がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

仏富豪16人「われわれに課税して」 財政赤字削減のために

2011年09月01日 | Weblog
2011年08月25日 20時09分02秒

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110824/erp11082421160006-n1.htm



「フランスの富豪16人が23日の仏週刊誌「ヌーベル・オプセルバトゥール」で、財政問題を解決するため仏政府に対し、「われわれに課税して」と述べ、特別貢献税の創設を要請した。

 富豪は化粧品大手ロレアルや石油大手トタル、広告大手パブリス、航空大手エールフランスなどのトップら。フィヨン首相は24日、記者会見して財政赤字削減のための緊縮財政計画を発表する予定で、これに先立ち、富裕層への課税を訴えた。(パリ 山口昌子)」



我が国にはいないのかね、こういう人は。



追記(2011/08/26)



「村野瀬玲奈の秘書課広報室」( http://muranoserena.blog91.fc2.com/ )で、本件に関する記事が掲載されましたので、一部を転載させてもらいご紹介します。全文を村野瀬さんのブログで読まれることをお勧めします。



「(前略)

フランスの報道二つをまず訳しました。



●L'Est Républicain
Seize patrons français, dont Liliane Bettencourt, pour une contribution exceptionnelle
リリアン・ベタンクールを含むフランスの経営者16名が特別税に賛成
http://www.estrepublicain.fr/fr/a-la-une-aujourdhui/info/5583278-Seize-patrons-francais-dont-Liliane-Bettencourt-pour-une-contribution-exceptionnelle
le 23/08/2011 12:46

「フランス政府がまさに連帯の努力を皆に要請している今、われわれが連帯に貢献することは必要なことである。」これは、あるアピールの署名者たちの説明である。
国家予算の赤字を減らすために、企業経営者と、リリアン・ベタンクールを含む大富豪16名が、「フランスの最も恵まれた納税者(高額納税者)に対して『特別貢献税』を創設すること」を求める文書に署名した。

「われわれは、われわれのフランスモデルとヨーロッパの環境の恩恵を十分に受けたことを意識しており、それを保持することに貢献したいと願っている。」と、ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール誌のサイトと木曜日に出る号に掲載されるこのアピール文にこの16名は書く。

「フランス政府がまさに連帯の努力を皆に要請している今、われわれが連帯に貢献することは必要なことである。」と彼らは付け加える。

このアピール文に署名しているのは次の者たちである。
Jean-Paul Agon, PDG de L’Oréal
 ジャンポール・アゴン ロレアル社代表取締役
Antoine Frérot, PDG de Veolia Environnement,
 アントワーヌ・フレロー ヴェオリア・アンヴィロヌマン社代表取締役
Denis Hennequin, PDG d’Accor,
 ドゥニ・エヌカン アコー社代表取締役
Marc Ladreit de Lacharrière, président de Fimalac,
 マルク・ラドレ=ド=ラシャリエール フィマラック社社長
Maurice Lévy, PDG de Publicis,
 モリス・レヴィ ピュブリシス社代表取締役
Christophe de Margerie, PDG de Total,
 クリストフ・ド=マルジュリー トタル社代表取締役
Frédéric Oudéa, PDG de la Société Générale,
 フレデリック・ウデア ソシエテ・ジェネラル銀行頭取
Jean Peyrelevade, président de Leonardo France,
 ジャン・ペレルヴァード レオナルド・フランス社社長
Franck Riboud, PDG de Danone,
 フランク・リブー ダノン社社長
Stéphane Richard, PDG d’Orange,
 ステファン・リシャール オランジュ社代表取締役
Louis Schweitzer, président de Volvo et de AstraZeneca,
 ルイ・シュヴェゼール(ルイ・シュヴァイツァー) ボルボ社、アストラゼネカ社代表取締役
Marc Simoncini, président de Meetic,
 マルク・シモンシーニ ミーティック社社長
Jean-Cyril Spinetta, président du conseil d’administration d’Air France-KLM et du conseil de surveillance d’Areva
 ジャン=シリル・スピネッタ エール・フランス-KLM社取締役会会長、アレヴァ社監査役
Philippe Varin, président du directoire de PSA Peugeot-Citroën.
 フィリップ・ヴァラン PSA・プジョーシトロエン社取締役会会長

「適正な比率で」

ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール誌の監査役会代表のクロード・ペルドリエルと、ロレアル社の大株主であるリリアン・ベタンクールもこのアピール文に署名をしている。

「資本流出や租税回避の増加のような望ましくない経済効果を避けるために」、彼らはこの特別税は「適正な比率で」計算されるべきであるとしている。「 これはそれ自体が解決策というわけではなく、支出と税収の両面において、もっと全体的な改革の努力の中に組み込まれるべきものである。」と彼らのアピール文は言う。

フランス私企業協会(Afep)の会長でもあるモリス・レヴィ は、8月中旬にアメリカの大富豪投資家ウォーレン・バフェットが行ったアピールに呼応して、最も高い所得を得ている者に「特別貢献税」をかけることに賛成だとフランスで最初に表明していた。

次いで、イヴ・サンローランの元経営者であったピエール・ベルジュとヴィルジン・モビール(ヴァージン・モバイル)社代表取締役のジョフロワ・ルー=ド=ベジユーも数日後にその呼びかけへの賛成を表明した。

そのほかの経営者は ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール誌のこのアピール文に署名することは望まなかったが、それでも彼らは追加的な増税努力に反対はしていないと同誌は述べている。

この手段はフランスの競争力の再生や公的支出の削減のような追加的努力とセットにすべきであると 彼らは少なくとも考えている。そのように言っているのは、モンテーニュ研究所代表のクロード・ベベアール、アクサ社代表取締役のアンリ・ド=カストリー、シュネデール・エレクトリック社監査役会代表のアンリ・ラシュマン、BNPパリバ銀行会長のミシェル・ペブローである。

一方、エルメス社のベルトラン・ピュエシュとパトリック・トマは、増資を主張している。
(翻訳転載ここまで)



●Reuters France
Appel de patrons français en faveur d'une hausse de leurs impôts
自らへの所得増税に賛成するフランス経営者のアピール文
http://fr.reuters.com/article/frEuroRpt/idFRLDE77M08O20110823
http://fr.reuters.com/article/frEuroRpt/idFRLDE77M08O20110823?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0
mardi 23 août 2011 10h47

パリ、2011年8月23日

16名のフランス大企業経営者たちが、彼らの言葉を借りれば「フランスとヨーロッパの未来」を脅かす財政赤字への対策として最も恵まれたフランス人納税者を対象とした特別課税を創設することに賛成するアピール文に署名した。
署名者たちがしかしながら「適正な比率で計算されるべきである」とするこの方策は、公的財政の健全性達成目標を守るためにフランソワ・フィヨン首相が水曜日に提出する予定の計画にも含まれるはずだ。
ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール誌の呼びかけによるアピール文に署名したこれら16名の企業トップや大富豪の中には、ロレアル社代表取締役のジャンポール・アゴン、化粧品会社グループの最大株主であるリリアン・ベタンクール、トタル社代表取締役のクリストフ・ド=マルジュリー、ソシエテ・ジェネラル銀行頭取のフレデリック・ウデア、あるいはPSA・プジョーシトロエン社取締役会会長のフィリップ・ヴァランのような人たちがいる。「企業代表、企業経営者、ビジネスパーソン、財界人、企業人、高額所得市民であるわれわれは、フランスの最も恵まれた納税者(高額納税者)に対して『特別貢献税』を創設することを望む。」とこのアピール文は言う。
「資本流出や租税回避の増加のような望ましくない経済効果を避けるために、この税金は適正な比率で計算されるべきである」とも付け加えられている。
「これはそれ自体が解決策というわけではなく、支出と税収の両面において、もっと全体的な改革の努力の中に組み込まれるべきものである。」
ピュブリシス社代表取締役でありフランス私企業協会(Afep)の会長でもあるモリス・レヴィは先週、このような増税に対して賛成であると表明していたが、ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール誌が「われわれに課税せよ!」とシンプルに見出しを付けたこのアピール文にも署名している。
また、BNPパリバ銀行会長のミシェル・ペブローは所得税をさらに払う用意があると述べている。
フランス政府と与党UMPの主要幹部は、この増税は年間100万ユーロ(約1億1500万円)以上の収入がある者対象であると説明した。国民議会での与党UMPの予算委員会報告者ジル・カレズの計算によると、この収入水準に相当する約3万の世帯が来年払うことになる追加所得税の総額は約3億ユーロ(約345億円)となる見込みである。
(マルク・アングラン、編集担当イヴ・クラリス)
(翻訳転載ここまで)


なぜ「インパクトにおいてドイツやアメリカの例を上回る」と私が思うかというと、個別の大富豪が訴えたドイツとさらに限られた大富豪が訴えたアメリカとは少し違って、大企業経営者が多数このアピールに参加したからです。

フランス企業と言っても日本では知らない人も多いと思いますので、上の記事にあげられたフランス企業について説明してみましょう。

ロレアル社は化粧品の会社として日本でももちろん、世界的に知られています。

ヴェオリア・アンヴィロヌマン社は、フランスの上下水道、ごみ処理などを手掛ける公益企業。

アコー社は、ソフィテル、ノボテル、メルキュール、イビスなどの高級からリーズナブルまでホテルを手掛ける世界的なホテルチェーン。

フィマラック社は金融、不動産、投資を手掛ける会社。年商は約6億ユーロ(690億円)。

ピュブリシス社は広告会社。年商は約54億ユーロ(6200億円)。日本の電通も大株主の一つ。最大株主は、1981年にフランスで死刑廃止を実現した法務大臣ロベール・バダンテール の妻で哲学者・実業家のエリザベート・バダンテール。

トタル社は石油会社。エクソンモービル、シェル、BPなどに次ぐ、世界で第六位の石油会社。

ソシエテ・ジェネラル銀行はフランスの三大最大手銀行の一角を占めるメガバンク。

レオナルド・フランス社は企業向け銀行で、その社長のジャン・ペレルヴァードはフランスの大手銀行の一つ、クレディ・リヨネの元頭取。

ダノン社は乳製品、ビスケット、ミネラルウォーターなどを扱う総合食品会社。たとえば、ダノンブランドのヨーグルトやエビアンやヴォルヴィックなどのミネラルウォーター。

オランジュ社は電話会社。現在フランステレコムグループの傘下にあり、携帯電話、インターネットサービスを提供。

ボルボ社はスウェーデンの自動車会社。その現社長のルイ・シュヴェゼール(ルイ・シュヴァイツァー)はフランスの自動車会社ルノー社の元・最高経営責任者。

ミーティック社はフランスのオンライン恋人紹介サイトを手掛ける大手企業で、2005年から株式市場に上場。

エール・フランス-KLM社は言うまでもないですね。航空会社です。

アレヴァ社は原子力発電を手掛ける会社。

PSA・プジョーシトロエン社はフランスの二大自動車会社のひとつ。

イヴ・サンローランは言うまでもないですね。ファッション界の大手。

ヴィルジン・モビール(ヴァージン・モバイル)社は携帯電話。

モンテーニュ研究所は独立系のシンクタンクですが、代表のクロード・ベベアールは保険会社アクサ社の元・代表取締役。

シュネデール・エレクトリック社は電機会社。

BNPパリバ銀行はフランス三大銀行の一角を占めるメガバンク。

これらには、日本で言えば日経225に相当するフランスの株式指標CAC40(ユーロネクスト)に入っている大手企業やそれ相当の企業が多数含まれています。

...要するに、ありとあらゆる業種で、古くからある大手企業から新興大手企業までが含まれているわけです。それらの社長クラスの経営者や財界人が多数、「高額所得者の所得税に増税せよ」と訴えているのですから、そのインパクトがわかっていただけるでしょうか。

え?フランス企業の名前になじみがないので、まだよくわからない?

それなら、日本にたとえてみましょう。たとえて言えば、資生堂、ホテルオークラグループ、電通、出光興産、東京三菱UFJ銀行、みずほ銀行、トヨタ自動車、日産自動車、明治乳業、NTTドコモ、ソフトバンク、全日空、東芝、ツヴァイ、日本生命の社長たちがそろって「財政赤字解消のためには高額所得者にももっと所得増税をするべきである」とアエラ誌上で共同アピールを載せて訴えているような事態がフランスで起こっているということなのです。...うーん、日本では天地がひっくり返っても起こりそうにない事態のような気がします。

日本でそれに相当しそうなことをやっていると言えなくもないのは、例としてあげたこれらの日本企業の中ではソフトバンクの孫正義社長ただ一人ですね。(震災被害者救済や自然エネルギー普及のために多額の私財を出しているから。)

ただ、フランスの高額所得者に租税回避行動がないかと言えば、そんなことはありません。だからこそ、このアピールの中では注意深く「資本流出や租税回避の増加のような望ましくない経済効果を避けるために」と付け加えています。

しかし、です。

「連帯」のために「自分たちの税金を上げよ」とこぞって訴える、あるいは「自分への増税を容認する」姿勢をとることは大企業経営者にはなかなかできることではありません。フランスには連帯・再分配と言う左派的な考え方が資本主義バリバリの企業経営者にもある程度浸透していることのあらわれではないでしょうか。(実際に、「左派の経済人」というのもフランスにはいます。たとえば、1980年代の社会党フランソワ・ミッテラン時代に首相だったローラン・ファビウスの側近だったのは、上にあげたルイ・シュヴェゼール(ルイ・シュヴァイツァー)です。)

このように高額所得者が担税力に応じて税金を多く負担することをまさに「応分の負担」といいます。逆に、日本は貧しい者の負担を上げるばかりの国といっても過言ではないので、フランスで富裕層がこういうことを言い出すことに私は誇りを感じます。笑

日本の経団連会長や日本経済新聞が普段しつこく言っていること、たとえば、「証券課税を緩和し、法人税を下げ、高額所得者の所得税を減税し、消費税を上げよ」などという強欲な主張(げっ)を思い出せば、このフランス経営者・大富豪たちのアピールは際立っています。

ついでに言えば、日本でありがちな「財政再建のために消費税を上げよ」という主張はフランスの報道にはほとんど見当たらないことも付け加えておきます。

日本の財界人たちは、このようなフランスの経営者とは対照的に、「われわれの税をもっと下げないと日本の競争力がなくなる」という内容のことばかり言っているわけで、日本の財界人の甘えぶり、強欲ぶりが浮き彫りになったフランス企業人の行動だったとも言えます。
(後略)」