以前、月曜午後8時枠の1時間ドラマでやっていた椎名桔平主演の同名ドラマの原作である。原作者は薬丸岳氏。原作小説の良いところは、ドラマでは描ききれない背景が詳細に書かれていることである。この主人公の夏目信人の刑事としての「まなざし」がどう表現されているのか気になったが『なるほど、そういう風に書かれているのか』と納得したところが多数あった。その反面、各話の主軸となる「トリック」というか「仕掛け」が以外とあっさり読者にわかってしまうような感じになっているが、まあそれはそれでありかなとも思う。
なので、この小説は刑事コロンボや水戸黄門のように犯人ありきのような感じで、その犯人の悲哀に対峙する主人公・夏目信人の向ける「姿勢」や「まなざし」・・・それは「やさしさ」であったり「厳しさ」に接したくて読み進めていく読み物であると感じた。もし、この小説を「ドラマを見ずに読んでいた」ならば、その上でドラマ化するにあたり配役を考えたときに、『誰が適任であるか?』ということを考えると、なかなか難しいものがあるなあと感じた。だが、ゆえに椎名桔平氏であったことが今では大正解で、彼以外の配役は考えられないような気がする。
ちなみに、通勤電車に乗っている40~50分の間に「華麗なる一族」や「沈まぬ太陽」は40~50ページしか進まないのに、「刑事のまなざし」は60~70ページほど読み進めることが出来、改めて山崎豊子氏の紡ぎだす濃厚過ぎる圧倒的な文章力に脱帽する日々である。
刑事のまなざし (講談社文庫)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます