とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評『かもめ』(11月13日 東京芸術劇場)

2016-11-14 07:27:32 | 演劇
作:アントン・チェーホフ 
翻訳・上演台本 木内宏昌 
演出:熊林弘高
出演:満島ひかり 田中 圭 坂口健太郎 渡辺大知 あめくみちこ 
山路和弘 渡辺 哲 小林勝也 中嶋朋子 佐藤オリエ

 序盤、これは失敗したかなと思った。『かもめ』はチェーホフが喜劇と言っているので、喜劇にしようとドタバタにしてしまったのではないかと感じたからだ。どうでもいい楽屋落ちやどうでもいい捨て台詞、劇中劇で意味もなくマイクを使ったり、無駄な動きもが多く、最後まで見ている自信がなくなった。

 しかし、2幕の後半から芝居が生き始めた。セリフが落ち着き始めたのである。しかもどのセリフもしっくりと入ってくる。

 前半との落差はなんなのだろう。この落差が演出家の意図したことならば、私は賛成しかねる。『かもめ』の読み取りはどのようにでもできる。そして奥が深い。最近それがよくわかってきた。リアルに描こうとすればするほど、人間存在の喜劇性が表現できる。だから前半の演出には無理があるように思えるのだ。

 しかし後半は演劇的な空間の中に引き込まれた。役者が達者でだれもが無理のないしかも的確な演技をしていた。だからこそセリフがしっくりと入ってくるのである。

 袖幕も一文字幕もないので、吊るした照明が丸見えという斬新な舞台。その中に劇中劇のように客席風に椅子が用意され、役者が自分の出番以外でもそこに出ている。全員が必ずそこにいるというわけではない。この舞台づくりに演出家の意図があるのは明らかだが、いまのところ明確な答えはない。しかし、印象に残る。

 さまざまなことを考えさせられる舞台だった。原作をもう一度読み直す必要がある。原作の読み取りにいくつかのヒントを得たからだ。また、演出としてどこまで台本の改変がゆるされるのかなども考えなければならない。

 刺激になる舞台だった。
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