新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの紙パルプ産業の衰退

2015-11-18 14:34:53 | コラム
アメリカのウエアーハウザーが残る紙パルプ事業の売却を表明:

アメリカでは「嘗てはアメリカ国内の最大手の紙パルプ林産物会社だった「ウエアーハウザー(Weyerhaeuser Company)が残っていた紙パルプ事業の売却を表明した」と報じられていたと、古き良き業界の知人から知らされました。この会社は嘗ては紙パルプ・林産物のメーカーとしてインターナショナルペーパーに次いでアメリカ第2位の規模を誇った企業でした。「残る紙パ事業」とした理由は、既に同じ製紙であるアメリカ最大級の段ボール原紙と函の事業は売却済みだったから。

しかし、アメリカでの余りにも早いICT化の進捗で印刷媒体(乃至は紙媒体)からの紙の需要が急速に衰え、新聞用紙などはWeb版にその場を奪われて10年間に何と60%も減少していました。その10年間に大手紙パルプメーカーのほとんど全てが新聞用紙を含めた印刷用紙事業から撤退し、大きく業態を変更していました。即ち、実質的に我が国のような大手の製紙会社のような大手製紙メーカーはアメリカには残っていないという意味です。

ウエアーハウザーも2005年にアメリカ最大級の上質紙事業部門(我が国で言う模造紙で、コピー用紙のような白い紙です)を分離独立させて切り離し、同じくアメリカ最大手の市販用製紙用パルプ事業からもほぼ手を引いておりました。しかし、業界と需要の変化は2015年の今になって残してあった液体容器原紙事業(牛乳とジュース等のパックの厚紙)、合弁事業の新聞と雑誌用紙部門の売却を決意したと、専門誌が報じているのです。

実は、このウエアーハウザーは何を隠そう私がリタイヤーするまでの19年間お世話になっていた会社で、些か感情的にならざるを得ないのです。私が何度も言ってきたことですが、アメリカでのICT化による印刷用紙の需要の減少傾向は止まりません。その事態を予見したか直面した業界の経営者たちは二進法的な素早い決断で製紙事業の売却か縮小で対応し、大手は皆業態を変更しました。

今回のウエアーハウザーの出方は遅きに失したかの感も多少はありますが、時の流れからすれば当然のように思うのです。今後は元々の根幹事業だったアメリカ最大の山持ちである世界最大級の林産物のメーカーに回帰するのでしょう。

因みに、私がこれまでに繰り返していって来たことは「アメリカで起きた経済の分野での大転換の波は必ず我が国に押し寄せてくる」でした。