!」と小刻みに相当いたぶったらようやく出てくれました
あぁ、魅惑的な地方菓子の数々…。
残すところあと2回ですが、まだまだ地方菓子熱は冷めそうにありません