新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

8月8日 その2 8月7日の「報道1930」より

2020-08-08 10:12:53 | コラム
児玉龍彦氏(東大先端技研名誉教授)の登場:

当方は松原耕二のTBS色丸出しの司会が好みではないので、通常は30分だけ我慢して見た上でPrime Newsに転向するのだ。だが、昨夜は好みではない巨人の野球中継になっているので、止むなく「報道1930」を見続けて、意外な収穫があったのは幸運だった。

先ずは「収穫」などと言っては失礼に当たるだろう、児玉龍彦名誉教授が語られた「世田谷区を支援される新型コロナウイルス制圧対策の内容」だった。児玉龍彦氏については閉会中の審議で強い口調で「ウイルスをこのままにすれば来週にはとんでもないことになり、来月には予想もしなかった事態が襲ってくる」という意味の事を述べられた箇所だけ放映されたので「思い切ったことを仰る方だ」という程度の印象しかなかった。今にして思えば、より具体的に根拠をも語られたのだろうが、例によってテレビ局は摘まみ食いにしたのだろう。

子供の頃からの習慣で一切メモを取らずに生きてきたので、折角の児玉龍彦氏が国会と違って穏やかに語られた強烈な印象が残った箇所だけを切り取っていくことにする。事が世田谷区についてだったので、フリップではなくチャートに出ていた東京都の感染者の棒グラフを見て、「最初の山が右下がりになったところで安心せずに、この後の期間中に感染を根絶やしにする手法を採っていれば良かった。それを怠り更に契約したホテルまで解約してしまった為に、ここ1週間ほどの400人を超える山が出来た。この山は何れ下がるから、そこで完全に抑え込む策を採れば良い」と語られた。

これは、良く考えなくとも分かるような、強烈な政府と東京都の新型コロナウイルス制圧対策への批判である。私は「このウイルス制圧策については、我が国には何処にも専門家がいない」と言ってきた。だが、感染症に対する専門の医師はおられたはずである。政府はそうだと思う方々を集めて専門家会議なるものを組織されて諮問機関として活用されたのだろう。だが、そこからは何らの有効な具体策は出てこなかったようだった。だが、要請だけの対策でも国民の清潔感と手洗いと消毒に慣れた生活習慣のお陰で、最初の山は世界でも最高の実績を挙げて乗り越えた。

だが、緊急事態宣言の解除の後はやや話が違ってきた。東京都のグラフだけを見てもここ最近の山は4月頃よりも遙かに高い。しかも、PCR検査の態勢は誰が笛を吹いても一向に政府が言うほどには拡大されないままである。しかも紹介状がないとか保健所の指示がない限り、個人的に受ければ2~4万円の負担である。その遅々として進まない態勢に業を煮やしたのが世田谷区長の保阪展人氏だった。彼は区だけでもニューヨーク式に「いつでも どこでも 何度でも」を目指すと標榜して、児玉氏の援助と協力を求めたのだったそうだ。

児玉氏は「PCR検査は既存の設備でも幾らでも出来るはず」と立ち上がられて、先ずは協力を申し出られたキリスト教の教会の庭を借りることから開始されるのだ。更に、プール方式が可能という1回に検体の数を4~6までに自動式に増加が可能な検査機をリースで導入されるというところまで業容を確証されたのだった。児玉氏は東大の検査機の使用を申請されるのだが、これは学内の倫理委員会の審査を経て漸く許可されたという一幕があった。事が「国立大学」ではこんなものだろう。

各大学にも無数の検査機はあるが、現在では閉校中で使わせて貰えないのだと、寧ろ笑っておられた。これなどがPCR検査が増えない実態では笑い事ではない。児玉氏は在来型の検査機では検査員が手作業でやっているので疲労が蓄積して効率が上がらない。プール方式の検査機が増えれば事態が改善され、何れは個人負担も¥5,000くらいまでは引き下げか可能になるだろうとまで予測されていた。ここまで聞いていると「PCR検査の量が増えないのも、感染者が再度増加傾向にあるのも、全て人災ではなかったか」と言いたくなってきた。

本筋から離れるが「何故専門家会議でも分科会にでも、児玉名誉教授のような方が招かれないのか」という話が出た。それに対する答えの如きものは「厚生労働省が(彼らの知る範囲内の方を)が選んで委嘱しているからだ」だった。「国立感染症研究所は厚生労働省の管轄だから」とも補足された。だから増税派のエコノミストの小林某氏が入っているだとも、何処かで聞かされた気がする。

私は既に我が政府には「新型コロナウイルス制圧対策の司令塔がない」と指摘した。西村康稔大臣は何時まで経っても「西村康稔経済再生担当大臣」としか紹介されない。ウイルス対策の真の責任者や分科会(でも専門会議でも同じだが)を管轄するのは何方かという公表もない。そんな態勢で彼の責任回避ばかりの姿勢を責めるのは酷かと思ってしまう。児玉龍彦氏は問題点として「リーダーシップの必要性」を強調しておられた。それは、体調不備の噂が流されている安倍首相が何をさて措いても採られるべき事だと思う。


「経済を回す」必要は大有りだ

2020-08-08 08:38:30 | コラム
4~6月期決算の結果に見る経済の危機:

本日の産経新聞が報じていたところを纏めてみれば、東証一部上場の873社中(金融関係を除けば)実に31.5%の企業が最終赤字を計上していたのだった。これは由々しきことだと思う。更に業種別の赤字を見れば、輸送器機が7,181億円、陸運が3,705億円、空運2,075億円、石油・石炭が819億円、鉄鋼が430億円となっていた。更に、我々が日常的に依存している病院は産業界とは一線を画するが、その60%が赤字で深刻な経営状態に陥っている。

私は「経済を回す」という表現は具体性に欠けると思っているが、そんなことを別にして考えよう。上記の各産業界の決算を見れば、政府が如何なる手段を講じても景気を支えて、我が国の経済を回復しようと計るのは当然すぎるほど当然である。一頃は新型コロナウイルス制圧と景気の回復を計ることを恰も二者択一の如くに言う論調が蔓延っていた。だが、私はこの両者は別個のことではないかと思うのだ。素朴なことを言えば、中央官庁にしても財務省と経産省に対するに、厚生労働省と分かれているではないか。別個に対策を講じていくことこそ優先されるべきではないのか。

ところがである、ウイルスの征圧対策の中でも東京他の地方の大都市でも、夜の街であるとか、外飲業種・外食業種、キャバクラ、ホストクラブ等々の自粛要請こそが肝腎であると言わんばかりに、これらの業種への補償に重点を置くような手法に訴えているのは、私は優先順位を誤っていると断定したいのだ。鈴木傾城というライターは「そういう業種は先行きを良くを考えれば、今のうちに撤退か廃業を考えておくべきなのだ」とまで指摘しているのだ。先日も引用したが、嘗て「中小企業の2社や3社が倒産しても」とまで言って、我が国の高度成長の基礎を築いた総理がおられた。

「経済を回す」べきは担当の中央官庁の職務であり、経営者には往年の気概があるものが少なくなった恨みがある産業界には世界に冠たる技術もあり、基板には確固たるものがある。故に、政府は彼等を支えて景気回復を一任しておけば十分ではないのか。一方の新型コロナウイルス制圧対策は依然として誠に頼りなく、数字を掲げて見せれば良識ある国民がついてくるだろうというような責任逃れの対策ばかりでは何ともならない。この対策の司令官を誰が務めているのかも判然としない態勢を可及的に改めて、具体的且つ即効性がある対策を速やかに実行していくのが焦眉の急だ。