「小島なおの飛ぶ言葉たち」
6月17日朝日夕刊の ✿ あるきだす言葉たち 小島なお 「神輿」 10首である。小島なお が神輿とは。ミスマッチ。彼女にはフェスティバルが似合う。しかし、一連を読み彼女はオシャレな歌を詠みたくない、いわゆる骨太の歌を詠みたくなってきた、ように私には思えた。
✿ 霧雨に煙る鴉の眼のなかに電信柱が立っているなり
この歌が老人の多い歌会に出詠されたら、「霧雨に煙る鴉の「鴉」は「我」の誤植ではないですか?」 と聞かれるかもしれない。あるいは 「鴉とは唐突ですね」、「意表をつく表現ですよ」 などと。 鴉の視力など私は考えたことがなかった。人間の眼と機能が違うとしたら視界も異なるだろう。電信柱の太さや色も私たちの見るものと違うであろう。
✿、おおいなる裸足の足が上空を跨ぎゆきたり祭りの前夜
五月中旬の浅草の三社祭り前夜の歌らしい。明日は晴れて欲しいと願いながら見上げる夜空に
神輿を担ぐ足が過ぎる。途方もなく大きな足、はだしの足。いよいよ三社祭りだ、興奮している小島なお。
✿ 跳ね揺られ担がれてくる神輿なり君への愛の強さ疑う
力強い上句からはじまる、この歌は 「神輿」10首の最後の歌である。君への愛を謳歌していると思っていた読者は、結句で見事にはぐらかされてしまう。 君への愛の 「強さ疑う」 という屈折した結句。1986年生まれの小島なお、20代もそろそろ終わる。大人の女になってきたのだ。
小島ゆかり先生 なおチャンはもう新人ではありませんね。先生は安心してオバアサンになれますよ。
6月21日 松井多絵子