ベル・エポックと呼ばれた時代にパリで活躍した芸術家の一つの群象であるエコール・ド・パリのただ中に、唯一日本人として存在していたのが、この藤田嗣治という男である。
26歳のときに単身パリに渡り成功した画家の生涯を追うカタチでこの企画展の絵画は配されていた。そして、私の目的はチラシにも描かれている「カフェにて」という絵を見る事と、当時のパリの雰囲気を彼の絵から感じることであった。
小雨が降りしきる中、今日が最終日とあって大勢の入館者がおり、全てを見終わることにはヘトヘトになっていた。順路の比較的最後の方に置かれていたこの絵の前に立った時には「やっと、ここまで辿り着いた」という印象を持ったほどである。また藤田氏の人生も何故かしら紆余曲折を経ながらの長い道のりだったのではないかと思った。
後年、藤田嗣治氏はフランスに帰化した数年後、ランスの大聖堂でキリスト教の洗礼を受け「レオナール・フジタ」と名乗るようになる。もちろん、洗礼名のレオナールとは氏の尊敬するレオナルド・ダ・ヴィンチから取った名前である。
フランスに滞在しても、また日本に帰国しても、またフランスに渡り帰化しても、常に異邦人でしかなかった彼の心象風景が常に作品に表れているのではないかと私は感じた。
京都国立近代美術館4階の常設展示場には、今回の藤田嗣治展の開催に合わせ「特集展示」と称して【パリ-日本】というものと【藤田嗣治と二科・九室会の画家たち】というものをやっていた。
ほとんどの入館者は企画展示だけ見て帰ってしまうけれど、レオナール・フジタの作品を見た後であればこの「特集展示」はなかなかの見ごたえが有り面白かった。こちらの方は8月中まで催されているようであったので興味の有る方はどうぞ。