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地震予測と対策(7)令和6年能登半島地震

2024-01-05 00:00:00 | 地震
 少し遅めに届いた年賀状を読み始めた時、携帯電話がけたたましく鳴り響き、地震発生を伝えた。まもなく横揺れが到達し、おろおろと何もできないうちに2階で「こけし」の倒れる音が響いた。

 TVをつけると、震源地は能登半島の輪島付近とのことで、ゆっくりとした横揺れがしばらく続いてやがて収まり、転倒したこけしも4分の1程度で、他にはそれ以上の被害はなかった。当地の震度は4と発表された。

 ショップのガラス器は、冬季休業期間中は棚から下ろして、箱詰めしておいたので、こちらは心配なかったが、念のため車でショップの点検に出かけた。

 途中、車のナビを操作すると地震ニュースが流れ、大津波が発生するので、急いで高いところに非難するようにと、女性アナウンサーが繰り返し絶叫する声が続いた。まだまだ余震が続いていることをうかがわせた。

 ショップは何事もなく、詰め残してあった、壺や、ワインのボトルなども転倒することなく、まったく影響を受けた様子はなかった。

 ほっとして帰宅し、再びTV放送を見たが、津波警報は発令されたままで、余震の大きさが実感された。

 今回震源地となった能登半島では、一昨年の2022年6月19日15時08分頃、珠洲市付近でマグニチュード5.4の地震が発生し、この地方を最大震度6弱の揺れが襲っている。そして、その後もこの地方では繰り返し地震が発生していた。 

 この地震がきっかけとなり、地震とその対策について、2022年6月24日以来一連のブログ記事を書くようになったのである。

 ただ、珠洲市付近では群発地震が発生しているものの、規模が比較的小さく、その後それほど大きい地震が発生するといった危機感に乏しかったため、ブログでは主にマグニチュード7クラスの首都直下地震とマグニチュード9クラスの南海トラフ地震の発生メカニズムについて取り上げ、政府から発表されている地震発生確率の計算方法などについて調べてきた。

 しかし、今回1月1日に起きた能登地方地震の規模は、マグニチュード7.6、最大震度7に達するものであり、国内で震度7が確認されたのは、平成30(2018)年9月の北海道胆振東部地震以来で5年ぶりのもので、震度7が新設された昭和24(1949)年以来、6回目のものになった。

 石川県能登地方では、2018年頃から地震回数が増加傾向となり、2020年12月から地震活動が活発になっている。気象庁によると、2020年12月以降、2023年6月8日8時の時点までに震度1以上の揺れを437回観測している。

 今回1月1日に発生した地震はこうした一連の地震の中でも最大のものとなった。この他、2023年5月5日に発生したM6.5の地震では珠洲市で最大震度6強を観測、上記の2022年6月19日に起きたM5.4の地震では珠洲市で最大震度6弱の揺れを観測、2021年9月16日には珠洲市で最大震度5弱を観測するM5.1の地震が起きている。一連の地震活動は、東西約15km、南北約15kmの領域で発生しており、特に北側から東側にかけての領域で地震活動が活発とされる。

 これら群発地震の詳しい原因はわかっていないが、2022年の地震当時の、京都大学の西村卓也准教授の説明によると、海側のプレートと陸側のプレートの隙間にしみ込んだ水の一部が上昇し、地下十数キロメートル付近にたまって、周囲の岩盤に力を加えたり、しみ込んで地震を起きやすくさせていると解説している。

 金沢大学の平松良浩教授もまた今回、地下から上昇した流体により地殻が膨張している可能性があると指摘しているし、東京工業大学の中島淳一教授は、同地域における過去の地震の伝播を解析した結果から、やはり半島地下に水が広く存在していると推測している。

 2023年4月に地震調査研究推進本部地震調査委員会が発表した地震活動の評価でも、能登半島での活発な地震活動について、『地殻変動域の変化、地震活動の浅部への移動、電気伝導度の分布などから、今回の活動には、流体の移動が関与している可能性がある』としていた。(ウィキペディア 能登群発地震より抜粋)

 今回の「令和6年能登半島地震」の震源地と地震の規模は次のようである。


令和6年能登半島地震の震源地(ウィキペディアより)

令和6年能登半島地震の本震から約1日間の余震の発生時刻とマグニチュードの推移(日本気象協会資料を参考に震度4以上をグラフ化)

 この中から震度5弱以上の地震について、その震源分布を見ると次のようであり、能登半島周辺の比較的広い範囲にあることが分かる。


令和6年能登半島地震の本震発生から約1日間の震度5弱以上の地震の震源地分布(黒Xは本震 日本気象協会資料を参考に作図)

 ところで、今回の令和6年能登半島地震について、私が購読してきている「地震予測メルマガ」がどのように予測していたか、確認しておこうと思う。

 この地震予測メルマガは毎週1回水曜日に公開されていて、今回は2023年12月27日発行分が地震発生直前のものである。この地震予測メルマガでは、「ピンポイント予測」として、「マグニチュード6クラス以上の地震が1か月以内に起こる」ことを予測して公表しているが、今回の令和6年能登半島地震の予測はできなかったため、翌週地震発生後に次のようなコメントを載せた。

 「・・・弊社では複数の観測データに異常が現れましたので、11月8日から29日までピンポイント予測を発出しましたが、 この段階で地震は現れませんでした。 その後12月に入ってからもう一度観測データに異常が現れましたので、ピンポイント予測を出すかどうか検討しましたが、 規模はそれほど大きくならないと判断し、12月20日号にてM5クラスの地震が起きる可能性があるというコメントを掲載しました。
 結果としてM7.6の大地震が発生しました。 大きな地震ほど前兆現象から地震発生まで時間がかかる傾向がありますが、非常に難しい判断となりました。
いずれにしてもピンポイント予測を発出できず、加入者様のご期待にそえなかったことを深くお詫び申し上げます。(2024年1月3日発行分より) 」

 地震予測メルマガは国土地理院の電子基準点データを主な情報源として、その他の地震予測関連情報を加味して予測を行っているとされ、ピンポイント予測ではマグニチュード6クラス以上を予測対象としているので、今回のマグニチュード7.6に対しては、より大きな変化が捕えられていなければならないが、そうした兆候は見られなかったようであり、地震の直前予測は困難と言わざるを得ない結果である。

 1月3日の購読紙には、この能登半島地震のニュースが大きく報じられるとともに、そのメカニズムに関連して次のような記事が見られた。

 「・・・政府の地震調査委員会は2日、臨時会を開いた。盛山文部科学相は会議の冒頭、『できるだけ早く、どのような地震が発生したのかを正確に把握し、今後の見通しを得ていくことは、二次被害の防止や今後の災害対応に資する』と強調。『データが現状では十分収集できているとは言い難いが、最善を尽くして科学的な評価をお願いしたい。』と話した。
 2日の臨時会では、今回の地震の特徴やメカニズム、能登地方で相次いでいる一連の地震活動との関連などについて議論する。」

 また、東北大学の遠田晋次教授(地震学)の話として、「最悪のシナリオの地震が起きてしまった。」と紹介し、国土交通省の有識者会議が2014年にまとめた報告書について次のように紹介している。

 「(能登)半島北側には北東から南西に長さ100キロメートル余りの活断層帯がある。その全域が連動してずれ動く『最悪シナリオ』では、今回と同じM7.6の地震が起きると予想されていた。・・・M7.6の地震発生後は、幅130キロメートルの範囲で地震活動が活発化。遠田教授は『活断層帯が活動した結果、延長線上にある周辺の断層も活発になっている』とみる。今後、さらに広範囲に活動が及ぶ可能性もあるという。
 半島一帯では、2020年12月以降、今月2日までに震度1以上の地震が700回以上発生。地下に存在する水のような流体が、周辺の岩盤を滑りやすくしているのが一因とみられている。群発地震が長期に及んだ影響で、地下の岩盤にかかる力のバランスが変化し、活断層帯が刺激された可能性もある。」

 「能登半島周辺以外にも、日本海側の沿岸近くの海域には、津波をもたらす大規模地震を起こすような断層が存在する。国交省の有識者会議では、少なくとも60か所の活断層が存在し、数メートルから12メートルの津波をもたらす可能性があると指摘している。ただ、、こうした断層による地震の発生確率については評価が遅れている。
 政府の地震調査研究推進本部は22年、日本海側の海域活断層による地震の発生確率の評価の一部を公表。現在までに公表されているのは、九州から中国地方にかけた『南西部』のみで、今回の地震の起きた海域は評価が公表されていない。」
 
 この委員会に関して、日経新聞は次のように伝えている。 
 「政府の地震調査委員会(委員長・平田直東大名誉教授)は2日、臨時会を開き、最大震度7を記録した能登半島地震の分析や今後の動向について検討した。国は主要な活断層について長期評価を公表しているが、今回地震のあった断層は対象外だったと明らかにした。
 平田委員長は『(長期評価は)慎重にやっており、非常に時間がかかる』とした上で評価していない断層で大きな地震が起きたことについて『非常に残念だ。もっと早く評価しておくべきだった』とも話した。
 世界でも有数の地震大国の日本では各地に断層が存在し、リスク評価が追いついていない側面が浮き彫りになった。今後、政府の長期評価のあり方も問われそうだ。」

 この地域での地震発生のメカニズムが分からない限り、その発生確率もまた求めることができないのであるが、「海側のプレートと陸側のプレートの隙間にしみ込んだ水の一部が上昇し・・・」という指摘があるので、次図から判断するとユーラシアプレートおよび北米プレートの2枚の陸側のプレートの下に潜り込む太平洋プレートおよびフィリピン海プレートの先端付近で起きている地震と考えられ、そうだとすれば、今最も懸念される南海トラフを震源とする超巨大地震との関連もあるのではと思われ、今後の発表に注目したい。(赤の点線は資料図に筆者が追記したもので、地震発生メカニズムとは直接関係しない)




 

 

 





 

 

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