とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評『コペンハーゲン』(6月5日 小川絵梨子演出 シアタートラム)

2016-06-07 06:55:45 | 演劇
 出演 段田安則、宮沢りえ、浅野和之
 
 新国立劇場で以前見たことがありとてもすばらしい作品だと思っていた。難解だがわかる気がする、そんな芝居だった。その時の出演は村井国夫、新井純、今井朋彦。演出は鵜山仁。あの舞台は装置がとても印象的で、新井純さんの演技もとても印象に残っている。ふたりの男優もいい演技だった。

 今回、シスカンパニー公演。

 1941年コペンハーゲンの物理学者ボーア夫妻のもとに、昔ボーアの弟子であり、共同研究者であった物理学者のハイデンベルグが訪れる。その時ふたりは何を語り合ったのか。死後の3人がその日を何度も振り返りその真実を探る。

 ハイデンベルグが提唱したのは不確定性原理。「ある粒子の運動量と位置を 同時に正確に知ることは、原理的に不可能 である。」と説明される理論である。ボーアが提唱したのは相補性原理。「すべての物事には二つの側面があり、それぞれの側面は互いに補い合ってこそ、ひとつの実在について記述 することができる。」と説明される。ふたりの関係がこの物理学理論と重なり、その日のふたりが何を語ったのか「不確定」なまま、しかし「互いに補い合って」少しずつ見えてくる。そこのあるのは「原子力」という人間を超えた存在に科学者がどう向き合えばいいのかという人類が直面した究極の問題だった。

 我々観客にもその問題が迫ってくる。しかもオバマが広島に来た直後だったので、とてもリアルに感じた。難しいセリフも、その奥にあるものが直接心にひびいてくるような気がした。

 まだ2日目の舞台であり、セリフがまだ入っていないところがあったのは少し残念である。もちろん膨大なセリフなのである程度はしょうがないと感じつつではある。宮沢りえが落ち着いた、凛とした女性を演じていた。素敵だった。しかし、やや一本調子の感があった。新井純さんの演技ほどの印象はない。まだまだ若いのでこれからの活躍が本当に楽しみである。

 初演に比べて短い上演時間であった。しかし無理はない。

 むずかしい戯曲であるが、とてもすばらしい作品である。いろいろな人で再演してもらいたい。
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