製作地 インド ジャンムー・カシュミール州 シュリーナガル
製作年代(推定) 18-19世紀
素材 合金製、色ガラス
本品はインド・カシュミール地方シュリーナガルの地で、18世紀~19世紀に手掛けられたと推定できるもので、銀製ではなく合金製のものである点が第一の特徴、しかしながら銀製の代替品やフェイク品ではなく、当時の世襲の熟練彫金職人(シルバー・スミス)が合金の地金を素材に、巧みな鍛造・打ち出し・彫金・ろう付け等の技巧を駆使して生み出した一級の工芸作品であることをアムレット本体及び手の込んだチェーンとカザリパーツのつくりから指摘することができます。
このデザイン様式の装身具は、主にペルシャ・中央アジア・パキスタン・インドのイスラーム・コミュニティの間で古い時代から使用されてきたものとなります。赤は魔除け及び生命力を表す色であり、この種のアムレットにはカーネリアンやガーネット等の色石若しくは色ガラスが用いられ、本体は唐草・生命樹・羊の角等の吉祥・豊穣を表す彫金モチーフで彩られてきました。
豊穣を表す”生命樹”が力強く躍動感溢れる刻線で描かれ時代物固有の色表情と深みを湛える赤色ガラスがセットされた本体部、繊細なパーツで構成されるチェーンと垂れカザリ、高度かつ繊細な手仕事による意匠の完成美に魅了される一品です。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献