マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

『精神現象学』の翻訳(第2版)を未知谷から出版しました

2018年06月10日 | 読者へ
  上製、箱入り。1071頁。
  定価12000円(税送込み)。この定価は鶏鳴出版に申し込んだ場合のものです。
  以下のところにお願いします。購入書籍名の記入をお忘れなく。

  〒振替口座。00130-7-49648
  加入者名・鶏鳴出版

 第2版出版の経緯と内容上の改善点については「第2版へのあとがき」に書きましたので、それを以下に引きます。
なお、本ブログに載せておきました論文「ヘーゲルのWissenschaftをどう訳すか」は本書に移しましたので、本ブログからは削除しました。

    第2版へのあとがき

 初版の事情が重なって、本書の初版が売り切れになり、急遽重版する必要に迫られました。訳者としては、かねがね、初版には多大の不満がありますので、再版の際には「人生の最後の仕事の1つ」として、もう一度すべてを見直しておきたいと思っていました。それは『関口ドイツ文法』(未知谷)を出して(2013年)、私のドイツ語が大きく変わったこともあります。これはまもなく上梓します訳書『小論理学』(未知谷版)をかつての鶏鳴版と比較すれば誰にでも分かることです。

 しかし、それに取り掛かる前に本書の重版の必要が生じたわけです。「改訂新版を出すには最低でも3年は掛かるだろう」という推測と78歳という自分の年齢を考えて、とりあえず「折に触れて少しずつ用意してきていました訂正だけは入れて誠意を示した上で重版し、同時に改訂新版の準備も進めていくのがベスト」と判断しました。

 そのために、「どうしても書き足したい」という事を、今まで「白」だった1012頁以下にまとめるというような変則的な事になりました。

 付録2への「付記」もどうしても入れたいと思い、無理をして、入れてもらいました。

 付録5の論文「ヘーゲルのWissenschaftをどう訳すか」は好く考えていただきたいと思います。これを「学」とか「学問」と訳さなければならないと主張している皆さんは、このテーマで論文を書いた人がいないという惨状をどう考えるのでしょうか。論文にならない発言は哲学では寝言と同じです。

 又、新たに付け加えました「索引」も、全体をカバーしておらず、不十分なものですが、これだけでも当面の役には立つと思い、入れました。

  最後に、ヘーゲル自身が本書について述べている以下の言葉を『小論理学』第25節への注釈から引いておきます。

── 拙著『精神現象学』は、それ故に〔「現象学」であって「〔精神〕哲学」ではないが故に〕、その出版に当たって「哲学体系の第一部」としておいた。そこでの叙述の進行は、精神の最初の現象形態であり最も単純な形態である直接的意識〔感性的確信〕から出発して、その意識の弁証法〔内在的論理〕を哲学知〔絶対知〕の立場まで展開するというもので、この歩みによってこの哲学知の〔生成の〕必然性を証明しようというものであった。しかし、このためにはそれは単なる意識の形式面に留まることはできなかった。というのは、哲学知の立場は自己内に極めて豊かで具体的な内容を持つものであり、従って、その立場が結論として出てくるようにするためには、道徳、習俗、芸術、宗教などといった意識の具体的形態の分析が欠かせないからである。従って、さしあたっては意識の形式面に限られたように見える展開の中に、本来は哲学の特殊部門の対象であるような内容の展開も、同時に入り込むことになった。内容が自体存在〔隠れた本質〕として意識に関係している以上、言ってみれば意識の背後ではその内容の展開が為されているに違いないからである。〔しかし〕それによって叙述は込み入ったものとなり、本来哲学〔本論〕に属するものの一部がかの序論〔である精神現象学〕に入ってしまった。〔そこで、哲学体系への序論として精神現象学に代わるものを考えてみたのだが、それがこの『哲学の百科辞典』への序論(第1~18節)及び「論理学」への予備知識(第19~83節)である。とりわけ第26~78節がそれである。〕〔もっとも〕ここ〔序論〕でこういう考察を試みると、どうしてもそれは史実的悟性推理的なものとならざるをえないので、その点で一層〔「精神現象学」以上に〕不適切でさえある。しかし、これだけの叙述でも、認識や信仰等々の本性に関して問題とされており、きわめて具体的な問題だと思われている事どもが、実際には単純な思考規定に還元されるのだということを知るには役立つだろう。しかし、これらの思考規定の真の解決は論理学〔本論〕を待たなければならない〔のはもちろんである〕。(引用終わり)

 さすがにヘーゲルだと感心します。哲学とは結局は自己認識を深めるだけだという私見を確証してくれるに足る立派な自己認識だと思います。

 筆を置く前に、このような面倒な仕事を快く引き受けて下さった編集者の伊藤伸恵さんに対する感謝の気持ちを記しておきます。
 2018年5月10日
                              牧野紀之


 
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