まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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最愛の子 親愛的

2016-03-06 23:49:10 | 中国映画(あ~な行)

陳可辛ピーター・チャン監督の最新作は、中国の社会問題のひとつ、子供の誘拐を扱ったシリアスなもの。出演はこの作品で第34回香港電影金像奨主演女優賞を受賞した趙薇ヴィッキー・チャオ、その他に黄渤ホアン・ボー、郝蕾ハオ・レイ、佟大為トン・ダーウェイ、張翼チャン・イー、張雨綺キティ・チャンなど。

文軍(ホアン・ボー)は一人息子のポンポンとシンセンで2人暮らし。離婚した妻のジュアン(ハオ・レイ)が週一回ポンポンに会いに来る。そんなある日、いつものようにポンポンを文軍の自宅に帰した後、ポンポンは子供たちだけで遊びに行き、姿を消す。

警察に届けて新聞やインターネットを使って捜索するが、見つからない。情報提供はすべて報奨金目当ての偽情報で、全国各地を訪れては落胆する日々が続く。罪悪感を感じているジュアンは、今の夫とギクシャクしてきて、文軍は自分たちと同じように子供を誘拐された親の集まりにジュアンを誘う。同じ境遇の人の話を聞いたジュアンは、最後に自分の罪の意識を吐露する。大規模な子供誘拐グループが逮捕されたと聞き、全員で拘置所まで行くがそこでも手掛かりは得られなかった。

ポンポンの失踪から3年後、安徽省の農村にポンポンと似た子供がいると久しぶりに情報を得た文軍とジュアンは、集まりのリーダー、ハン(ホアン・ボー)、そして担当刑事とともに現地に行く。そこにいた子供はポンポンの面影があり、額の傷も一致した。「ポンポンだ!」といきなり連れていく文軍、ジュアンに対し、母親のホンチン(趙薇)が村人とともに追いかける。

警察での調査の結果、子供はポンポンだと判明し、ホンチンの亡くなった旦那がシンセンからもう一人の女の子とともに連れ帰ってきていたことがわかる。ポンポンは文軍とジュアンの元へ戻り、女の子はシンセンの養護施設へ、そしてホンチンは誘拐そのものには関わっていないとして6ヶ月の懲役となる。

誘拐されたとき3歳だったポンポンは以前の記憶はなく、ホンチンを本当の母親だと思っていた。出所したホンチンは2人の子供にもう一度会うためシンセンへ行き、弁護士の協力を得ながらせめて妹だけでも手元に置こうとするが。。。

中国のいろんなひずみ、社会問題がいくつも積み重なっているなあ、というのが率直な感想です。キーとなる事件は幼児誘拐とはいえ、その背後には一人っ子政策や農村からの出稼ぎ、頼りにならない警察、人の弱みにつけこむ詐欺の横行や農村部の前近代的な医療体制などいろんな問題があり、それぞれの要因が輻輳してこうした事件が発生しているのでしょう。

法的には当然ながら誘拐されたり拾われたりした子供は本当の親に返されてしかるべきですが、子供が幼くて本当の親を覚えていなかったり、育ての親も誘拐された子供だと知らなかったら善意の第三者的立場になるかもしれなくて、感情的には育ての親も忍びないなあと。特に子供から見たときに、5、6歳くらいだといきなりこれまで育ててくれた母親から引き離される。詳しい理由は理解できないし、難しいなあ。

ホンチンの味方をする弁護士(トン・ダーウェイ)が元いた事務所から追い出された経緯もよくわからないけど、母親のことで苦労しているってのが背景にあるのかな。社会保障が貧弱で社会の発展に追いついていないのも、ひずみの一つですね。

ジュアンがポンポンの失踪の罪悪感を背負って、新しい夫と子供を作らず遂に離婚にまで至るのは、母親としての複雑な感情なんだろうなあ。さすがに日本で幼児誘拐って殆ど聞かないからどこか他人事のように見てしまうけど、現地では切実な問題なんだろう。

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2 コメント

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産みの親より育ての親とはいえ… (ここなつ)
2016-03-08 12:49:15
こんにちは。TBをありがとうございました。
私は基本的には「産みの親より育ての親」派なのですが、誘拐については育ての親に対する同情の余地は全くないと思いました。
それもこれも全て貧困と無知がなせるものだとすると、多少同情心も湧いてきますが…どちらにしても、こんな悲劇は無いと思います。
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ここなつさんへ (まてぃ)
2016-03-12 21:29:14
コメントありがとうございます。
悲劇の原因を探ると、やっぱり貧困だったり無知だったり格差だったり。。。
経済発展の負の側面のひとつですね。
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