マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

「This is it」について

2010年02月22日 | ア行
「This is it」についてIさんからご教示をいただきました。まずそれを掲載します。

      

 TVで見聞きした印象ですと、本来、昨夏から今春にかけて英国ロンドンにて開催されるはずであったコンサート公演のタイトルが「This is it」であり、その発表会見の映像において、マイケル氏自身が観衆に向かって「This is it」と繰り返し告げていまして字幕では「これが最後だ」というような翻訳が付けられていました。

 同公演は氏の最後のコンサート興行となる予定でしたので、そういう意味だと想われます。英語(米口語)の慣用句としてそういう言い回しがあるのかと想っていましたが、マイケルの「This is it」について知らなかった、英語に造詣の深い会社の同僚の話しでは、本来そういう使い方はしないというか、違和感があるとの事でした。
以上(詳しい回答が寄せられるまでの)ご参考まで。(2010年02月20日)

   感想

 多分、マイケルは前々から「近く自分の最後の公演をする」とファンに広告していたのでしょう。ですから「マイケルの最後の公演」という観念はファンの頭の中に前々からあったのでしょう。itはその「話者と聞き手との間に共有されている事柄(あれ)」を意味すると思います。この場合はそれが「最後の公演」だったわけです。

 This is itは文としては「これがそれだ」ですが、話の通じている人たちの間ではこれで分かるわけです。

 さて、文法の問題は「主語はどっちか」、です。誰でもThisが主語だと思うでしょうが、英語学の大家・斉藤秀三郎が「That's itではitが主語だ」と言ったために、英文法学界で大騒ぎになったのです。どう決着したのかは知りません。

 関口さんはこの論争を知らなかったようですが、主語について「文法上の主語」と「意味上の主語(事実上の主語)」を分けて考えることを提唱しています。

 私見では、That's it (This is it)の問題もこの関口説によらなければ正しい解決は出来ないと思います。文法上の主語はもちろんThat (This)です。しかし、事実上の主語は場合によります。That's meなどの場合を考えれば分かるでしょう。

 今校正している文法書の中でそう云う事を書いているのですが、もう少し用例がほしいな、と思いました。マイケルのこれは大々的に広告しているので私の目にもとまったのです。ありがとうございます。

 しかし、ネット時代はありがたいですね。こうしてすぐに皆さんの助力が得られるわけですから。コメント欄に投稿をいただいた関口さんの小冊子「真意と諧謔」も結局、千葉大学の図書館のほかに北海道立図書館にも1部あることが分かりました。千葉大は一切持ち出し禁止ですが、こちらは「或る条件を満たす場合は貸し出しもする」ということも分かりました。

 そのうち、最終決着するでしょう。

PS、その後Iさんから再度メールをいただきました。ありがとうございます。論旨は上の通りで変更の必要はないと思いますので、これでアップします。

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