マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

浜松にLRTを

2009年06月14日 | ア行
 浜松市の市街地に次世代型路面電車(LRT)を走らせようと構想している市民有志グループが、車両デザインを公表した。来年度には、約900億円をかけて6路線を整備する計画案を市に提案する予定だ。

 市は今年度中にLRTを含めた新たな交通システムの整備方針をまとめる考えだが、建設費がかさむことなどから計画の難航も予想されている。

 LRT構想を呼びかけているのは「都市交通デザイン研究会」で、昨年04月、静岡文化芸術大学(浜松市中区)の研究者や企業関係者、市民有志ら約50人が結成した。高齢化に備えた車社会の転換や渋滞緩和、環境への配慮などからLRT導入を柱に公共交通のあり方を研究している。

 研究会の構想によると、JR浜松駅-佐鳴湖パークタウン間などJR浜松駅を中心に6路線で総延長45㌔を計画。第三セクターなどの運営で2017年の実現を目標にしている。900億円かかるとされる費用は、半分を国の補助金で賄い、残り半分は民間の資本や経営手法を活用するPFI方式で調達するとしている。

 今回公表されたのは、世界初という2階建ての車両デザイン。自動車メーカーでデザインを手掛けた静岡文化芸術大の河岡徳彦教授の設計で、1階デッキの段差をすべてなくし、車いすやベビーカーの利用者らを想定した多目的スペースを設置。2階に通常の座席を設けた。

 同市は合併で市域が6倍に広がったため、バス中心の交通計画の見直しを迫られており、市も新交通システムの導入には前向きだ。昨年度から庁内に検討部会を設け、今年度中の方針公表を目指している。2007年秋には、地元の国会議員や市議らによる推進議員連盟もできた。

 国土交通省によると、現在富山市や熊本市、広島市などでLRTが走り、昨年02月時点で全国約70地域でLRT導入構想がある。しかし、車の利便性が落ちることへの住民合意の難しさや道路拡幅なども含めた建設費用がかさむことなどから、足踏みしているケースが多いのが実情だ。

 研究会の内田宏康事務局長は「LRTを核に、路線バスや自転車を組み合わせた人と環境に優しい浜松型の交通システムが必要だ。構想実現を目指す2017年には、市内の年間公共交通利用者を現在の倍に増やしたい」と話している。

  用語解説

 LRT ライト・レール・トランジットの略で、低床の路面電車などを活用した新交通システムを指す。交通渋滞の緩和や、排ガス抑制による環境への配慮などが期待されている。建設費用は1㌔20億~30億円程度とされ、地下鉄の5分の1以下で済む。

(朝日、2009年06月03日。滝沢隆史)
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