ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

山の田ダム

2019-07-29 23:37:02 | 長崎県
2019年7月14日 山の田ダム
 
山の田ダムは長崎県佐世保市桜木町の佐世保川水系佐世保川上流部にある佐世保市水道局が管理する上水道用水目的の用アースフィルダムです。
佐世保は1889年(明治22年)の海軍鎮守府開庁をきっかけに軍港都市として町が開け、その性格上まず海軍水道が整備され1899年(明治32年)に湧水を利用した岡本水源地が完成、次いで水道管設置が進められ1901年(明治34年)に近代水道としての海軍水道が開設されました。
日清・日露戦争を経て佐世保の発展は著しく、1908年(明治41年)に初の本格的水道施設として完成したのが山の田ダムと山の田浄水場です。 
終戦後、海軍の水道事業はすべて市に移譲され、現在も日量最大6300立米の上水道用水を供給する佐世保市水道の主要水源地となっています。
また山の田ダムは水道目的のアースフィルダムとしては、長崎市の本河内高部ダムに次ぐ歴史を誇るとともに、竣工当時は最も堤高の高いアースフィルダムとなっていました。
山の田ダム及び浄水場は土木技術的価値を評価して土木学会選奨土木遺産および近代土木遺産(山の他ダムはBランク)に選定されています。
 
佐世保市中心部から国道204号線を北上し、春日町交差点を右折すると山の田浄水場正門前に到着します。
ここから佐世保川沿いの道を進むと貯水池に沿った遊歩道入口となります。
残念ながら山の田浄水場や山の田ダム敷地は関係者以外立ち入り禁止のため外から見学するしかありません。
この写真は佐世保川に架かる橋から
奥に山の田ダムの堤体が見えます。
 
遊歩道を進むと左手に堤体が見えてきます。
 
望遠で。
山の田ダムは2000年(平成12年)に大規模な改修が行われ、周辺整備も進められましたが一般公開はされていません。
 
手前の水路はダム左岸洪水吐の導水路で、カスケード式になっています。
もっと全体を撮りたいのですが草木が伸びてこれが精いっぱい。
 
遊歩道とダムとの間は樹林がびっしりと繁り、なかなか視界が得られません。
樹間から何とか上流面を撮ることができました。
 
明治期のダムらしい円筒形の取水設備。
今も現役なんでしょうか?
 
左岸に円形越流式の洪水吐があり越流堤下流側が階段状になっています。
 
 
遊歩道をさらに進みますがこれ以上ダムが見える場所はありませんでした。
今度はダム右岸に行ってみます。
こちらも門扉が閉められ塀の外から眺めるのみですが天端ははっきりと見ることができました。
 
長崎の本河内ダムに匹敵する山の田ダムおよび貯水場で、文化庁から重要文化財に指定したいとの打診もあったそうですが、実際の水道業務に支障が出るとの理由で辞退したそうです。
団体だと事前予約すれば見学もできるようですが、遠方からのダム巡りとなればそれも難しいところです。
 
2573 山の田ダム(1491)
長崎県佐世保市桜木町
佐世保川水系佐世保川
24.5メートル
310メートル
640千㎥/551千㎥
佐世保市水道局
1908年

菰田ダム

2019-07-29 11:56:13 | 長崎県
2019年7月14日 菰田ダム
 
菰田ダムは長崎県佐世保市菰田町の相浦川水系の小川内川にある佐世保市水道局が管理する上水道用水および灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
佐世保は1889年(明治22年)の海軍鎮守府開庁をきっかけに軍港都市として開け、1901年(明治34年)にまず海軍水道が整備され、遅れること6年目の1907年(明治40年)に全国10番目の近代水道として佐世保市水道事業が創設されました。
当初の佐世保市水道は海軍水道からの分水を受けてのものでしたが、その後の町の発展とともに独自の水道施設の確保に迫られることになります。
まず1926年(大正15年)に市独自の山の田第二浄水場が完成、その後1935年(昭和10年)に建設が始まり1939年(昭和14年)に初の市独自水源として完成したのが菰田ダムです。
終戦後、海軍の水道事業はすべて市に移譲され佐世保市水道局が事業継承します。
菰田ダムは上水道に相浦川流域への灌漑用水源も兼ねることになりますが、現在も日量最大1万2600立米の上水道用水を供給すし佐世保市水道事業の主要水源となっています。
菰田ダムの堤高40メートルは戦前の上水道ダムとしては千苅ダム小ケ倉ダムなどには僅かに及びませんが、堤体積13万5000立米は断トツのトップとなっています。
またその土木技術的価値を評価してBランクの近代土木遺産に選定されています。
 
菰田ダムは県道11号沿いにあり、ダムの敷地は立ち入り禁止のため右岸から撮影するのみですが撮影ポイントは意外にたくさんあります。
堤高40メートル、堤頂長387.7メートル、堤体積は13万5000立米に及び戦前の上水用コンクリートダムとしては屈指の規模を誇ります。
前日の雨を受けてクレストゲートから激しく越流しています。
 
通廊入口。
神社風の造りは珍しい。
 
アングルを変えて。
 
クレストゲートをズームアップ。
 
ゲート上部の高欄には装飾が施されているようです。
 
曲線重力式と言うほどではありませんが、堤体は緩やかに湾曲しています。
雨後の曇天という気象条件から堤体はより黒ずんで見え、圧倒的な存在感と重厚感を醸し出しています。
 
堤頂長387.7メートルの堤体は対岸の樹林のはるか先まで続いているようです。
 
同じようなアングルの写真ばかりですがついつい何枚もシャッターを切ってしまいます。
 
この高さで撮ると堤体が湾曲しているのがよくわかります。
 
天端は車1台が通れるような幅で、アスファルトにはタイヤ痕のような跡も見られます。
 
同じ戦前のダムでも長崎市内の石積堰堤とは全く異なる表情の菰田ダムです。
文字通り漆黒の壁といった風でした。

2598 菰田ダム(1490)
長崎県佐世保市菰田町
相浦川水系小川内川
AW
40メートル
387.7メートル
1475千㎥/1462千㎥
佐世保市水道局
1939年



樋口ダム

2019-07-29 10:05:45 | 長崎県
2019年7月14日 樋口ダム
 
樋口ダムは長崎県北西部の佐世保市鹿町町下歌ヶ浦の樋口川水系樋口川にある長崎県土木部が管理する目的重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の小規模ダム建設事業である生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、樋口川の洪水調節、安定した河川流量の維持、鹿町町下歌ヶ浦地区簡易上水道への上水道用水の供給を目的として1998年(平成10年)に竣工しました。
 
ダム下から
自由越流式クレストゲート2門、自然調節式オリフィスゲート1門のゲートレスダムです。
前日の雨で水位が上昇しオリフィスから放流しています。
 
左岸から下流面。
 
ダムの銘板と諸元表プレート。
 
減勢工と副ダム
右手は放流設備。
 
天端からは僅かですが鹿町湾が見えます。
 
総貯水容量26万9000立米の小さなダム湖。
インレットには親水公園が整備されていますが、例に洩れずやや荒れ気味です。
 
天端は車両通行可能
右手はエレベーター棟、左奥には立派な管理事務所。
 
管理事務所から湖面に階段が下りています。
巡視艇用の浮き桟橋でもあるのが普通ですがなにもありません。
 
インレットの親水公園にある金箔文字の竣工記念碑。
 
上流面
クレストゲートの間に流木除けのゲージが付いたオリフィスゲートがあります。
こちらから見ると管理事務所はまるで船の舳先のようなデザイン。
 
(追記)
樋口ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

3020 樋口ダム(1489) 
長崎県佐世保市鹿町町下歌ヶ浦
樋口川水系樋口川
FNW
30メートル
96メートル
269千㎥/263千㎥
長崎県土木部
1998年
◎治水協定が締結されたダム

つづらダム

2019-07-29 01:30:00 | 長崎県
2019年7月14日 つづらダム
 
つづらダムは長崎県北西部の佐世保市小佐々町田原の小佐々川水系つづら川にある長崎県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の小規模ダム建設事業である生活貯水池事業の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、つづら川および小佐々川下流域の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、小佐々地区への上水道用水の供給を目的として2004年(平成16年)に竣工しました。
ダム湖上流は親水公園として整備され毎年6月上旬には蛍の大乱舞を求めて多くの観光客が訪れます。
 
ダム下は草木が茂りダム全景をすっきり見ることができません。
自由越流式クレストゲート1門だけの非常にシンプルな構造で、クレスト越流部に切れ込みが入り非常用、常用洪水吐を兼務しています。
 
右岸から下流面
小さなダムですがエレベーター棟があります。
 
クレストゲートをズームアップ
この切れ込みにより非常用、常用洪水吐兼用となっています。
 
天端は車両通行可能。
 
右岸天端に填め込まれたダム銘板およびダム諸元表。
 
総貯水容量36万5000立米のダム湖。
ダム湖上流は親水公園として整備され長崎有数のホタル観賞地として毎年6月上旬には多くの鑑賞者が訪れます。
 
洪水吐導流部と副ダム
副ダムの下流には洗掘を防ぐためブロック工が敷かれています。
左手は放流設備。
 
上流面
手前は取水設備、奥の管理事務所は2階のガラス窓が特徴的なモダンな建屋。
 
上流からもクレストゲートズームアップ。
ゲートの戸当たりは試験湛水時の水止めの板の填め込み用。
 
ダム湖上流から。
 
(追記)
つづらダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

3095 つづらダム(1488) 
長崎県佐世保市小佐々町田原
小佐々川水系つづら川
FNW
21.6メートル
96メートル
365千㎥/353千㎥
長崎県土木部
2003年
◎治水協定が締結されたダム