まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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クーリンチェ少年殺人事件 [牛古]嶺街少年殺人事件

2017-07-10 23:59:33 | 台湾映画(あ~な行)

台湾ニューウェーブの巨匠の1人、 楊德昌エドワード・ヤン監督の傑作。権利関係の縺れからDVD化も再映もされず、25年ぶりの上映とのこと。自分の中でも観たかった作品の一つです。主演は今やアジアを代表するスターの1人、張震チャン・チェン。その鮮烈なデビューが話題になったことを覚えています。

1960年代初頭の台湾、小四(張震)は教師とちょっとしたトラブルになり、志望していた昼間部ではなく建国高校夜間部に進学する。小猫王リトル・プレスリーこと王茂や飛機(柯宇綸クー・ユールン)たちとつるみながら高校生活を楽しんでいた。

小四はある日、保健室で小明と知り合う。小明は、小四も関係する不良グループ小公園のボス、ハニーの女で、ハニーは対立するグループ217のボスを殺して姿を消していた。父親の権力をかさに小公園を牛耳ろうとする滑頭に軍の将軍の息子小馬など、個性的な同級生が登場しつつ、ハニーが突然戻ってきたためにグループ同士の抗争が激しくなる。

小明に恋心を抱く小四だが、グループ同士の抗争、また父親が国民党か公安かの捜査対象になるなど、状況が目まぐるしく変わる中で。。。

3時間56分(236分)という『アラビアのロレンス』(227分)、『沈まぬ太陽』(202分)を超える長尺ながら、インターミッションがなく一気の上映。しかしながら長さを感じることは微塵もなく鑑賞することができました。ストーリーの舞台が複数あることが理由の一つかもしれません。小四たちの同級生を中心とした学校生活に、小四の家族を中心にしたストーリー、さらにヤクザっぽい感じのグループや社会情勢など、幾重にも焦点が当てられます。それぞれが60年代初頭の台湾社会の輪郭を形作っていて、その空気感というか手触りが立体的に感じられます。

画面で印象的だったのは暗闇の映像。夜の闇の中で聞こえる息遣いと僅かに感じる人物の動き、雨の中の討入りを頂点に、暗闇で何とも言いようのない緊張感が漂います。

不良少年たちがグループを作って対立しあい、ギャングやヤクザといった年長者の影響を受けるというのは、古今東西変わらない流れですね。ちょっとしたいざこざがどんどん発展し、ついには殺しにまで至るのも覚えのあるケースです。

小四の家に多く見られますが、そこかしこに日本の片鱗が感じられるのが台湾っぽくて、異国だけど何だか懐かしい感じがする独特の空気です。日本家屋に日本刀など、戦後引揚げた日本人たちが置いていったものなのでしょう。

小明がどうして小馬の家に行ったのか、小四はなぜ彼女を刺してしまったのか、時代のなせる業、あの頃の台湾社会の雰囲気と少年少女の一途な真っ直ぐな気持ち、それらがたまたま増幅されて、ついに限界を突破してしまったのでしょうか。

たくさんの側面があり、語り尽せない映画です。

公式サイトはこちら

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