マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

知事選2009(05、私の評価、04、リーダーシップについて)

2009年06月29日 | タ行
 行政改革、職員への対応、議会との関係などを「リーダーシップ」としてまとめて考えます。

 平野さんは、共産党の候補者らしく「大企業言いなりの県政」を批判していますが、職員との関係には触れていないようです。議会については「オール与党」として、石川県政に協力した責任を追求しています。

 他者を批判するのも結構ですが、自分達がなぜ支持されないのかも反省したらどうでしょうか。そもそも、平野さんのマニフェストは県政全体に及んでなくて、マニフェストとは言えないと思います。

 坂本さんは、石川県政を受け継ぐことがはっきりしています。「最近のステレオタイプの官僚批判」には違和感を感じるそうですが、それによって自分の官僚丸投げ体質を隠そうとしても、バレています。何も期待できないでしょう。

 さて、海野さんは明確に「脱官僚」を宣言しています。詳しく見てみましょう。マニフェストの11頁以下に次のように書いています。

──1、県民主義・脱官僚!
① 予算配分の発想を大転換! 払たち県民のための予算を捻出!
・知事の月額報酬30%カット、その上でマニフェストの達成評価を報酬に反映
・全国2位の職員給与を全国平均レベルに引き下げて財政危機回避(約200億円削減)
・県の3000余の全事業を見直す「無駄撲滅プロジェクト」の発足。
・県道路公社などの県外郭団体の抜本的な廃止・見直し(結果として、修善寺道路、伊豆中央道、はまゆう大橋等の県道の無料化などを実現)
・非効率な経営が続く、「グランシップ」「舞台芸術公園」「エコパ」など大規模施設運営の大胆な見直し。

 これらが主たる内容ですが、そのほかにも、③として、「幹部に民間人材を登用する。やる気のある職員を抜擢し、職員の士気を高める」とあります。

 次に川勝さんのマニフェストを見ましょう。主な点を拾って箇条書きにします。
 01、2年以内にすべての事業について、「事業仕分け」を行い、廃止、民間委託、見直し、継続の評価をする。
 02、知事の退職金をゼロにする。
 03、57の外郭団体への天下りを洗い出し、禁止する。
 03、それらの外郭団体を4年間で50%統廃合する。
 04、幹部職員に評価制度を導入し、能力主義を導入する。
 05、県幹部に民間人を積極的に登用する仕組みを検討する。
 06、県内の出先機関を見直し、二重行政をなくす。

 両氏の政策には重なる所が多いようです。県民主義と県民目線、事業仕分け、外郭団体の見直し、自分達の給与や退職金の減額、職員の登用制度の改革。しかし、好く見ると、微妙な違いがあります。

 第1の違いは、「脱官僚」と明確に(あるいは、はったりを利かせて)うたっている海野さんに比べると、「県民の目線で」という程度の川勝さんには「官僚主導行政」からの脱却の意志は少し弱いようです。

 それの具体的証拠が、職員給与の引き下げを言うか(海野さん)、それを言わないで知事の退職金ゼロにとどめている(川勝さん)かの違いでしょう。

 やはり全体として、川勝さんの方が穏やかな印象です。数字を挙げている項目でも、悪く取ると、ごまかせるものだけです。例えば、外郭団体の50%削減も、影響の少ないものを削減しても達成できるでしょう。

 また、民間人の登用は「仕組みの検討」に止まっていますが、内容的にも、「実績のある民間人」と言わなければ無意味です。いまでも代表監査委員は民間人のはずです。私見では、ぜひとも実績のある民間人を登用すべきは代表監査委員、広報局長、教育長の3つですが、代表監査委員を服部寛一郎さんに代える見識があるでしょうか。

 教育長は今、高校の数学教師から出世に成功した遠藤亮吉さんがやっていますが、その任期は平成24年03月末までです。それまでは知事と言えども代えられません。「辞めてくれないか」と「お願い」することはできますが、川勝さんにはその見識はないでしょう。そもそも平成24年04月以降、誰に教育長を頼むのか、腹案を持っているのでしょうか。多分、ないでしょう。つまり、順送り人事になり、静岡県の教育は変わらない、ということです。

 広報局長は前回論じました。学問的実績とジャーナリスト的センスがあり、県民の立場に立った実績のある民間人を知っているのでしょうか。

 学長としての実績でも、挙げるほどのものはなかったと思います。金沢工業大学のように、2名の学生代表を経営委員会に入れるくらいの見識がなくては、本当の民主主義者とは言えません。

 海野さんは、職員の給与を下げて、ラスパイレス指数を103から98へと5ポイント下げるそうですが、まずこの程度では「改革」とは言えません。「地方公務員の給与は2割下げてようやく民間並みになる」というのが研究者の常識であることを知らないのでしょうか。それとも知ってて、無理だから妥協したのでしょうか。

 しかも、この程度の給与引き下げでも相当難しいと思います。海野さんが知事になったら、「純粋無所属」だそうですから、議会の支持を得るのが難しいでしょう。嫌がらせを受ける可能性もあります。幹部職員の「情報を上げない」という抵抗に遭うでしょう。これをどうやって乗り切るつもりでしょうか。その戦略と戦術を持っているのでしょうか。

 湖西市長の三上さんは2度も長期入院しました。熱海市の斉藤市長も思うように行っていないようです。民間人を幹部に起用する条例が否決されたと思います(その後修正して議会と妥協)。御殿場市長の若林さんは、ハコモノ行政反対と言いながら、市長になった途端にそれを撤回しました。なぜこういう事になるのでしょうか。行政がどういう仕組みで動いているかを知らなすぎるからだと思います。

 逆に、「役所の改革」をともかく成し遂げた人はどういう共通点を持っているでしょうか。答え。ほとんどが官僚出身者であること、これです。自然を利用するにはその法則を知らなければならないのと同じです。首長になったら何でも勝手に変えられると思うのは、間違いです。日本は民主主義国です。総理大臣は議院内閣制ですから与党が多数ですが、地方政治はいわば大統領制です。議員は別に直接選挙で選ばれています。あれほどの人気を誇り実績もあった田中康夫長野県知事でも、長続きしませんでした。

 海野さんが知事になってその「脱官僚」とやらを実行しようとしたら、ただちに行き詰まるでしょう。その時、どう反省して、「闘う政治家」に「本当の有識者の意見を聞く政治家」的要素を加えるか、これで海野さんの運命は決まるでしょう。

 結論・4氏のリーダーシップについての評価は以下の通り。

 平野さんと坂本さんは、共に、10点。川勝さんは30点。海野さんも現状は30点なのですが、反省して成長する「可能性」のある点を加味すれば40点。

コメント
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