とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

スウィフト作『ガリバー旅行記』を読みました。

2023-09-15 04:07:46 | 読書
スウィフト作『ガリバー旅行記』を読みました。大雑把に内容は知っていたのですが、実際に読んだのは初めてです。物語的なおもしろさよりも人間批判の色合いの強い作品であり、おもしろい発見がたくさんありました。

第一話は「リリパット」。小人の国です。第二話は「ブロブディンナグ」。巨人の国です。この2話は物語的な要素も強く、楽しく読むことができます。二つ国は相対化されることによって、人間自身も相対化されます。

第三話はラピュタなどの国々です。ラピュタは宮崎駿のアニメ映画にもなっている空中に浮かぶ島です。その外にもいろいろな国を訪れ、最後は日本にも立ち寄ります。日本に行った目的は、長崎からオランダ船に乗ってヨーロッパに戻ろうとしたからです。「踏み絵」だけはしたくないというガリバーの要求がおもしろい。とは言え日本の記述はごく短いものです。

第三話で特におもしろかったのは「ストラルドブルグ」という不死の人間です。不死とは理想のように思えるのですが、実は苦しいことが描かれます。この部分は考えさせられます。

第四話は「フウイヌム」。馬の支配している国です。フウイヌムは人間に比べて理性的で争いをしません。ガリバーにとって理想的な国です。一方その国には「ヤフー」と呼ばれる動物が住んでいます。ガリバーは「ヤフー」は人間の劣化した存在のように考えます。しかし、実は人間そのものであることに気づきます。フウイヌムと比較すると人間は実に愚かで醜い存在であることに気づいてしまうのです。自分たち「ヤフー」=「人間」はこんなに醜い生き物だったのか。ガリバーは人間不信に陥り、その心はもとにもどれません。

ガリバーは結局イギリスの自分の家に戻ります。しかし以前のようには生きることができません。「ヤフー」=「人間」に対する嫌悪感はもはや消えることがないのです。妻と再会したあとの次の記述は衝撃的です。

「自分がかつてヤフーの一匹と交わり、数匹の子を産ませたという事実を目の前につきつけられて、わたしはどれほどの屈辱、困惑、嫌悪にうち震えたことだろう。」

もはや人間を人間としてはとらえられなくなり、家族でさえ醜い「ヤフー」という獣にしか見えなくなっているのです。ガリバーは不幸な老後を生きることになります。第四話の人間批判はすごい。


『ガリバー旅行記』と云うと子供向けの物語というふうに勝手に思っていましたが、実は人間批判、文明批判の書であったのです。

世界的に有名な本でもまだ読んでいない本はたくさんあります。読みつくすことはできないでしょうが、少しでも多く読んでみたいと改めて思いました。
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