えくぼ

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「うたつかい」 より七首

2015-10-20 09:33:03 | 歌う

          ✾ 「うたつかい」 より七首 ✾

 二日前に 「うたつかい」 という歌誌が送られてきた。私のブログを読んでくださる方からである。2015年秋 第24号。毎月100人以上の投稿者、選歌という制度がないため、投稿した短歌は全て掲載されるらしい。24号のテーマ詠「乗り物」、まず乗ってみる。

 ♦ 新しい乗り物として魂はたまたま僕を選んだ、のか  飯田和馬

 ※ 魂という言葉は深刻なので私は詠まない。この1首は軽く詠みながら重い内容である。

 ♦ 坂道で追い風受けたTシャツは船の帆になり少年になる  岡本真帆

 ※ Tシャツは白であろう。坂道の追い風が作者を船に乗る少年に、辺りを青海にする。

 ♦ 二歳には二歳の悪夢、君がまた眠りにつくまでわれは乗り物  金澤和剛

 ※ 二歳は作者の子供だろう。その子を背負う自分の背中を乗り物に例えている。2歳児でも夢は、時には恐ろしいかもしれない。鋭く、新鮮な表現である。

 ♦ 風を切り自転車を漕ぐわたくしはいま新しい風を産みます  キョースケ 

 ※ 風のなか自転車を漕ぐ作者が風になってゆく、シンプルで気持ちのよい1首である。

 ♦ 高速のバスに揺れつつうかうかとはじまりそうな行方を思う  香村かな

 ※ 旅のはじめの期待と不安。バスを空まで走らせてゆくような高速道路は。

 ♦ 「ものわかりの良い」は褒め言葉だろうか おくれてやってくるバスを待つ 小林ちい

 ※ 話せばすぐに「わかった」という人はアテにならない。じっくり考えてほしい。

 ♦ お迎えの馬車は立体駐車場3階Aで待機している  嶋田さくらこ

 ※ 「お迎えの馬車」はシンデレラ物語など、メルヘンの世界の乗り物である。その馬車が立体駐車場3階Aで待機している。この飛躍が鮮やかだ。作者の島田さくらこはツィツターでお馴染み、つばの広い帽子を斜に被り顔が分からない。「おはら風の盆」の女を思わせる。新鋭短歌シリーズで第一歌集『やさしいぴあの』を刊行している。「うたつかい」の編集長。
             

     昨日買ったカボチャを切ったら私に馬車が来ないような気がして、、、。

                         10月20日 松井多絵子