統計学というと、高校の数学で確率なんかを勉強して大学入試の数学ではかなり苦手にしていた記憶がある。分散や標準偏差、正規分布、t検定にχ二乗検定といった用語は憶えているが、理解はかなり怪しげです。よくテレビや新聞で内閣支持率○○%とかやっているように、統計学の手法そのものは日常生活の中に入り込んでいるけれど、そうした現状を踏まえて統計学そのものについて述べている本。
ITの発達により、それまでの . . . 本文を読む
共感能力が欠如したサイコパスの天才、蓮実聖司が晨光学院町田高校の英語教師として、担任する2年4組を全滅に追い込むサイコスリラー。映画は未見ですが、伊藤英明の爽やかな風貌が蓮実の外見のイメージにぴったり嵌ってそう。
蓮実は共感能力を欠いているだけではなく、倫理観や自分の欲望を抑え込む自制心といったものも欠落しているのではないか、と思わせます。ただ、蓮実以外の教師も釣井を筆頭に、養護教諭の田浦、 . . . 本文を読む
第11回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作品。
北海道根室半島沖に浮かぶ石油掘削施設TR102で職員が全員死亡する事件が発生、現場に向かった自衛隊の廻田三佐率いる部隊は凄惨な光景を目の当たりにする。遺体は劇症の出血熱のような症状を示していて、政府は国立感染研に、アフリカのガボンで妻子を失い失意のうちに帰国していた富樫博士を招いて原因究明にあたる。
感染源が特定できないまま事態の拡散はなく . . . 本文を読む
トム・クルーズ主演の映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』が日本のライトノベルが原作だったということで、興味を持って読んでみました。
小説の舞台は日本、主人公はキリヤ・ケイジという初年兵。トム・クルーズの演じた報道官のケイジ少佐は、キリヤ・ケイジと報道写真家のマードックを足し合わせたキャラっぽい。さすがに小説版のギタイの正体は複雑すぎたのか、映画では一切言及なし。バトルアックスも使っていなか . . . 本文を読む
最初は全く関連の無い登場人物が次々と出てきて、どんなふうに繋がるんだろうと思っていたら、少しずつ接点が出てきて問題の事故にぴったりと収斂していく。それはバラバラのピースを一つずつ取り上げて形作るジグソーパズルのよう。それぞれのピースの位置が分かって全体像がパッと浮かんだ時には、そういうことだったのか、と深い納得です。
誰もが少しくらい心当たりのある、ほんのちょっとしたマナー違反、犬の糞だったり . . . 本文を読む
「麻木久仁子の週刊ほんなび」で紹介されていた本。戦争で負けて占領された国のある小学校に、勝った側の先生が新しくやってくる。その最初の23分間の出来事で、読むのも23分くらいで読めてしまうのではないか、という短編ながら、その内容は刺激的で、教育とは何か考えさせられ、教育が小さな子供に与える影響が如何に圧倒的なものか、震撼させられる。
いや、これは小さな子供だけではなく、大人にも同じことかもしれな . . . 本文を読む
『しんかい6500』の女性初のパイロット候補生、天谷深雪の成長を主軸としたストーリー。
深雪が勤務している独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は実在の組織で、もちろん有人潜水調査船『しんかい6500』も実在し、日々深海の探索に励んでいる。そうした「自分の知らない世界」を垣間見る面白さが、この物語の魅力のひとつだろう。
初めて聞く名前の深海の生き物たちは、画像を検索してみれば非常に特 . . . 本文を読む
現役の霞ヶ関官僚が書いたという話題の本。政・官・財のトライアングルや既得権益という言葉はよく聞くけれど、この本のように具体的に生々しく描かれると虫酸が走り嫌悪感を抱きます。
玉川京子や西岡進、伊豆田知事といった原発に懐疑的な立場の人たちの中盤での活躍には一瞬スカッと気分が晴れますが、その後の国家権力の圧倒的な反撃は個人の志などチリのごとく吹き飛ばしてしまいます。誰か標的を定めたら一般市民は逃れ . . . 本文を読む
2012年本屋大賞受賞作。辞書作りに命を懸けているといっても過言ではないほど、新しく刊行する「大渡海」に関わる人たちの辞書にかける情熱はすごいものがあります。
ただ、血沸き肉躍る、というよりも淡白であっさりとした味わいなのは、辞書の編纂というかなり地味な仕事がテーマとなって、主人公馬締光也のバカ正直とも言える性格から来るものでしょう。馬締以外の登場人物も、松本先生や荒木さん、佐々木さんといった . . . 本文を読む
6年前、幼児誘拐殺害事件で陣頭指揮を取りながら捜査に失敗し、被害者の殺害という最悪の結果を招いた巻島史彦警視、その事件の記者会見でも大失態を犯して左遷され、今は足柄署の特別捜査官という立場にいる。
川崎の新興住宅街で起きた連続児童殺害事件、神奈川県警の捜査は行き詰まりを見せ、本部長として再び神奈川県警に来た曾根は、巻島をこの事件の担当にしてテレビニュース番組に出演させる「劇場型捜査」に踏み切 . . . 本文を読む
今年の本屋大賞受賞作『村上海賊の娘』を書いた和田竜の作品で、野村萬斎主演で映画化もされているけど映画は見ていません。
関白豊臣秀吉の北条征伐の折、秀吉本隊は北条氏の居城、小田原城を包囲しながら、旗下の武将に関東各地の支城を攻略させていた。成田氏が守る忍城を攻めるのは、総大将石田三成が率いる二万の大軍。一方、五百の守兵で忍城に籠る成田方は当主氏長が秀吉側に内通し恭順の意を示していたものの、三成 . . . 本文を読む
幼馴染の望月チエミが母親を殺害して失踪してから半年、神宮寺みずほはチエの行方を捜しはじめた。当時の合コン仲間の果歩に政美、高校までの同級生古橋由紀子、中学の担任だった添田先生に元彼の柿島大地、同僚だった亜理紗たちに話を聞くのと並行して進められる、国内唯一の「赤ちゃんポスト」の取材。
政美や亜理紗が嫌悪感を抱くほどチエミと母親の関係は親密だったのに、なぜチエミは母親を殺したのか?みずほと母親との . . . 本文を読む
明治維新を専門に研究している著者が、近代日本の経験をもとに「愛国(ナショナリズム)」「革命」「民主」の視点から世界に通じる普遍性を探ったもの。
まず、明治維新の世界史上でも稀有な、犠牲者が極めて少ないにもかかわらず世襲貴族(つまり武士)のほとんどがいなくなった大革命である、という捉え方にはっと驚きを覚える。フランス革命やロシア革命、中国革命(辛亥革命)などが世界の革命としては有名だが、明治維新 . . . 本文を読む
暦を変えた渋川春海(二代目安井算哲)の生涯を、爽やかな筆致で軽やかに描き出す。
御城碁を打つ安井家の長男として産まれた春海だが、家督は父初代算哲の弟子、算知が養子として継いでいて、武家の次男坊にも似た何とも宙ぶらりんな立場にある。血筋柄、碁の才能があり実力は高いものの、碁には面白味を見出せず算術に夢中になっている。そんな春海が二刀を下賜されて間もなく、神社境内の遺題を通じて「一瞥百解」の天才、 . . . 本文を読む
最近は、こういう過去の物語と現在の物語が並行して進む、という構成が流行っているのでしょうか。
穏やかだった亮介の一家に突然降りかかってくるいくつもの悲劇。亮介の婚約者、千絵の失踪にはじまり、父の末期癌、母の交通事故死と不運が立て続けに起こります。
そして父の書斎で見つけた古い4冊のノート、「ユリゴコロ」と題されたそのノートには、殺人の記録が綴られていた。。。
最後の父の告白の途中あたりで、 . . . 本文を読む