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地震予測と対策(6)

2023-03-10 00:00:00 | 地震
 トルコ南部ガジュアンテップ北西で2月6日午前4時17分、マグニチュード(M)7.8の地震があり、さらに6日午後1時24分にはM 7.5の2回目の地震が発生して、多くの建物が崩壊し多数の死者を出したが、この地震から1か月が過ぎた。

 地震発生以降、発表される被害者数は日々増加していったが、3月6日現在のまとめによると、次のようである。


トルコ・シリア地震の被害(2023.3.6 新聞記事から)

 トルコ周辺には複数のプレートが存在し、それぞれの活動によって平時から地下に複雑な力が加わっている。6日に発生したM 7.8の地震はトルコの国土の大半がのったアナトリアプレートと、その南東側にあるアラビアプレートの境界部の東アナトリア断層で発生したと考えられるという。 

 東アナトリア断層ではプレート間のひずみを解放するため、左右にすれ違うように断層が動いた。一方、この地震の約9時間後に北北東側で発生したM7.5の地震は、先に発生した地震の影響で付近の断層の活動が誘発されたとみられる。

 いずれもプレート境界が内陸部の都市直下にあり、そこで大地震が起きたために被害が大きくなってしまった。

 今回トルコで発生した地震は、内陸のプレート境界の地震ということになるが、1923(大正12)年の関東大震災の地震(M7.9)は一部ではあるが震源域が内陸に存在するプレート境界型で、この点で今回の地震と似ているとされる。

 死者数は3月6日現在、隣国のシリアと合わせて5万人を超えており、2011年の東日本大震災(死者1万8440人)を大きく上回る大災害となった。

 一方、ニュースによると建物の崩壊による圧死者が多く出ているものの、火災による死者はほとんど報じられていない。地震のマグニチュードが同規模の関東大震災では多くの焼死者を出し、死者数が10万5,385人を数えたのとは状況が異なっている。当時の日本では建物の耐震強度が十分でなく、かつ木造家屋がほとんどであった。

 トルコでは、次の表に見られるように、これまでも度重なる地震発生による建物被害が起きており、そのため耐震基準がより厳しく変更されていたにもかかわらず、それが守られていなかったために被害が拡大したと伝えられている。

近年の日本とトルコの地震被害の比較

 トルコは日本と同様、地震多発国である。ニュースでは、天井・床が重なって潰れる パンケーキクラッシュと呼ばれる崩壊の映像が流されているが、こうした現象が死者数の増加につながったと考えられている。
 
 参考までに、明治以降の日本、および1950年以降の世界の地震被害者発生のワースト10をみると次のようである。


明治以降の日本の地震による死者数ワースト10


1950年以降の世界の地震による死者数のワースト10

 これを見ると、日本では関東大地震の被害が際立っている。首都圏の住宅密集地を襲う地震では建物の崩壊とそれに伴う火災が死者数増加につながった。
 他方、東北地方の太平洋側では、プレート境界・海洋型の巨大地震に伴う津波による溺死者が増えている。
 
 世界の地震被害のワースト10では、中国・唐山の被害の大きさが際立っているが、これは唐山市が当時有数の工業都市であり人口が多かったことおよび、耐震性の低い煉瓦造りの家の下敷きとなって被害者の多くが命を落としている。

 2番目に大きな被害を出したハイチの場合、地震の規模は比較的小さいが、震源はハイチの首都ポルトープランスの西南西25km、深さは13kmであり、建物被害が大きかった。ここでもパンケーキクラッシュが起きていた。

 3番目のスマトラ島沖地震では津波による溺死者がほとんどとされる。

 トルコでの地震被害の惨状が伝えられると、我々日本人としてはどうしても首都直下地震や南海トラフ巨大地震のことを連想してしまうのであるが、そんな中、NHKが南海トラフ地震に関する番組を2夜連続で放送した。

 3月4日(土)の放送は「南海トラフ巨大地震 第1部ドラマ(前編)」と「南海トラフ巨大地震 第1部ドラマ(後編)」、翌3月5日(日)には「南海トラフ巨大地震 第2部 “最悪のシナリオ”にどう備えるか」であった。

 近い将来その発生が懸念される首都直下地震や南海トラフ巨大地震は、避けることができないが、予測し対策をたてることで、被害を最小限に食い止めることができる。
 
 番組の中でも、高知県黒潮町に建設されている津波避難タワーが登場するなど、被害が想定される地域での具体的な取り組みを目の当たりにすることができた。

 こうした津波避難タワーは、内閣府の調査によると、日本国内では2021年4月までに23都道府県で502棟建てられ、東日本大震災前(45棟)の11倍に増えている(ウィキペディア「津波避難施設」から)。

 その高知県黒潮町のホームページを訪れると、3月11日の東日本大震災の日に合わせて、次のようなイベントの案内が掲載されていた。
 

高知県黒潮町のホームページに掲載されている、3月11日の東日本大震災の日のイベント案内 

 黒潮町に限らず、巨大地震による被害が想定される地域では、地域ごとの特徴に合わせた防災対策が進められているが、国レベルでの想定被害と対策について改めて見ておこうと思う。

 わが国には国土強靭化基本計画というものがある。これは、平成23年(2011年)に発生した東日本大震災を受け、平成25年(2013年)に施行された国土強靱化基本法に基づき、大規模災害からの被害の最小化に向けた重点施策を盛り込んだ計画のことであり、平成26年(2014年)に策定され、おおむね5年ごとに見直される。

 対象としている大規模自然災害はもちろん地震に限られるものではないが、この中には首都直下地震と南海トラフ巨大地震による被害想定が示されていて、次のようである。


首都直下地震と南海トラフ巨大地震による被害想定(内閣官房HPより)

 改めて、今後予想されるこの2つの巨大地震による被害想定と、過去の巨大地震被害との比較をすると次のようである。


今後予想される2つの巨大地震による被害想定と、過去の巨大地震被害との比較

 この数字は、これまでにも新聞やTVなどを通じて何度か目にする機会があったが、余りの大きさに呆然とし、それ以上想像力が働かなくなってしまう。  

 しかしこれらへの対策は着実に進めなければならない。前回、このブログで確認したが(2023.2.10 公開)、地震本部の発表している内容から得られる南海トラフ巨大地震の発生確率が計算上最も高くなる年は2027年であり、それほど時間は残されていない。

 南海トラフ巨大地震による被害は国難レベルといわれている。被災後にどのように国家として復活を遂げていくのか、事前の対策により大きく変わるとのシミュレーションがある。

大規模自然災害発生後の経済社会の回復イメージ(内閣官房HPより)

 ここで示されている回復力を、官民を問わず地域レベル、国家レベルで構築していかなければならないが、先に挙げたNHKのTV放送「南海トラフ巨大地震 第2部 “最悪のシナリオ”にどう備えるか」の中でも同様の取り組みが紹介されていた。

 政治学者の姜尚中氏が2022年12月18日放送のTV番組で、防衛費増税問題についての議論の中で、次のような発言をしたと話題になったことがあった。防衛費問題もまた国土強靭化に関係している。異質なものではあるが、国民の経済活動や、生命・財産を守るという意味では変わるところがない。 

 「・・・姜氏は『国民の信を問うべきですよね。解散総選挙をして』と提案した。続けて防衛費がGDPの2%を目指していることについては、同様にGDP比2%程度のドイツを引き合いに出し『この100年間、確かマグニチュード6以上の地震は1度も起きてないんですよ』とコメントした。
 いきなり地震の話題となり、司会のS氏は思わず『ん、どういうこと?』。姜氏は『マグニチュード6以上の地震は100年間、ドイツでは起きてなくて』と繰り返し、S氏は『ええ、ですから』と促した。
  姜氏は『それはプレートが1つしかないですから。ユーラシアプレートっていうね。日本の場合は4つのプレートが重なってるわけで、世界で起きている地震の10%は日本で起きてるわけです』と続けた。S氏は『地震のことと、今の(防衛費の関係は)』と姜氏の言いたいことが理解できない雰囲気。 
 姜氏は『大いに関係するでしょ。もしウクライナのように持久戦になった時に、地震が起きた場合どうするんですかと』と“戦争となった場合の地震”に言及した。続けて『陸海空の一体化で司令部を置くと言ってるわけだけど、東京に置いて、大地震が起きたらどうするのですか? その時に自衛隊を使わなくてどうやって復旧できるんですか』と持久戦から指令部問題に飛躍。S氏は『うーん』とうなるばかりだった。
  姜氏は『日本はドイツなんかに比べてはるかに脆弱性が高いわけで、そのためには今何をすべきかっていうと、国土の強靱化ですよ。数兆円かけて国土を強靱化して、ゼネコンももうかるけど、地方ももうかるんですよ。その中で子どもにしっかりと援助をしていくべきで、それをやらずに耐震構造がメチャクチャな家を建てておいてそれを守るために大砲を持った方がいいとか、機関銃を持った方がいいって、やっぱり本末転倒ですよ』と今度は建築基準にも言及しながら独自の理論を展開。S氏は『あぁ、そうですか』と返答するのみだった。・・・」

 さて、どうする日本。


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