加藤総務課長は階段を使い七階に上がりました。
日頃運動不足を感じているためで、二基あるエレベーターは下から上がってくる時間も節約できる、と自負していますが、果たして七階まで上がると簡単に息が切れていました。
「ちょっとは運動になっただろ」
苦笑しながらドアに手をかけました。
ふつう部屋に入る場合ノックが礼儀でしょうが、礼儀なんかまったく気にしない鬼塚専務が来てつい染まったようです。
少々荒く開けた設計室は閑散としていました。
六階の事務所と同じ間取りで収容している人数は5分の一です。
広いフロアーに白い製図用機械が点在しています。
一目で見渡せないのが加藤課長には不満でしたがこの営業所の責任者であってもこの七階は治外法権になっていました。
通路♪このワンフロアのはずが製図用機械のお陰で通路と化している間を潜り抜けて行かなければなりません。「まるでかくれんぼだなぁ」舌打ちをしながら進みます。
「いったい、ここはどうなっているんだい…」広いフロアーが細分化されていてかなり歩いたはずが誰にも出くわさないからです。
「こんなことならまともな仕事なんかできないんじゃあないか…」
独り事をぶつぶつ言いながらなおも進みます…
「誰?」突然頭の上から 声がありました。
誰って…振り返り見ると黒いものがゆらりと加藤課長の前にさがりました。
「うわぁ~」
突然鼻の先にフワッと現れたのは髪の毛でした。
「ごめんなさい!」
井上さんは資料を整理しているところで、ちょうど加藤課長の通りすぎたうしろにいました。
このフロアーは製図用機械ごとに区割りしてありました。
それぞれの担当者ごとに区割りした辺りに机を構えています。
馴れない加藤課長は機械の裏側ばかり歩いていたので誰にも出くわさなかったのですね。
「え~と君は…」
見たことはあっても何せ200人を越える大所帯で派遣社員も含めて顔と名前の一致しない人がたくさんいました。
「私ですか…」
井上さんは髪を撫であげながら「井上です」と短く答えました。
「ああ井上さんですか…」
加藤課長は笑って誤魔化しましたがこれが例の井上って女か…
つくづく美人だなぁ♪と思いました、
そう女優の小雪さんに似ています。
なるほど河田部長が夢中になるはずです。
肩まである黒髪…潤んだ瞳につんとした鼻総じて大振りの肢体がアメリカ育ちを思わせました。
ひょっとしてハイヒールを履けば河田より背が高いかもね(笑)
独り含み笑いをしていると…井上さんは深い眼差しを加藤課長に向けていました。 (こりゃあヤバイぜ)加藤課長は内心ドキッとしました。この瞳には罪がありすぎるぜ。こんな憂いを含んだ瞳に見詰められて知らん顔出来る男なんていやしないよ(苦笑)
「あの…誰かを…」
井上さんは加藤課長に声をかけようとしたところで、河田部長がひょっこり顔を出しました。
「おう~加藤かい」
何が加藤だい(怒)
のんびりした口調に加藤課長は気勢を削がれていました。
あれ…俺はなんで河田部長を探していたんだろう♪
「どうした!」
のぞき込んでいる河田部長はあくまでも穏やかな表情でいました。 「は、はい」
ようやくお役目を思い出しました。
「専務がお呼びですが…」
アメリカ出張の件で河田部長を探してこいと言われていたのですがいつもの、のんびりしたペースに加藤課長はすっかり狂わされました。
まぁ狂わされたのは、他にも原因があったのですが…(笑)
日頃運動不足を感じているためで、二基あるエレベーターは下から上がってくる時間も節約できる、と自負していますが、果たして七階まで上がると簡単に息が切れていました。
「ちょっとは運動になっただろ」
苦笑しながらドアに手をかけました。
ふつう部屋に入る場合ノックが礼儀でしょうが、礼儀なんかまったく気にしない鬼塚専務が来てつい染まったようです。
少々荒く開けた設計室は閑散としていました。
六階の事務所と同じ間取りで収容している人数は5分の一です。
広いフロアーに白い製図用機械が点在しています。
一目で見渡せないのが加藤課長には不満でしたがこの営業所の責任者であってもこの七階は治外法権になっていました。
通路♪このワンフロアのはずが製図用機械のお陰で通路と化している間を潜り抜けて行かなければなりません。「まるでかくれんぼだなぁ」舌打ちをしながら進みます。
「いったい、ここはどうなっているんだい…」広いフロアーが細分化されていてかなり歩いたはずが誰にも出くわさないからです。
「こんなことならまともな仕事なんかできないんじゃあないか…」
独り事をぶつぶつ言いながらなおも進みます…
「誰?」突然頭の上から 声がありました。
誰って…振り返り見ると黒いものがゆらりと加藤課長の前にさがりました。
「うわぁ~」
突然鼻の先にフワッと現れたのは髪の毛でした。
「ごめんなさい!」
井上さんは資料を整理しているところで、ちょうど加藤課長の通りすぎたうしろにいました。
このフロアーは製図用機械ごとに区割りしてありました。
それぞれの担当者ごとに区割りした辺りに机を構えています。
馴れない加藤課長は機械の裏側ばかり歩いていたので誰にも出くわさなかったのですね。
「え~と君は…」
見たことはあっても何せ200人を越える大所帯で派遣社員も含めて顔と名前の一致しない人がたくさんいました。
「私ですか…」
井上さんは髪を撫であげながら「井上です」と短く答えました。
「ああ井上さんですか…」
加藤課長は笑って誤魔化しましたがこれが例の井上って女か…
つくづく美人だなぁ♪と思いました、
そう女優の小雪さんに似ています。
なるほど河田部長が夢中になるはずです。
肩まである黒髪…潤んだ瞳につんとした鼻総じて大振りの肢体がアメリカ育ちを思わせました。
ひょっとしてハイヒールを履けば河田より背が高いかもね(笑)
独り含み笑いをしていると…井上さんは深い眼差しを加藤課長に向けていました。 (こりゃあヤバイぜ)加藤課長は内心ドキッとしました。この瞳には罪がありすぎるぜ。こんな憂いを含んだ瞳に見詰められて知らん顔出来る男なんていやしないよ(苦笑)
「あの…誰かを…」
井上さんは加藤課長に声をかけようとしたところで、河田部長がひょっこり顔を出しました。
「おう~加藤かい」
何が加藤だい(怒)
のんびりした口調に加藤課長は気勢を削がれていました。
あれ…俺はなんで河田部長を探していたんだろう♪
「どうした!」
のぞき込んでいる河田部長はあくまでも穏やかな表情でいました。 「は、はい」
ようやくお役目を思い出しました。
「専務がお呼びですが…」
アメリカ出張の件で河田部長を探してこいと言われていたのですがいつもの、のんびりしたペースに加藤課長はすっかり狂わされました。
まぁ狂わされたのは、他にも原因があったのですが…(笑)