新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

10月10日 その2 豊洲問題を考えれば:

2016-10-10 13:54:15 | コラム
北野武は「あのまま舛添知事だったら・・・」と言った:

*東京都庁が好き勝手に建てたのか:
私は不勉強と寡聞にして東京都には「市場長」なる役職があって築地市場を管理し、結構なところに天下れるほど高い地位だったとは知らなかった。その場長は自分が管理するだろう建物が誰がどのように設計しどのように建てたかも知らなかったと謝罪するのが凄いと思った。しかも、東京都庁の凄さはそれだけに止まらず、何代か前の知事が決めればそこに入居する業者の都合も好みにも全く配慮せず新市場の建物を作ってしまって「サー、入れ」という姿勢で臨んでいるのは凄いなどという段階を通り越した「呆れ果てた」所業である。近頃流行のゲスな言葉で言う「上から目線」で業者を見下した姿勢に見える。業者はお客様ではないようだ。

しかも、その建物の構造等に関して「何とか委員会」を設けて諮問し、意見を聞いても全く意に介さず、自分たちの都合だけで建ててしまったので、都知事が替わって実態が暴露されて慌てふためいている様を見れば「何と低次元の者どもを集めた集団なのか」と批判するも何も、言葉を失わされかねない醜態である。私はここに至るまでに、都議会なるものが如何なる役目を果たすべきだったかなど知らないが、涙を流している議員がいたということは、「ドン」なるお方を筆頭に何らかの責任があるのではないかとすら考えるようになった。如何でしょうか「ドン」様。

*風評被害:
これを云々するマスコミは全く笑止であると思う。この問題と地下の空のコンクリートの構造物に水が溜まっていたことが発見された案件が発生して以来、「やれ標準値か基準値の何分の1だの何倍だのという、何とかいう危険な物質が検査の結果その溜まった水に含まれていたとの結果が出た」の「人体には影響はない」だの「有害な物質が含まれており幾何すれば食の安全の問題となり豊洲への移転は云々」等と、鬼の首を何個か取ったような報道を繰り返してきた。煽っているのが自分たちだとの自覚はないようだ。気楽なものだ。

私に言わせれば「それこそ風評被害の発生を期して流している情報以外の何物でもないのだ」となるのだ。彼らマスゴミ、失礼マスコミは福島の事故があった時に「エー・エイチ・オウ」の総理・菅直人が騒ぎ立てた「何ミリシーベルト」だかの虚報に乗ってか意図的に便乗させられてか、汚染だの除染だのと騒ぎ立てて、近隣の我が国に悪意を持つ諸国に福島県産の農産物や水産物の禁輸に走らせた責任を少しも感じていないとしか思えない、豊洲の地下の水問題の空疎な騒ぎ立てには本当に胸が悪くなる思いだ。

*豊洲への移転:
昨9日のテレビタックルで京大の藤井教授が「水の汚染度の基準には二通り合って『飲料水用』と『地下水用』の二つに分かれている。今まで検査されて安全とされた基準は飲料水のそれである。今回(マスコミが再び鬼の首を取ったと喜び勇んでいる基準は)に基準は地下水のそれであって、違う基準だ」と指摘された。またもや、マスコミの常套手段である「面白そうなところだけ切り取って報じる」だったのだ。誠に以て不誠実ではないか。罪なき一般の視聴者を誑かそうとの魂胆が見える。

この程度のマスコミと、都庁と、都会議員に任せておけば、この問題は何時まで経ってもまともな解決に至ることはないかと本気で危惧するものだ。地下に溜まった水が安全基準を満たし、地下水の排水ポンプが完備しているようであるのならば、何も来年の半ば頃まで移転を延期する根拠などないのではないのかとすら、私は思うようになった。小池都知事がこの問題を掘り出してここまで大きくして都庁の役人の駄目振りと、都議会の役立たずさを白日の下に曝した功績を称えるのは吝かではない。

小池都知事に残された課題は「何時何処でこの問題を終わらせて、風評被害を食い止めて、速やかに都の予算を無駄遣いすることなく豊洲移転を実現させることだろう。だが、その先には避けることは不可能だろう、関連する諸方面への補償問題が待っている。徒に予算を使うことなく乗りきって貰いたいものだ。小池都知事の腕の見せ所は犯人捜し以外にも未だ未だ先に大きな課題があるようだ。


アメリカの製造業を考える

2016-10-10 09:06:06 | コラム
アメリカの弱体化:

*大統領選挙:
私がW社在職中に国の内外で最も一緒に行動した時間が長かった元の技術サーヴィスマネージャーが、今回の大統領選挙について直近のEmailで”This is the most disappointing presidential election I have experienced since I became of voting age.”と言ってきた。即ち、「投票権を得る年齢に達してから最も失望させられている大統領選挙戦だ」と言っているのだ。尤も至極だ。彼は以前に「もしもトランプが驚倒の候補者に選ばれればアメリカにとって”disaster”だと言っていたので、それが現実になってしまったと言えるだろう。何れの候補者が当選しても、私にはアメリカが強化されるとは思えないのが怖い。

*Weyerhaeuser Companyのリストラが完了:
ご存知の方がおられれば幸せだが、W社は嘗ては全世界でも上位10社に入っていた紙パルプ林産物メーカーだった。残念ながら、アメリカでは2位だった。それが2000年初頭から他のアメリカ最大手のメーカーと軌を一にして事業再編を開始して、印刷(紙)媒体による紙の需要減少に対応すべく脱紙パルプに向かって走り始めた。その背景にあったのがアメリカで急速に進んだICT化(簡単に言えばインターネットの普及)の波があったのは周知の事実だった。

今やアメリカには私が1972年に転身した当時の大手10社にランクされた紙パルプ・林産物のメーカーで同じ社名で事業を続けているのは、世界最大の地位を維持しているInternational Paperのみで、トップ10以下の規模のメーカーでも皆業界再編成の波に呑み込まれて合併・経営統合・廃業・業態変更により、需要減少に対応すべく経営合理化を図ってきた。極言すれば離合集散を繰り返してきたのだ。

その時代の流れの中で、1900年に設立された元はと言えば全米最大級の林産物メーカーだったW社は、事業の縦方向の多角化を図って紙パルプ及びその加工品の事業に進出してきた。だが、時の流れを素早く読み切って2005年に印刷洋紙部門を分離独立させて以降、徐々に世界最大手の市販パルプメーカーだった原料部門や加工品の段ボール原紙とその箱の事業を処分して、遂に今月に入って最後となった新聞用紙の日本のメーカーとの合弁事業の売却を終えて、完全に林産物メーカーへの回帰を果たしたのだった。

既に何度も繰り返して指摘したことだが、アメリカではインターネット広告等の急速な普及で印刷(紙)媒体が衰退し新聞がその影響を最も厳しく受け、新聞用紙への需要は何と10年間に60%も減少した。アメリカには最早週末にも紙の新聞を発行する新聞社は残っておらず、ウエブ版に移行してしまったのだから、時代の変化の恐ろしさをイヤというほど見出せるのだ。私はこの辺りを「アメリカで起きたことは遠からぬ将来我が国でも起きる」と言い続けてきた。これには「何も紙パだけに限定されることではあるまい」と付け加えたいのだ。

私はこれまでに「アメリカの製造業の深刻な弱体化の原因が奈辺にあったか」を何度も述べてきたが、今回はそれについては敢えて解説しない。だが、その弱体化はもしもTPPが成立したくらいで何とかなるような簡単な事態ではないのは間違いあるまいとだけ補足しておきたい。