えくぼ

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今年の角川短歌賞 ③

2016-11-07 09:22:55 | 歌う

              今年の角川短歌賞 ③

 昨日につづき今日は、今年受賞した竹中優子作品「輪をつくる」について書いてみたい。4人の選考委員の小池光と東直子が◎をつけ、佐佐木定綱も◎のためダブル受賞となったようだ。この作品も誌上の選考過程を読む前に私は読み、好きな作品を5首選んだ。

            「輪をつくる」より五首

    2  三角定規で平行の線を引くときの力加減で本音を話す

    7  体育教師に生理の重さを話しおり 窓の向こうに窓が開いて

    14 屋上に出るためにある階段の暗さ、桜が満開だって

    21 弁当のおにぎりたちのへちょへちょに泣いてもいいとなでられている

    22 ささやかな儀式のように街灯にぶつかる羽虫をふたりで見たね                                              

  この5首のなかから選考委員の東氏は 2、7,14、21を選んでいる。「暗さを抱えつつも外界の明るさを素直に感受していて、冬から春に向かう季節感を生かしながら様々な生き物の存在を愛でるというところ、心の静かな前向きな感じ、抒情性に惹かれた」と。

 小池氏は22を選び他は私の選んだ作品と重なっていない。「生き難い内向的な子だけれど、病的な暗さみたいな印象がない。透明に澄んだシャープな感性が素直な言葉使いで定着されている」と。

 「私は誰かの背中をぼんやりと眺めることが好きです。しかし、だれかに背中を見せるのは嫌いです」 竹中優子の<受賞のことば>より。

 竹中優子は1982年生まれ。2015年に「未来短歌会」に入会、黒瀬可瀾欄に所属。私も「未来」の会員だが竹中さんにはお目にかかったことがない。女盛りの方だろう。来年の新年歌会でお目にかかれることを願っている。

    竹中優子さま  よろしかったら私の背中を眺めてください。   

                  11月7日  松井多絵子