「突然美女に」
✿ ひとときの美女なり我は緑陰の池の水辺に妖しくただよう 松井多絵子
天声人語サマには申し訳ないが、近頃のわたしは朝刊は「マイスト」から。朝起きてすぐ読み、朝食の後に❤「こころ」、そして「天声人語」。でも「天声人語」から朝がはじまる老女もいますよ。「❤マイストって林真理子の連載{マイストーリー}のことでしょ。あの小説は軽いわよ」と老女は言う。私は軽いとは思わない。表現は軽いが内容は重いのではないか。
今日は、出版社で自費出版担当の大田が、芥川賞を20年前に受賞した作家と会う。昔は美人だった漆多香子の81歳の母親が本を出したがり、困っているらしい様子。今日はここで終わる。わたしは自分史を書きたがる老女を何人も知っている。理由は様々だが、平均寿命に近づくと、自分の人生の総決算をしようとする。赤字でなく黒字にしたい。まあ、いい人生だったと思いたいのだ。でも恨み辛みも書き残したい。叶わなかった無念も書き残したい。作家として通用しない人の本を作ってくれるのは自費出版。果たして読者がいるだろうか。
「マイスト」を読み終えて新聞を繰ると ❤ 『突然美女のごとく』 林真理子の本の広告である。紙面の六分の一の大きさ。♠ 元気と野心をチャージしてくれる、マリコのビューティ・ダイアリー。つねに女の視線を集める、集めることができるのだ林真理子は。
♠ 美人度は並の上が幸せゾーン
自分は並の女だと思っている女は多い。わたしもその一人だ。並の女だと思えば安心する。上質の女になるには並々ならぬエネルギーが要る。しかし「並の上」なら少しがんばればなれるかもしれない。それなら私だってできる。と思わせるのが林真理子だ。だから「林真理子は並の女のリーダーだ」 でもねえ、並の女以上になり 『突然美女のごとく』になれるとしても「ごとく」ですからね。「突然美女」は泡のよう消えてしまうのではないかしら。
夕ぐれになり並の女の女になりました。ではまた明日 6月4日 松井多絵子