佐川本部長のヒントは漠然としすぎて星部長にはさっぱりわかりません。
『なぁそんな遠回しなヒントじゃあわからないよ』
泣きが入りかけてきました(笑)
『自分の胸に手を当てて考えて見ろよ』相変わらずニヤニヤして佐川本部長はぼかして答えを言いません。
ふて腐れてきた星部長をながめて佐川本部長は呆れ顔を作り
『よく部長昇進試験に通ったなぁ』追い討ちをかけるように笑いました。
『あのね星ちゃん国分寺はJR線沿えにあるだろ』
横を向いている星部長に宥(なだ)めるように佐川本部長は言います(笑)『それで…』星部長は子供がすねたような態度をとりながら返事をしました。
『まぁ聞けよ』
へそ曲がりの星部長に諭すのは大変だね。(笑)
肩をすくめて佐川本部長は話を続けます。
『これは或る情報筋から聞いたのを推測しているから多少ずれているかも知れないけどね…』
『情報筋…』
星部長はにわかに顔を向き直しました。
何と言っても佐川本部長の情報網は天下一品でしたから(笑)
『おっと聞く気になってくれましたか(笑)』からかう佐川本部長に、
『マジで教えてよ』じれた星部長はせがみます。
勘と読みの鋭さは天才的な佐川本部長はその反面人を舐めてかかる性格でした…
以前部長昇進試験のプレゼン(プレゼンテーションつまり発表会みたいなものです)で試験官の役員の質問に対して、 『そんな事も知らないのですか?』とせせら笑ったから大変でした(笑)
それまでほぼ確定していた昇進試験をその役員の猛反対に合って見送りになった経緯がありました。当時上司の根本常務が『君はまだ若いから我慢しろ』となだめた話は有名です。
…そんな佐川本部長ですから同期の星部長に容赦ないのは当然でしょう。しかしさすがにからかうのもこれが限度だと思いました。
『じゃあ星ちゃん降参だね』
星部長の顔色も伺わないで佐川本部長は続けます。
『矢野役員の自宅が国分寺だよね。あそこは新宿が乗換えのJR沿線だよね』『はぁ』確かに国分寺は新宿から四十分くらい先にありました。
『矢野役員はあの年でキャバクラが大好物でね、途中下車しては通っていたのがこの新宿のキャバクラだよ』
『ほう~』口は悪いが佐川本部長の情報網はピカイチでした。
こんな関係ないような役員の私生活まで把握していたとは…星部長は舌を巻きました。
『それでね、二年ほど前に通っていたキャバクラのおねえさんにアタックして肘鉄を食らっていたんだよ』『はぁ…』
『でね…』
佐川本部長はもう星部長の反応など関係なく話続けます。
『二年後その肘鉄娘が自社(うち)に入ってきたんだよ』佐川本部長はここまで喋ると水割りをグビリと飲みました。
そして『ここからが星ちゃんにえらく関係があってさぁ』甲高い声が一段とアップしてきました。
『たぶん大学時代のアルバイトだったんだね(笑)偶然にも総務に入っちゃったんだね』
『俺とこに…』
『そうだよ、星ちゃんのところだね』
うちにいる二年生…『ま、まさか!』
星部長がはっと気が付きました。
『あの…』
言いかけて星部長は絶句しました。 こいつは…この佐川はどこまで知っているんだろう。 星部長は背筋が寒くなりました。
岩川亜衣との関係は極秘でした。
慎重にも慎重を重ねていたつもりが、矢野役員は言うに及ばず佐川までに知られていたとは…
星部長は頭を抱え込みました。
うなだれる星部長を見ても佐川本部長は鼻歌を歌うような調子です。
『矢野役員の気持ちも分からないではないけど大人気(おとなげ)ないよね星ちゃん♪』
『ううう…』言葉にならない呻き声を上げて星部長は崩れていきました。
『おいおい星、』
佐川本部長が声を掛けますが、崩れ落ちた星部長は微動だにしません。 『たぶんそうかな、と思ったけどズバリ的中だね』
推理通りに勝ち誇った佐川本部長は残りの水割りを飲み干して言いました。
『安心しろよ、星ちゃんと俺は同期なんだから…これからもよろしくな(笑)』
今夜はお前のおごりだよ♪そう言って佐川本部長は笑っています。
星部長はつくづく思いました。
こいつ敵に回さずよかったね(笑)それにしても痛いところを掴まれてしまったなぁ…あいつには一生頭が上がらないぞ…
溜め息をつき星部長はそれでも佐川本部長について行くこうと思いました。
『あぁ星ちゃん分かっていると思うけど総務の人事権はお前にあるんだよ』甲高い声が星部長の耳に響きました。
さすがに星部長もこれが何を言っているかは理解できました。
『それと次のキャバクラおごってくれたらもっとサービスしちゃうぜ』
『いやぁキャバクラおごるくらいいいけど…』
何なんだよ…と言いたげな顔でいると 『たんこぶのお掃除してやるよ(笑)』佐川本部長はウインクして笑います。
『たんこぶ…』
『そう!福岡に営業管理職のポストが空いているんだよ』
これには星部長もびっくりしました。
地方の部長を飛ばせるなんていつの間にこんな力を付けたんだよ!
『まあ福岡は左遷とも言いがたいけど暫くは戻って来れないからさ』
淡々と話す佐川を見て改めて背筋がぞっとしました。 『勘違いするなよな』恐いものでも見る顔している 星部長に佐川は首を振ります。
『実はさぁ田中ちゃんは福岡出身でさぁ両親の面倒をみなくちゃあならないらしいよ』
『えっ!』そんな話は初耳でした。 『だから福岡にいっても誰も困らないのさ。それどころか感謝されるんだぜ』
『いやーあ』
参りました! 星部長は心底 感服していました。
『じゃあ星ちゃん次行こうか♪』
『あぁ…』
席を立つと長身の佐川本部長がいつもより一段と大きく見えたのは気の性なのでしょうか…(完)
『なぁそんな遠回しなヒントじゃあわからないよ』
泣きが入りかけてきました(笑)
『自分の胸に手を当てて考えて見ろよ』相変わらずニヤニヤして佐川本部長はぼかして答えを言いません。
ふて腐れてきた星部長をながめて佐川本部長は呆れ顔を作り
『よく部長昇進試験に通ったなぁ』追い討ちをかけるように笑いました。
『あのね星ちゃん国分寺はJR線沿えにあるだろ』
横を向いている星部長に宥(なだ)めるように佐川本部長は言います(笑)『それで…』星部長は子供がすねたような態度をとりながら返事をしました。
『まぁ聞けよ』
へそ曲がりの星部長に諭すのは大変だね。(笑)
肩をすくめて佐川本部長は話を続けます。
『これは或る情報筋から聞いたのを推測しているから多少ずれているかも知れないけどね…』
『情報筋…』
星部長はにわかに顔を向き直しました。
何と言っても佐川本部長の情報網は天下一品でしたから(笑)
『おっと聞く気になってくれましたか(笑)』からかう佐川本部長に、
『マジで教えてよ』じれた星部長はせがみます。
勘と読みの鋭さは天才的な佐川本部長はその反面人を舐めてかかる性格でした…
以前部長昇進試験のプレゼン(プレゼンテーションつまり発表会みたいなものです)で試験官の役員の質問に対して、 『そんな事も知らないのですか?』とせせら笑ったから大変でした(笑)
それまでほぼ確定していた昇進試験をその役員の猛反対に合って見送りになった経緯がありました。当時上司の根本常務が『君はまだ若いから我慢しろ』となだめた話は有名です。
…そんな佐川本部長ですから同期の星部長に容赦ないのは当然でしょう。しかしさすがにからかうのもこれが限度だと思いました。
『じゃあ星ちゃん降参だね』
星部長の顔色も伺わないで佐川本部長は続けます。
『矢野役員の自宅が国分寺だよね。あそこは新宿が乗換えのJR沿線だよね』『はぁ』確かに国分寺は新宿から四十分くらい先にありました。
『矢野役員はあの年でキャバクラが大好物でね、途中下車しては通っていたのがこの新宿のキャバクラだよ』
『ほう~』口は悪いが佐川本部長の情報網はピカイチでした。
こんな関係ないような役員の私生活まで把握していたとは…星部長は舌を巻きました。
『それでね、二年ほど前に通っていたキャバクラのおねえさんにアタックして肘鉄を食らっていたんだよ』『はぁ…』
『でね…』
佐川本部長はもう星部長の反応など関係なく話続けます。
『二年後その肘鉄娘が自社(うち)に入ってきたんだよ』佐川本部長はここまで喋ると水割りをグビリと飲みました。
そして『ここからが星ちゃんにえらく関係があってさぁ』甲高い声が一段とアップしてきました。
『たぶん大学時代のアルバイトだったんだね(笑)偶然にも総務に入っちゃったんだね』
『俺とこに…』
『そうだよ、星ちゃんのところだね』
うちにいる二年生…『ま、まさか!』
星部長がはっと気が付きました。
『あの…』
言いかけて星部長は絶句しました。 こいつは…この佐川はどこまで知っているんだろう。 星部長は背筋が寒くなりました。
岩川亜衣との関係は極秘でした。
慎重にも慎重を重ねていたつもりが、矢野役員は言うに及ばず佐川までに知られていたとは…
星部長は頭を抱え込みました。
うなだれる星部長を見ても佐川本部長は鼻歌を歌うような調子です。
『矢野役員の気持ちも分からないではないけど大人気(おとなげ)ないよね星ちゃん♪』
『ううう…』言葉にならない呻き声を上げて星部長は崩れていきました。
『おいおい星、』
佐川本部長が声を掛けますが、崩れ落ちた星部長は微動だにしません。 『たぶんそうかな、と思ったけどズバリ的中だね』
推理通りに勝ち誇った佐川本部長は残りの水割りを飲み干して言いました。
『安心しろよ、星ちゃんと俺は同期なんだから…これからもよろしくな(笑)』
今夜はお前のおごりだよ♪そう言って佐川本部長は笑っています。
星部長はつくづく思いました。
こいつ敵に回さずよかったね(笑)それにしても痛いところを掴まれてしまったなぁ…あいつには一生頭が上がらないぞ…
溜め息をつき星部長はそれでも佐川本部長について行くこうと思いました。
『あぁ星ちゃん分かっていると思うけど総務の人事権はお前にあるんだよ』甲高い声が星部長の耳に響きました。
さすがに星部長もこれが何を言っているかは理解できました。
『それと次のキャバクラおごってくれたらもっとサービスしちゃうぜ』
『いやぁキャバクラおごるくらいいいけど…』
何なんだよ…と言いたげな顔でいると 『たんこぶのお掃除してやるよ(笑)』佐川本部長はウインクして笑います。
『たんこぶ…』
『そう!福岡に営業管理職のポストが空いているんだよ』
これには星部長もびっくりしました。
地方の部長を飛ばせるなんていつの間にこんな力を付けたんだよ!
『まあ福岡は左遷とも言いがたいけど暫くは戻って来れないからさ』
淡々と話す佐川を見て改めて背筋がぞっとしました。 『勘違いするなよな』恐いものでも見る顔している 星部長に佐川は首を振ります。
『実はさぁ田中ちゃんは福岡出身でさぁ両親の面倒をみなくちゃあならないらしいよ』
『えっ!』そんな話は初耳でした。 『だから福岡にいっても誰も困らないのさ。それどころか感謝されるんだぜ』
『いやーあ』
参りました! 星部長は心底 感服していました。
『じゃあ星ちゃん次行こうか♪』
『あぁ…』
席を立つと長身の佐川本部長がいつもより一段と大きく見えたのは気の性なのでしょうか…(完)