とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

書評『月光川の魚研究所』

2016-02-18 20:04:32 | 読書
 アメリカの作家にチャールズバクスターという人がいます。何気ない日常を描いていながら、いつの間にか平衡感覚を失い、不思議な世界につれていかれる。当たり前が当たり前でなくなるそんな感覚を描くことができる小説家です。この星野青という作家の『月光川の魚研究所』という連作短編小説集もそういう感覚を味わうことができます。

 「月光川の魚研究所」という変わった名前のバーはバーテンダーがひとりでやっています。そのバーに様々な人が訪れ、自分の体験を語ります。どの話も日常のバランスが微妙に傾き始め、その世界はいつもの風景でありながら、いつもとは違う現実のむごさと美しさをそなえた幻想的な世界と変化していきます。いつしか読者は自分の日常を振り返らざるを得なくなります。

 作者の人間洞察の鋭さと、空想力の豊かさを感じさせる作品です。今後の活躍が期待されます。
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