新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

三越伊勢丹とヤマト運輸に思う

2017-03-09 07:52:29 | コラム
時代の変遷:

私は大学在学中の1954年末までのほぼ4年間、三越の銀座支店で「実習生」という名のアルバイトをしていた。従って、あの誇り高き歴史と伝統に輝く日本一の百貨店の内情に接していた。立派なものだと思っていたし、貴重な経験をさせて貰えた。だが、20年ほど前から何も三越だけに限ったことではないが、「あの形式の大規模小売業に最早将来はない。何処かで見切るか業態を変えないことには生存出来なくなる」と指摘した。そして、伊勢丹と合併する少し前には、百貨店は命脈尽きかけているとまで言っていた。


余談だが、あの頃は月曜日を定休日にしていた三越他が一流店で、木曜日定休は二流であると教えられていた。だが、現在の百貨店には定休日はようだし、閉店の時刻など何時なのか高齢化した私は夜には出歩かないので知らない。

更に合併後には何度か三越の店内に入ってみて「あの時代感覚に乏しい品揃えと、海外の人気ブランドの取り扱いが遅れていること、更に未だに本店にベンツやキャデラックで乗り付ける帳場前主(「チョウバゼンシュと読む隠語で、つけで買っていく上客」を言う)に頼っているようではダメだ」とも言っていた。それは、お世話になった三越が往年の輝きを失っていくのを見ていられなかったから敢えて批判したのである。

言うなれば、百貨店業界は小売業界の時代の変化に対応出来ていなかったのではないか。スーパー・ダイエーが出てきた時にも時代の変化が云々されたが、ICT化が進んだデイジタル時代の今日では若者は当然のようにネット通販を利用するし、店頭で商品に触れル習慣すらなくなったかのようにスクリーンで見ただけの商品を買ってしまうのである。

このような主張を「頂門の一針」上で読んだ伊勢丹のOBの方が三越を見に行かれて「全くその通りである。伊勢丹は合併の相手を誤った」と慨歎された。私は三越は「過去の栄光」に縋っていた為に時代の変化について行けなかったのはないかと思っていた。そこで、伊勢丹との経営統合だが、社名では三越が前に付いたが、目下報道されている伊勢丹出身の社長に辞任や三越出身の会長の件を見るにつけても合併という者が如何に難しいかが簡単に予期したほどの効果が挙がらないかが見えてくるような気もする。

実習生をやっている頃に知ったのが、大和運輸(現ヤマト運輸)が三越の配送を一手に引き受けていたことだった。それが、何時のことかそれだけでは将来はないと考えたのか手を引いたのだった。そして何時のことだったか開拓したのが宅配事業の「クロネコヤマトの宅急便だった。それは当たったのだろう。そこにアマゾンを引き受けた為にその伸びで人手不足の苦境に陥ったので、値上げを模索していると報じられている。

一時代を築いたヤマトもここで時代の変化への対応を迫られているのだろう。ここから先は如何に人手不足の時代に対応するかを考えねばなるまい。。げに恐ろしきは時代の変化である。アマゾン等のネット通販の普及が百貨店のような業態を古物化したのだが、その百貨店から転進したクロネコも宅配事業者であるが故に苦しめられているとは、何と言う巡り合わせか。

話は変わるが、8日に何処かのテレビ局だったか、全国の特養老人ホームの空き室率が20~30%と報じていた。その原因はただ一つ、介護士の不足で、その仕事のきついことに比べて収入が低いので、働き手である若者が入ってこないことだそうだ。最早、人手不足に低賃金が問題になっている。これも新たな時代の流れとなったのだろう。これを如何に解決するかが、相変わらずアベノミクスに重くのしかかる重大な課題だろう。



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