「殻ちゃん ~ 22回」
中学の入学式が終わり、サクラも終わった。受験校なのに神山学園はノンキだ。はじめの2週間は午前中だけ授業。殻ちゃんは自宅で昼食。アキといっしょに甘口のカレーライスを食べている。
アキ ● 「ねえ、隣の席の飛鳥って、どんな子?」
殻 ● 「ふつうの女の子だよ。お父さんは社長だってさ。小さな会社の」
アキ ● 「前の席の さやか って子は?」
殻 ● 「可愛い子だよ。お父さんはテレビ局に勤めてるらしい」
アキ ● 「足立 塔 って男の子は?」
殻 ● 「あゝ、足立タワー?クラスで一番ノッポ。彼のママはテレビや雑誌によく出てる足立ユイだって」
やっぱりユイの息子なんだ。お父さんは?と聞くのをためらい、黙りこむアキ。なぜかユイのことを水口に話していない。話したくないのだ。ユイを思い出さないでほしい。忘れてほしいのだ。食後はアイスクリームを。 、カレーで熱っぽくなった口腔をひんやりさせる甘いクリーム。
殻ちゃんは自分の部屋で本を読んでいるらしい。3畳の納戸を改装したベッドと机と本棚だけの部屋で。
アキはテレビを 、いきなりユイの顔、画面いっぱいにユイの顔。「この夏の流行色は黄色でしょうね。黄色の服を着れば元気になりますよ」と。ユイ自身も黄色いブラウスを着てゴールドのネックレス。彼女こそ黄色の女。傍らにいると圧倒される、眩しい女。ユイはアキを不在にし、陰にもしてしまう。 アキはテレビを消す。そして林真理子の語録を思う。❤ 女性がキレイでいるためには賞賛の言葉がほんとに大きい。 ※ アキよ、あなたは殻ちゃんのように本をどんどん読みなさい。春はすぐに去りますよ。
もうじき今年の前半が終わりますね。今日の午後は私も読書、読書、読書。
、 6月17日 松井多絵子