新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

和製英語(=造語)とカタカナ語 #4

2014-02-06 07:29:57 | コラム
承前)

英文法は無視:

私は英語をカタカナ語化する過程で日本語の文法に準拠し、英文法を等閑視する傾向が特徴であることを発見した。

*コイントス   flip (toss) a coin、解説)これは造語に良くある日本語の語順に従っている例である。新しい言葉を作り上げる時に日本語の文法を尊重して英語の方は無視して解りやすくしてきた傾向がある。
このコイントスだが、実際に見るか経験した限りではトスよりもフリップを使う人が多かった。何時のことだったかノースウエスト航空とシアトル空港で座席の予約の有無で争った時に、責任者と称する人物がそれならば”Let’s flip a coin.”と言いだして驚かせてくれた。この時は明らかに先方の事務処理であったので、謝ったら許してやると言ってみたが彼ら「謝らない文化国」の民は断固として拒否し、コイントスにしようと言い出したのだ。矢張りアメリカ人は凄い。

*タイピン   tie bar、解説)
これは文法無視の例ではないが、言葉の誤用としても良いくらいの珍妙な言葉であるので取り上げた。tiepin=ネクタイピン(アメリカではstickpinというらしい)なるものを最後に見たのは1951年=昭和26年12月だった。これはネクタイの結び目にさすピン飾りのことで、宝石があしらってあったりしていた。そんな物を21世紀の今日何処かで見たことがある人がいたらお目にかかりたい。本当は”tie bar”=タイバーである。
これは遺憾ながら「タイピン」が戸籍を得ていると思う。洋品店ですら間違いに気付いていないのが凄いと思う。ネクタイ関連で他にはtie clip(clasp)とtie tackがある。後者はピンをネクタイの表から通してワイシャツの裏側で止める形の物である。これの使用者も年々減少していると思う。

*バレンタインデイ  Saint Valentine’s Day
解説)これは私好みの造語である。ここにも英文法無視がある。元の言葉の謂われは兎も角、Saintが省略され、所有格の”s”が飛ばされてしまっている。所有格と複数の観念が日本語にないためにか、造語かカタカナ語にする過程で、この”s”は複数を表す場合も含めて、省略されていることがほとんどである。この点が面白いのだが。レディーファースト=Ladies firstもその例で単数にしてしまった。仮名書きすれば「レィディース・ファースト」が英語に近いか。

*アイスコーヒー iced coffee、解説)余談から入ろう。1962年に初めて大阪に行って「レイコ」と言われて何のことか解らなかったが「アイスコーヒー」だった。
ここにも矢張り文法無視がありiceを過去分詞の”ed”が省略されてしまった。この場合には過去分詞にして形容詞として使った方が良いと思う。カタカナ語化する過程では概ね過去分詞化する作業が省かれるのが特徴だと思う。またまた余談だが、アメリカの野球場内の売り子(vendor)は冷たいビールを”ice cold beer”と叫んで売っている。

*テーマミュージックまたはソング
 theme music or song、

解説)themaはドイツ語でthemeが英語である。それを英語と組み合わせて新しい言葉を創造した点が素晴らしいと思う。先人に拍手。テーマパーク等というのもあった。
*ノートパソコン notebook computer、
解説)パソコンがpersonal computer(=PC)でそれを短縮したものだが、notebookまでも短縮してしまった。そして戸籍まで与えるところに凄味がある。

*ケースバイケース depending on each case or “It all depends.”、
解説)これなども誤用の最たるものである。記憶にある限りでは1950年代初めにすでに使われていた。”case by case”では「一件ごとに」になってしまうのだ。それでも誰も気が付かずに「時と場合によって(異なる)」の意味で多くの人が使っている。「英会話」の中で使わないように気を付けて欲しいものだ。この表現を使って実際にアメリカ人が書いた文章をみたのは今年の5月が最初だった。それなのにカタカナ語化されているのは不思議という以外無い。

*アットマーク at sign、
解説)勿論「@マーク」のことである。本当はsignである。signも「サイン」として野球で誤用されている。ここではマークにその座を奪われていた。

*サイン signature or autograph、
解説)これはかなり微妙な言葉だと思う「署名する」の意味ならばsignが動詞であるが、署名はsignatureで、自筆でした署名をautographと言うのだと思う。「サインしてください」と願うならば「サイン」というのはおかしい気がするのだが。英語は面倒くさい。直ぐ上ではsignが信号か合図であるのに。野球で捕手が出すものを「サイン」と言っているのはsignalのことだと聞いている。そうでしょう、まさかキャッチャーがピッチャーに署名を送らないでしょう!

*ジャグジー Jacuzzi、
解説)奇怪である!ジャクージである。確か人に名前だった。何でこれがジャグジーになり、戸籍まで獲得したのだろうか?誤読という欄を設けなければならないか?こういう誤読の例にグラフィティーがある。graffitiは「グラフィーティー」という発音だが、誰かが導入時点でイタリア語のアクセントの位置を変えて和製英語にしてしまった。

*ホッチキス stapler、
解説)Hotchkissはこの器具を考案した人の上の名前(=苗字)である。「会話」の中でこんな風に言っても通じません。

*プッシュホン push-button phone解説)ボタンの掛け違いでボタンを飛ばしてしまった。思うに「プッシュ・バトゥン・フォーン」が言いにくかったのであろう?通常「押す」はdepressだが。

*コンセント socket or outlet、
解説)英語にconsentという言葉があるが、それは主に「同意」として使われていると思う。どうしてこうなったのだろう?

*コインランドリー coin-operated laundry or Laundromat、
解説)多分、真ん中のoperatedが難しいとの判断が働いたので省いたのであろう。国立国際医療研究センターの地下にあるコインランドリー室の看板には”Laundromat”とある。流石に国立である。

*コインロッカー coin-operated locker、
解説)ここでもoperatedは嫌われた。これでは長すぎるので、単にlockerだけでも通じると思う。因みに「電池式」はbattery-poweredと言うようだが、幸いなことに「電池洗濯機」も「電池ロッカー」もなかった。

*フロント front desk or reception、
解説)最もクラシックな和製英語の一つ。「フロントで会いましょう」と外国人に言ったら、ホテルの前で待っていたという落ちになる。私はリセプションという表現を聞くことが多かったと思う。現にその表示がされているホテルが多かった。
*クライアント client、

解説)クライエントと発音するのではないかな?発音記号だってそうなっている。この方は個人の客で、customerとすると集団のような感覚で捉えていた。

*プレゼンテーター presenter、
解説)みっともない造語である。presentation=プリーゼンティションという言葉がある。屡々プレゼンと言われているあれだ。ここにまた得意のerをつけたまでは良かったが、語幹を誤認してしまったのが敗因。困ったことに、芸人の世界以外にもかなり多くのこの言葉の愛好者がいる。

続く)