「ハート・ロッカー」でリアルな戦場を伝えたキャスリ・ビグロー監督とマーク・ボール脚本のコンビが、オサマ・ビン・ラディンの暗殺の全貌を、CIAの全面協力のもとで描く。
CIAにリクルートされたばかりのマヤが配属されたのは、対アルカイダ専門のチーム。最初こそ捕虜を水責めにする場面では目を背けていたものの、アルカイダ、そしてオサマ・ビン・ラディンの捜査を通じて、厳しい拷問を直視する一人前のCIA局員になっていく。CIAの拠点があるイスラマバードで、外国人御用達の高級ホテルで同僚と食事をしていたら爆弾テロにあったり、仲の良かった先輩が囮の情報に騙されて自爆テロの犠牲になったり、アルカイダとの最前線で戦いながら、マヤはオサマ・ビン・ラディンを捜し続けます。
マヤが追い続けたアルカイダの連絡係、アブ・アフメド、他のエージェントは、彼はもう死んでいるとか、そんな人間は存在しないと考えて、他の情報やターゲットをあたっていたが、マヤだけは執念深くアブ・アフメドを捜し続ける。そしてついに彼を特定してアジトを突き止めるが、そこは高度に訓練された防諜体制が整っていた。アルカイダの最高幹部が潜伏している可能性をもとに、ネイビーシールズによる強襲作戦が実行される。。。
公開前の情報では、CIAの捕虜拷問シーンが物議を呼んだとあったから、どんなに残虐なシーンがあるのだろう、と身構えていたら、冒頭の水責めのシーンだけで少し拍子抜けでした。ただ、もっと厳しい拷問を実際にやっていたとしても、映像にするのは許可が出なかったのかもしれません。
7年もの間、手掛かりがほとんどない中で執念深くアルカイダとオサマ・ビン・ラディンを追い続けるマヤをスカウトしたCIAの手腕はさすがというか何というか、アメリカの底力、懐の深さを見せつけられます。
CIAが携帯電話を傍受してアブ・アフメドの車を特定するシーンは、現地で本当にこんな様子で調査しているんだと驚きでしたが、対象が運よくクロカン車に乗っていたり、街道の主要地点を通り過ぎると協力者が電話連絡したりするくだりが、うまく運びすぎるきらいがあるのは、CIAの実力を隠すためなのでは?と穿った見方もできます。
世界のIT化の進展も、CIAの捜査にかなり影響を与えているのでしょう。携帯の電源を傍受して人を割り出すなんて、そもそも携帯がなければできないことだし、ビッグデータの処理なんかもここ数年で飛躍的に向上しているから、膨大に集まる情報を分析する手法もかなり進歩したのではないでしょうか。オサマ・ビン・ラディンのアジトの航空写真は無人偵察機から撮ったのか、衛星写真なのかわからないけれど、一歩でも上空から見えるところへ出たら捕捉されるのだから技術の進歩は恐ろしいくらい。
秘密の建物に、絶対に姿を現さない男が1人いると発見してから、マヤが上司の部屋のガラス壁に日付をかいて、まだ許可は出ないのかと煽る姿は、組織が動くときの複雑さを感じさせます。
そしてついにネイビーシールズが強襲する場面、最新鋭のステルスヘリに暗視ゴーグルをつけた完全装備の兵士が2機に分かれて乗り込み、アフガニスタンの米軍基地から出撃して、レーダーに捕捉されないよう山沿いを低空飛行で進みながら目標に近づきます。1機は無事に着陸したけれど、もう1機はバランスを崩して不時着、しかしシールズ隊員たちは何でもなかったかのように出ていきます。派手な銃撃戦こそないものの、プラスチック爆弾で鍵のかかった鉄の扉を破壊するなど、やるときは徹底してやります。さすがに女子供は保護するものの、邪魔だったら殺すことにためらいは一切ありません。
ついにオサマ・ビン・ラディンを射殺して、遺体と山のように膨大な重要資料を回収して、不時着したステルスヘリは軍事機密を盗まれないように爆破、パキスタン軍が来る前に撤収まで済ませるのは、さすがに最新鋭の部隊です。アフガニスタンの基地でオサマ・ビン・ラディンの遺体と対面した後、軍の専用機でアメリカに戻るマヤの胸中には何が去来していたのでしょうか。
キャスリン・ビグロー監督は、戦争から離れた作品も見てみたいですね。
公式サイトはこちら。
2/16 109シネマズMM横浜
霧社事件を描いた台湾映画大作『セデック・バレ』 絶賛公開中!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます