★ 火星に命あらば ★
♦ 火星は今ふきげんだろう人工のひかりの街を見おろしながら 松井多絵子
東京のはずれのわが街でも夜は電飾に華やぐ。星たちは精彩を失う。年末にはさらに電飾が華やぐ。でも繁華街をすぎて空を仰ぐと星が近づいてくる。火星が急接近してくる。
9月28日、アメリカの航空宇宙局は、「火星に液体の水が流れている新たな証拠を発見したと発表した。火星にはかつて大量の水があり、極地などには現在も氷があることがわかっているが、液体で存在するかは詳しくはなかった。液体の水は生命の存在に欠かせない。
火星を周回している探査機に搭載している赤外線分光計を使い、火星表面の4か所で水と結合した過塩素酸塩があることを示す波長を確認した。濃い塩素は凍りにくくなる。
火星の平均温度は零下約63度。気圧は約100分のⅠと低く、通常の水は0~10度でしか液体で存在できない。過酸素酸塩の塩水であれば零下70度からプラスの24度まで液体で存在しうるらしい。発見地点では斜面の一部に川が流れた跡のような無数の筋。
筋は春から夏に現れ冬に消えてしまうことから液体の水が流れている可能性が高い。地球では液体の水があれば、あらゆるところで生命が見つかるらしい。
「連休は月の砂漠へボクは行く」「わたしは火星のアレス渓谷」 9月の5連休が始まる前の私たち2人は飲みながらこんなことを話した。わたしは以前、火星の地図を見たことがあり、アレス渓谷というステキな名が忘れられなかった。もしアレス渓谷に火星の青年がいて私に笑いかけたら、火星の水は冷たくて少し甘いなどと想像をするのも楽しい。
今日から10月、もう10月に。 松井多絵子
✿ 文芸情報
第47回新潮新人賞 高橋有機子(34)仙台市在住 「恐竜たちは夏に祈る」
受賞作は 「新潮」11月号に掲載される。